「ギネスビールの注ぎ方」の考察
Gigazine に 「あなたの飲むギネスビールの注ぎ方は間違っている可能性がある」という記事がある。"GUINESS" というロゴマーク入りの「ギネス用公式グラス」は、実はギネスのような「スタウト」という種類のビールを飲むには適していないという。要するに、泡が落ちつくまで時間がかかりすぎるらしいのだ。
私は 4年前に「ビールの飲み方の比較文化学」という記事で、ドイツ流のビールの注ぎ方について、次のように書いている。
ドイツのバーでビールを注文すると、サーバーからジョッキに注ぐのに結構な時間をかける。最初にドバーッと注いで、全体の 3分の 2以上を泡にしてしまい、それをしばらく放置して泡が減ってくると、またしてもドバーッと注ぐ。これを 3度ぐらい繰り返すと、きめ細かいクリーミーな泡が、全体の 3分の 1弱ぐらいになって、見るからにおいしそうになる。
私は初め、これが待ちきれなくて、「そんなに時間をかけないでいいから、さっさと出してよ。日本人とアメリカ人は、ウォーム・ビアーはダメなんだから」と言っていたが、ドイツ人のバーテンダーは誇りにかけても、そんな無粋な注文には応じない。
で、この記事の中で、英国流のビールの注ぎ方にも少し触れていて、こんな風に書いている。
それと対照的に、英国の「エール」ってやつは、ジョッキの縁まですっかりビールにしないといけないんだそうだ。泡でごまかすなんてのは、許せないらしい。味音痴の英国人らしい話である。ただ、泡が消えるのを待つために、やはり時間がかかり、生ぬるくなる。
ここでいう「エール」ってのは、いわゆる「スタウト」と共通した種類の、ローストした大麦を使って上面発酵させたビールである。で、スタウトの場合は、上記の記事を見てもわかるように、泡の割合がかなり少ない。私の記事は「ジョッキの縁まですっかりビールにしないといけない」と、かなり極端な表現にしちゃってるが、ドイツ流からみれば、それも大袈裟には聞こえない。
私はこれを「味音痴の英国人らしい」と、偏見に満ちたことを言ってしまったが、実はビールの種類の違いによるところが大きいようだ。件の記事によると、スタウトやエールの「窒素による泡」(我々が馴染んでいるラガーやドラフトの泡は、二酸化炭素)を落ちつかせるためには、結構な時間がかかり、その間に泡の割合も少なくなってしまうというのが本当のところらしい。英国人のみなさん、ごめんね。
ただ、スタウトやエールの注ぎ方は、上の写真にあるようにグラスを 45度に傾けるのが流儀らしいが、これはドイツでは決して取られない手法である。グラスを傾ければ泡の落ちつくのはやや早くなるが、それだとクリーミーな泡になりにくい。
つまり、グラスを傾けるという時点で、英国流はハンディを負っている。そして件の記事が主張するように、「大きめのマティーニ・グラス」を使うのは、「グラスが全面的に 45度に傾けられている」みたいなものだから、結局は簡便法みたいに思えるのだよね。
まあ、最近はビールをあまり飲まなくなったし、エールなんてほとんど飲まないから、どうでもいいか。
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