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2018年2月 2日

「油断」という言葉の語源はかなり厄介だ

昨日の記事で、自民党の細田博之憲法改正推進本部長が派閥会合で 「本会議や委員会での発言は十分気をつけていただきたい。油断をすると大変なことになる」 と注意したというお笑いぐさについて触れたが、ふと思いついて「油断」という言葉の語源を調べてみた。前々から気にはかかっていたが、つい調べそびれていたことなので。

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「語源由来辞典」というサイトの「油断」の項によると、語源として有力とされるものに二説あるという。下に引用してみよう。

一つは『北本涅槃経二三』の「王が臣下に油を持たせて、一滴でもこぼしたら命を絶つと命じた」という話から「油断」の語が生まれたとする説。

もう一説は「ゆったり」「のんびり」 という意味の古語「寛(ゆた)に」が音便化したとする説である。

どちらも一見もっともらしいが、古辞書には「油断」以外の漢字表記が見られるため、『語源由来辞典』の立場としては、北本涅槃経説は「考え難い」としている。さらに四国の一部の地域で「ごゆっくりしてください」の意味で「ゆだんなされ」というところがあるという例を挙げ、「やや有力な説といえる」 としている。

「油断」という言葉がそんなような経緯で生まれたというなら、漢和辞書には載っていないだろうと思って、手持ちの『三省堂携帯新漢和辞典』 を引いてみると、なんとしっかり「油断」という語が載っているではないか。またややこしいことになった。

そこでさらに調べてみると、「ウィクショナリー」というサイトの「油断」の項には「日本以外の漢字文化圏では通用しない漢熟語」とある。うむ、それなら納得だ。ただ、三省堂の漢和辞書でもその点に触れてもらいたかったなあ。

さらにこのページには、三つめの語源説として「比叡山延暦寺根本中堂に灯される法灯は、開祖最澄の頃から消さないよう油を足し続けており、この油が断たれること無いよう戒めたことに由来」というものまで載っかっている。

これを読んで、オイルショックの頃の新聞の見出しに、さかんに「油断大敵」という言葉が使われたのを思い出した。ちなみにこの比叡山の法燈は、山形県の立石寺(通称: 山寺)にも分灯されていて、過去にそのおかげで途絶えるという事態に至らずに済んだことがあるという。何事においてもリスク回避策は重要だ。

話がずれかかったが、こうして調べてみると、「寛(ゆた)に」 説が有力という気がしてくる。手持ちの古語辞書では「寛(ゆた)」という名詞が基になっていて、そこから「寛(ゆた)にたゆたに」 という連語が生まれたようだ。

この 「寛(ゆた)に」 が基になった上で、他の説との「合わせ技」で「油断」という表記も完成したというところなんじゃあるまいか。

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