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2017年11月 3日

今敢えて、「ビックカメラ」は、なぜ "Big Camera" じゃないのか

家電量販店の 「ビックカメラ (Bic Camera)」が「ビッグカメラ(Big Camera)」ではなく、濁らない「ビック」だというのは既にかなり知られた話になっているが、それでもまだ間違える人がいるというのは、「バッグ(bag)」と 「バック(back)」 が区別できないお年寄りがいるのと同様、しょうがないことだろう。

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「ビッグ」じゃなくて「ビック」なのだというのは知られているが、それではなぜそうなのかということについては、まだほとんど知られていない。とはいえその説明は既にされていて、同社のサイトに次のようにある(参照)。

「Bic」はバリ島のスラング(俗語)です。「大きい(Big)」の意味を持つ一方、ただ大きいだけでなく中身を伴った大きさ、という意味もあります。「限りなく大きく、限りなく重く、限りなく広く、限りなく純粋に。ただの大きな石ではなく、小さくても光輝くダイヤモンドのような企業になりたい」という希望をこめて、「ビックカメラ」と命名しました。

ここでは 「バリ島のスラング」で、"「大きい(Big)」の意味を持つ" などとされているが、「英語の "big" から生じたスラング」とは明言されていない。ところがいつの間にかいろいろなページで、しっかりと「(オセアニア、インドネシア、バリ島などで使われる)英語のスラング」とか「英語の方言」とされてしまっている。Wikipedia では次のように解説され、一応「(要出典)」とされている(参照)が、とにかく曖昧な情報の伝聞というのは、コワいものだ。

会社の公式発表では「ビック(bic)」とは英語の方言で「(外見だけでなく中身も)大きい」の意である(元はbig)。創業者の新井隆司は、バリ島を訪れた際に現地の子供たちが使っていた「ビック、ビック」という言葉に、「偉大な」という意味があると聞いて社名に使ったと述べている。

私は英語のページをしらみつぶしに調べてみたが、「"bic" が "big" のスラングで、『中身の伴った大きさ』を意味する」なんてことを裏付ける記述はついぞ発見できなかった。何しろ「中身の伴った大きさ」だったら、"great" というよく知られた言葉があるのだから、妙な言い方をする必要はない。

そもそも "big" と "bic" の発音の違いなんて、音韻学的にはかなり微妙なもので、だからこそ「バッグ」と「バック」の区別も付きにくいのである。いろいろなページで 「創業者の新井氏がバリ島で現地の子どもたちの使う "bic" という言葉を聞いて、印象に残った」などとされているが、ちょっと観光で行った先の子供たちの言葉の、微妙な発音の違いに「おや?」と思うほど注目したなんて話は、にわかには信じがたい。

そんなことを思いながらもう少し検索していたところ、「科学技術のアネクドート」というブログに "ビックカメラ」社名の由来に「バイクバイク」説も" という記事があるのを見つけた。少し引用させて戴く。(「アネクドート」とは、ロシア語の小話をさす 参照

この件について、米国の言語学者で、オックスフォード大学出版の英語辞典の編集などに携わったことのあるベン・ジマー氏は、彼のブログでつぎのように推察しています。

「(中略)私は、新井氏の『ビック』には英語とは関係ない、より考えられうる原因があると思っている。インドネシア語で、非常にありふれたことばのひとつが『バイク(baik)』であり、『よい、素晴らしい』を意味するのだ。『バイク』は会話ではしばしば『バイク、バイク』のようにくりかえして使われる……」

このブログの筆者、漆原次郎氏は、子どもたちが「バイク、バイク」と早口でしゃべれば、「ビックビック」と聞こえがちとして、「バリ島の子どもたちがしゃべっていたことばが『ビック』と聞こえたからこそ、『ビックカメラ』の社名は誕生したのでしょう」と結論づけている。それならあり得ることで、私はとりあえず、この説を支持しておこうと思う。

ちなみに私は、「大きなカメラ」なんて持ち歩きたくない。そしてボールペンで有名な "Bic" の名称は、創業者の名前、Marcel Bich (マルセル・ビック)に由来しているが、これはフランス語のつづりをそのまま使ったら、英語の "bitch" と紛らわしいので、"Bic" にしたのかもしれない。

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コメント

ビックカメラの創業者とは年齢は多少離れていますが、学校は同じ、教師も同じで教師からは「お前らの先輩にはとんでもないやつがいてなあ...」とよく彼のBIGぶりを聞かされました。

高校生時代には葬儀用の写真現像で稼ぎ、それを元手に大量の薬(アリナミンなど)の現金買い付けと安売りで大儲けして二十代前半で一千万程度の現金を取引用に持ち歩いていたようです。当時の週刊誌にもそのモーレツな商人ぶりが紹介されていました。

ここからは推測ですが、寸暇を惜しんで金儲けに夢中になっていた男がバリ島に(多分レジャーで)行ったとは信じがたい。そして「BIC」の名称を最初に使ったのは1972年設立の㈱ビックカラー(写真現像業)で彼が多分25歳くらいの時です。
当時はフランスから輸入されていた「BIC」ブランドのボールペンや使い捨てライターが市場を席巻しており、その名称は日本人にとって発音しやすく覚えやすいので、それを社名に使ったのだろうと思います。由来というほどの深い理由があるとは思えないのです。すべて推測ですが...。

不思議なことに彼の個人情報(ヒストリー)はネット上には全く見当たりません。もうすぐ年商一兆円に迫る程の企業を一代で築き上げた偉大な人物の年齢さえ分からないのですね。画像検索でも彼の写真は全くヒットしません。
何かあるのかなぁ、と考えてしまいます。脱線失礼しました。

投稿: ハマッコー | 2017年11月 5日 00:25

ハマッコー さん:

貴重な情報、ありがとうございます。

なるほど、"Bic" の意味がどうこうというのは、どうやらテキトーな後付けのようですね。テキトー過ぎて、Wikipedia では 「要出典」 なんて言われているのが悲しいほどです ^^;)

とまあ、そんなイメージもあって、私はビックカメラではあまり買い物をする気になれないのです。申し訳ないけど。

投稿: tak | 2017年11月 5日 07:30

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