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2018年4月15日

「とろぺず」という言葉

フランスの観光地に「サントロペ」(St.Tropez)というところがあり、世界中に知れ渡っているので、いろいろな店がこの名前を勝手にいただいている。下の写真の「都会的娯楽」が売り物の「サントロペ」はパチンコ屋さんらしい。

1804152

で、フランス語の綴りでは最後の発音しない "z" の文字が付いてしまうので、私なんかつい "St." 以後の部分を「トロペズ」と読みたくなってしまい、それが引き金となって庄内弁の「とろぺず」を連想して、苦笑いしてしまったりする。

庄内弁の「とろぺず」というのは「いつも、しょっちゅう」という意味の言葉で、英語で言えば "always" に当たる。で、「おめだば、とろぺずものくてんなだものの〜!」(日本語訳: お前ってば、いつもモノ食ってるんだものね〜)なんて呆れたりするのである。ニュアンスとしては、あまり褒められるような意味では使わない。

これはとくに庄内地方に限らない方言のようで、インターネットで検索すると「とろぺし」「とろぺじ」「とろっぺじ」「とろっぺず」などのバリエーションでいくらでも出てくる。いずれも「いつでも」という意味だが、秋田などでは「際限なく、いつまでも」(forever)という意味合いでも用いられたりするようだ。

語源に関しては、どう探しても確たる言及がない。柳田国男の『蝸牛考』 という書に、新しい言葉は中央から発して地方に伝わり、辺境になるほど古い言葉が残る」 というようなことが書いてあり、「とろぺず」はどうやら東北地方にしか残っていないようなので、かなり古い言葉なのだろう。

というわけで古語辞書をひくと、「とろ」は「とろとろ/たらたら」という言葉の流れで、「牛のよだれのような粘液状のものが流れ落ちる様子」とか「ゆっくり、ゆったり、のろのろ」という意味となっている。これは今でも「トロいやつ」みたいな言い方に痕跡を留めている。

残る「ぺず/ぺす/ぺじ/ぺし」はなかなか難しいが、古い言葉とすれば、「はひふへほ」の古い発音は「ぱぴぷぺぽ」の P音だったというから、辞書的には「へす」という言葉にヒントがあるかもしれない。「へす」という古語は「圧す」と表記され、「押しつける」という意味である。「押せども圧(へ)せども」 なんて使い方をする。

この「へす(圧す)」が「とろぺず」の「ぺず」の部分に当たるとしたら、「とろぺず」は「際限なくのろのろと押しつける」というようなイメージになる。これだと、褒められるようなイメージからほど遠い「いつも、しょっちゅう、いつまでも」というような意味合いに重なるだろう。もしかしたら案外、こんなようなところが正解なのかも知れない。確証はないけど。

ちなみに「サントロペ」というカナ書き表示だと、「さんごろぺ」というのを思い出してしまうのだが、これについては 13年以上も前に "「かすと」と「さんごろぺ」" というタイトルで書いているので、参照されたい。

ああ、私としては、サントロペまで避暑になんか行かなくていいから、1週間ぐらい休みを取って、トロトロゆったりと暮らしてみたいものである。

 

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コメント

当地、東濃地方の言葉には、「とろい」も「へす」もありますなぁ。

「とろい」の用例は、
「とろくっさーことやっとりゃーすな!」(何をマヌケなことをやっているんですか!)

「へす」は、
「そうへしゃーすな!こてがってまうやんか!」(あまり押さないでください。転んでしまいます。)

東濃弁と言っても、同じ東濃地方でも隣町の言葉が通じないこともありますから、上記が標準弁ではありません。

投稿: 乙痴庵 | 2018年4月19日 16:59

乙痴庵 さん:

読んだだけで、聞こえてきそうな臨場感 (^o^)

TBS ラジオのキャッチコピーに 「聞けば見えてくる」 というのがありますが、これは、「読めば聞こえてくる」です。

投稿: tak | 2018年4月19日 18:57

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