「おんば様祀り」 というもの
食工房のブログ「飯豊の空の下から...」に、青木さんが集落の会計係を担当することになり、その関係で地域の「おんばさま祭り」に参加したという記事があって、興味深く読ませてもらった。
東北方面には「おんば様信仰」というのがあって、大体は安産の神様を祀るものである。「おんば様」というのは、御神体を見るとたいていは「婆さん」の姿をしていて、その正体は三途の川で渡し賃の六文銭をもたずにやってきた者の衣服をはぎ取る「脱衣婆(だつえば)」だとか、あるいは鬼子母神だとかいろいろ言われるが、それはまあ、後からこじつけられたもので、元々は太古の昔からある民間信仰なのだろう。
インターネットで検索して「おんば様」の姿を見ても、上の画像にあるように、別に恐ろしげな顔つきをしているわけじゃなく、どちらかといえば、隣の婆さんみたいな身近な雰囲気だ。こんな感じだから、気軽に安産のお参りができたりするのだろう。
で、食工房のある会津は、この「おんば様信仰」の本場であるらしく、年に一度のお祭りをしっかりやっているようなのである。大昔からの民間信仰が今の世にしっかり生きているというのは、なかなかいいものだと思う。今も昔も、人間はこんな風に素朴に生きるのが一番の平和への道だ。
ところで、うちの地域の産土神社は「あんば様」という神様を祀っていて、この大元締めは茨城県稲敷市の、その名も阿波(あば)というところにある「大杉神社」である。それについては、ほぼ 4年前に「信心はキャッチボール」というタイトルで書いている。
「あんば様」と「おんば様」 は、音がよく似ているので、どこか関係があるのかとも思っていたが、調べてみるとまったく別の神様のようだ。神様は別でも、信心は一つだから大切にしたいものである。
ちなみに脱衣婆は、私の生まれた山形県庄内地方では「しょずがのばば」というのだが、これは三途の川の別名である「葬頭河」(しょうずか)の婆ということである。これがいろいろ転じて「正塚婆」とも表記されたりするのだが、民間信仰というのは、とにかく細かいことには頓着しないのだ。
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コメント
takさん、私の記事を取り上げてくださって、ありがとう。
会津が、おんば様信仰の本場とは知りませんでした。
しかし面白いのは、おんば様は神社だと思うのですが、我が集落では何の都合だか知りませんが、地元のお寺の和尚さんが祈祷するのです。
神仏混交を、まさに目の当たりにしています。
投稿: Mikio Aoki | 2018年4月24日 21:26
Mikio Aoki さん:
それはおもしろいですね。まさに昔は神も仏も一緒だったんですね。
投稿: tak | 2018年4月24日 21:36
「広岡きんつば」にロックオン。
当地では「大判焼」、あるいは「今川焼」と呼ばれているスイーツですかね。
投稿: 乙痴庵 | 2018年4月24日 23:28
乙痴庵 さん:
「何のこっちゃ?」 と思ったら、画像の下の写真に映ってますね。
フツー、「きんつば」 と言ったらもう少し高級和菓子というイメージですが、Google の画像検索でみる限り、ほとんど今川焼きですね。
世の中、広いわ。
投稿: tak | 2018年4月25日 10:01