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2017/10/27

「片食」(片餉)という単位

今朝の NHK ラジオ『すっぴん』という番組の、高橋源一郎さんが担当している、「源ちゃんのゲンダイ国語」というコーナーで、『はかりきれない世界の単位』 (著・米澤敬)  という本が紹介されていた。 「単位」 についてのウンチクを語り尽くした本らしい。さっそく Amazon で注文した。

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日本語には「一個」とか「一台」とか「一丁」とか「1降り」(刀を数える場合)とか、いろいろな数え方の単位がある。三味線を「一棹(さお)、二竿……」と数えるのはまだ知られているが、世界にはさらにレアな単位があるらしいのである。

今朝の番組で紹介されていたのは、「源ちゃんのゲンダイ国語」 というコーナーだから、当然と言えば当然だが、日本語の「カタゲ」という単位だ。これ、食事の回数を数える単位で、漢字では「片食」と書くらしい。この番組の関係者は高橋源一郎さん始め、誰も知らなかった言葉だという。手持ちの『大辞林』にも載っていなかった。

しかしこれ、私の生まれた山形県庄内地方では、今はどうだか知らないが、昔は案外フツーに使われていた。もっとも庄内弁のことだから、一食のことを 「ひとがだげ」 と、しっかり訛る。例えば人に食べ物をおすそ分けする時など、「"ひとがだげ" ばりで、もっけだんども……」 (一食分ばかりで、恐縮だけど) なんて言うのである。

後半の「もっけだ」に関しては、12年も前の "方言ブームと「もっけだ」の意味" という記事で詳しく触れているので改めて書かないが、さらに庄内弁では「片食」という単位がしっかりと生きていたわけだ。いやはや、庄内弁は古語の宝庫である。

で、さらに話は重箱の隅に至るのだが、「カタゲ」の語源というのは、昔の食生活に由来するらしい。昔は一日二食が庶民の標準だった(参照)から、その片方の一食のことを「片食」というようになったと言われている。

そしてその漢字表記は、「片食」ばかりではなく「片餉」というものもある。「夕餉(ゆうげ)」の「餉」である。ちょっとググってみたら、泉鏡花などは小説の中で 「片餉」 と表記していたようだ。「ふりがな文庫」というサイトに、以下の例文がある。(参照

余り旨そうなので、こっちは里心が着きました。建場(たてば)々々で飲酒(や)りますから、滅多に持出した事のない仕込の片餉(かたげ)、油揚(あぶらげ)の煮染(にしめ)に沢庵というのを、もくもくと頬張りはじめた。 (『唄立山心中一曲』)

個人的には、「片食」 よりも 「片餉」 という表記に惹かれるなあ。

それから最後に触れておくが、私はこの放送で遠藤賢次が死んだことを初めて知って、ショックだった。追悼の意味で、下に『夜汽車のブルース』の動画を埋め込んでおく。1970年、中津川フォーク・ジャンボリーでのパフォーマンスだ。『カレーライス』 の方がお好きだったら、こちらへどうぞ。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

アタクシは「鼻毛が抜ける時の痛さの単位」が耳に残ってます。

方言には多様性がありますね。
都からの同心円上に、同様の言葉が根付いていると言われます(山とか川で伝播しないこともあると)が、なかなかそこまで教科書通りには参りません。
過去「探偵ナイトスクープ」と言う番組で、「全国アホ・バカ分布」を調べて…、(以下長くなるので省略)。

投稿: 乙痴庵 | 2017/10/27 21:55

乙痴庵 さん:

同じ番組聴いてらしたようで (^o^)

>都からの同心円上に、同様の言葉が根付いていると言われます

柳田国男が、『蝸牛考』 という書で考察しています。カタツムリの呼び方が、まさにそんなような形になっているようですね。「デンデンムシ」 とか 「マイマイツブリ」 とか。

「全国アホ・バカ分布」 では、「タワケ」 の名古屋が特異地域だそうで (^o^)

投稿: tak | 2017/10/27 22:08

またまたこんばんは。鶴岡市民です。

実家に寄ると
「ひとがだげばりでわりぃの~」
なんて言いながら、母(68歳)がおかずをくれたりします。
夕飯に一品増えた!と得した気分になりつつ、
すでに中年の娘に“ひとがだげ”でもくれようとする親心の有難さも感じたりして。
「一食分」とか「少しだけ」とかに比べて、
境界が曖昧なようで含みや味わいもあるようで、なんとなくイイですよね。

投稿: yukiho | 2017/10/28 17:39

yukiho さん:

「ひとがだげばりで……」 う〜ん、いい感じですね。今でもこの言葉が生きていることが嬉しいです。

もっとも私の祖母の発音は 「ふぃとがだげ」 でした。奈良時代の発音を今に残した人でした。

参照 → https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/11/post_d720.html

投稿: tak | 2017/10/28 20:20

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