英語は、単にお洒落な演出のための小道具なので
今月 5日に「JR のペットボトルは、ぼってる」という記事を書いた。東京駅の新幹線ホームにあるゴミ箱の「ペットボトル」の表記が "P.E.T.Bottels" となっているのを、下記のように写真入りで紹介したものである。
その隣の表記がきちんと "Bottles" になってる(違い、わかるよね) のに、このラベルに関わった人たちは、制作者から現場で貼り付け作業をした人に至るまで、誰も気持ち悪くならなかったもののようなのだ。おそらく関係者の誰も、このラベルをまともに「読んでなかった」のだろう。「文字を目にしたら、とりあえず読んじゃう」という体質の私みたいな人間にとっては、びっくりの現象である。
とはいえ私としては、この種の問題には既に諦観しているというか、「まあ、世の中そんなもんだよね」程度の感慨で済ませてしまうのが身につきかけている。前は羽田空港のスナック・カウンターで "flesh juice" という看板を見てちょっと青ざめてしまい、店員のオネエチャンに「これ、ちゃんと直しといた方がいいよ。『肉体ジュース』って意味になっちゃってるから」と注意したりもしたが、最近はあまり動じなくなった。
あの時にしても、"flesh juice" の店のオネエチャンは、「え、何がいけないのよ。生ジュースは生ジュースでしょ」みたいな顔をして、ちっとも理解してくれなかったから、注意するだけ無駄だと悟ったのである。5日の記事にハマッコーさんが付けてくれたコメントでも、衣料品店の売り場案内に "Ladeis" とあったので注意したら、"Ladies" になってたというのがあった。
一方で紳士服売り場に "Men's" とあるので、婦人服の方も "Ladies' " としてもらいたかったわけだが、単にアサッテの方向にスペル修正されただけだったようなのだ。まあ、”Men's wear/Women's wear" ぐらいが一番わかりやすいんだろうけど、男子トイレの表示が "Men Toilet" なんていうのもあることだし(参照)、多くを望んでも仕方がない。
こんなことでは 2020年の東京オリンピックを前にしてお恥ずかしいというのは、至極もっともな指摘だが、まあ、この国の英語のレベル(というよりも、言葉総体のレベル)がこの程度のものなので、急に直そうったってそう簡単にはいかないだろう。
奇しくもこの記事の翌日に発表された、文科省による全国中高生の英語力に関する調査によると、政府が目標としていた「中学生、高校生の 50%以上が、それぞれ英検 3級、同準2級相当以上の実力をもつ」というレベルに届かなかったという。英検 3級なんて、はっきり言って馬鹿馬鹿しいほど簡単なんだけどね。
この報告を紹介した個別指導塾の先生のブログに 「木曜5割基準、到達は4割」 と書いてある (参照) ので、「一体何のこっちゃ?」 と思ったが、多分 「目標5割基準、到達は4割」 のミスタイプなのだろう。上の方で「言葉総体のレベル」と書いたのは、こうしたこともあるからである。
私は、この国の「英語」というのは、「お洒落な感覚を強調するための小道具」でしかないと思っていて(だって、それ以上の意味づけは実際の生活でほとんど必要ないのだもの)、2015年 10月 21日の「テキスト派と感覚派の間の深い溝」という記事で、次のように書いている。
プロモーション用のウェブページを作成したり、お洒落なメニューを作ったりというアートワーク系の「感覚派」の人たちは、まず辞書なんて引かないのだ。言葉を意味のある言葉としてではなく、お洒落な感覚を演出する小道具ぐらいにしかみていないためだと思われる。
せっかくのお洒落な小道具なのに、正確な意味なんか調べてしまうと「理に落ちて台無しになる」みたいな気がして興醒めするので、そんなことしたくないのだろう。意味や正しいスペルを調べるよりも、感覚的なテンションを維持することの方が大切なのだ。
(中略)
しかし感覚派の人たちにしてみると、多少の語法やスペルの間違いなんて、大したことじゃないらしい。「何かおかしい?」ってなぐらいにしか感じられないようなのである。「いいじゃないの。わかれば」と言いたいみたいなのだが、テキスト派にしてみると、「いや、わからないから」と言わざるを得ないのだ。
というわけで、日本の半数以上の人たちはあの「一見英語のような表示」を「言葉」と思っていないみたいだから、「左脳を使って読む」のではなく、「右脳で眺めてるだけ」のようなのである。だから「言葉」として間違いを指摘してあげても不興を買うばかりという結果になるわけだ。ましてや、英検何級相当のレベルなんてなことを言っても、ほとんど意味がない。
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コメント
P.E.T.という表記はとても正しいので、Bottels はシールを製作した会社のミスかなと思ってます。
JASのポスターは多分デザイナーのミスでしょうね。ああいう仕事している人達ってもっと英語を勉強しなよといつも思います。それにしても納品を受けたJASの社員は瞬間に “おかしい” って思わないのか、ポスターが貼ってある現場の社員も何とも思わないのかとも思います。
Flesh juice は私も遭遇したことがあります。ギョッっとしました。
都知事の小池さんがオリンピックを機に「ヘンテコ英語修正隊」を組織してはどうかと思います。今のままではとても恥ずかしい状況。
昔、一流百貨店の社内研修で{英検3級を取ろう」というのをやってました。「バカか」と思いました。せめて2級でしょう。人事部もずれてる。
投稿: ハマッコー | 2018年4月15日 06:08
ハマッコー さん:
今日は加賀に向かう北陸新幹線に乗っているのですが、上野駅のホームではこんなに細かな分別が指定されておらず、従って 「ぼってる」表示もありませんでした。
>現場の社員も何とも思わないのかとも思います。
なにしろ、文字があっても左脳で読まないので、気付かないのでしょう。
>都知事の小池さんがオリンピックを機に「ヘンテコ英語修正隊」を組織してはどうかと思います。今のままではとても恥ずかしい状況。
修正すべき箇所は、天文学的数字にのぼるので、大変なことになると思います。もし実施したら、看板屋さんが 「オリンピック特需」 に沸き返るでしょうが、職人が足りなくて大変でしょうね (^o^)
一流百貨店の 「英検 3級を取ろう」 というのは、一応社員は大卒なんでしょうに。見事な寝言ですね。
投稿: tak | 2018年4月15日 11:49