健康に良い食べ物と、悪い食べ物
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授、津川友介さんという人の 『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』 という本が話題だ。先日、たまたま本人がテレビに出てコメントしているのをちらっとみたが、なかなかイケメンのお兄さんである。
この本は、買って読むまでには至っていない。なにしろ「東洋経済」のサイトに著者本人が "医学的に 「健康に良い食べ物」 は 5つしかない、ほとんどの健康情報はエビデンスが足りない" と、ダイジェストのような記事を寄稿しておいでだから、それを読めば十分のような気がしている。
この記事で紹介されている 5つしかない「健康に良い食品」というのは、「① 魚、② 野菜と果物、③ 茶色い炭水化物、④ オリーブオイル、⑤ ナッツ類」 の 5つである。これは「健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている」ものだ。「茶色い炭水化物」というのは、玄米や全粒粉、蕎麦などの、精白されていない炭水化物のことを言うらしい。
「ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品」というのもあり、これは 「少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている」というもので、「ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、酢、豆乳、お茶」が挙げられている。
これ、「言われる前から知ってたし」というものがほとんどで、とくに目新しい情報じゃない。私はかなり前から、ごく自然にこの指針に沿った食生活をしてる。
ただ一つ、迂闊なことに「ダークチョコレート」というのは初耳だ(妻は好きで、よく知ってたけど)。調べてみると、カカオマスが 40%以上のチョコレートで、血圧低下、HDL (善玉) コレステロール値上昇などの効果に加え、BDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇や、炎症指標と酸化ストレス指標の低下などの「チョコレート効果」というのがあるという(参照)。個人的には好んで食おうという気はないけど。
さらに「健康へのメリットもデメリットも報告されていない食品」、「ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品(少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている食品)」、「健康に悪い食品(健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品)」というのがある。
多くの食品はメリットもデメリットもないというカテゴリーに分類されているようだが、「ひょっとしたら健康に悪いかもしれない」というのは、「マヨネーズ、マーガリン、フルーツジュース」で、「健康に悪い」のは、「① 赤い肉(牛肉、豚肉で、鶏肉は含まず)と加工肉(ハムやソーセージなど)、② 白い炭水化物(ジャガイモを含む)、③ バターなどの飽和脂肪酸」となっている。
私はだいぶ前から「赤い肉」は食べないことにしていて、これは健康面からも正解らしい。最近は鶏肉も避けているが、「体に良い、悪い」という観点からは関係ないようだ。ただ、食い物は体に良い悪いだけの要素で決めているわけじゃないからね。
面白いのは、サプリメントなどの、「体に良いと言われている要素だけを抽出したもの」というのは、そんなに効果があるわけじゃなく、場合によっては逆効果になる場合もあるらしいということだ。人間の体は複雑系だから、純粋すぎる要素だけ摂れば効果があるというのは、「古い考え方」で、つまり「もっと古い考え方」に立ち返る方がいい場合もあるってわけね。
なにしろ、「野菜と果物」は健康に良いというお墨付きなのに、フルーツジュースは「ひょっとしたら健康に悪いかも知れない」というのだから、なかなかビミョーである。ちょっと前の栄養学の常識だったら、「こんな矛盾した話を信じてはいけません」なんてことになりそうだ。しかし「まるごと」で食うのと、一見して都合のいい要素だけ抽出して口に入れるのとでは、結果が違って当然である。
ただ、今月 10日の記事でも書いたように、「人間とはとてつもなく不条理なもの」(参照)だから、体に悪いとわかっているものでも無性に食べたがることが多い。世の中の肉好きは、「健康のためには、お肉もたっぷり食べなきゃ」なんていう「正常化の偏見(normalcy bias)」に満ち満ちちゃってるしね。
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コメント
さぁて、ボイルソーセージの粗挽きマスタード添え、ブタさんとタマネギのバターソテー、白菜キムチとジャコの玉子焼き、お中元のお下がりでいただいたフルーツジュース!
だいたい朝食兼弁当のおかずで作ってるメニューですよ。
あえて追加するなら、モヤシと油揚げのマヨポン酢炒め、にんじんとピーマンのサバ缶炒めなんかもありますよぉ!
40代後半の肉体労働者が申し上げますよぉ!
まったく、酒のツマミか白米の友か、時代の潮流に反したメニューばっかり!
(へそ曲がりですからまったく気にしてませんし)
投稿: 乙痴庵 | 2018年7月17日 18:57
乙痴庵 さん:
そもそもが、「健康にいい/悪い」 というのは、現代人の健康状態のトレンドを背景にしているところがあると思います。
血圧やコレステロール値を下げやすく、中性脂肪を溜めにくい食品を 「健康によい」 としていて、逆の作用のあるものを 「健康に悪い」 としているところがありますね。
ベースが逆だったら、つまり、そもそも摂取エネルギーが不足な状態だったら、脂肪はエネルギーを摂りやすいということで 「健康にいい」 という位置付けになるかもしれません。
このあたりは、よくわきまえておく必要がると思います。
投稿: tak | 2018年7月17日 21:17
この種のことを語る場合、「健康とは何か」という定義が最初に掲げられる(べきだ)と思うのですが、その定義に同意できるかどうか……。
投稿: 山辺響 | 2018年7月18日 10:17
山辺響 さん:
まさに。
上の乙痴庵さんのコメントへのレスでも触れていますが、「健康」 の意味合いというのは時代背景によっても変化しますから、絶対的なものじゃないですね。
投稿: tak | 2018年7月18日 12:00