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2018年7月 9日

災害時の避難勧告や指示には、早めに従う方がいい

西日本の豪雨は大変な被害になった。今回豪雨の最大の被害地である広島や岡山、高知、愛媛、京都、岐阜などの地域には、友人や知り合いがかなり住んでいるので、私としても平静ではいられない。ただ、無闇に安否確認のメールや電話をしても、向こうが停電していたりすると、ケータイのバッテリーの消耗に気を使っているだろうから遠慮している。

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ここでどうしても書いておきたいことがある。それは、自治体から「避難勧告」や「避難指示」が出るような豪雨の際には、迷うことなく速やかに安全な施設に避難した方がいいということだ。

ニュースをみると、死者が出るのは大抵「避難勧告」や「避難指示」の出た地域である。それは当然だ。そうした指示がでるような危険な地域だからこそ、死者も出るのだ。そして、被害者は避難指示が出たにも関わらず自宅に留まっている。死なないまでも、道路が寸断されて孤立してしまたり、2階や屋根の上に逃げたまま救助を求めるというケースも少なくない。

こうしたニュースに接すると甚だ気の毒ではあるが、一方で恐縮ながら「早めに避難していれば、死んだり孤立したりする事態は避けられたのに」と思ってしまう。「体の不自由な老人や病人は、なかなか避難しにくい」と言う人もいるが、その言い訳はおかしい。そうした弱者ほど早めに避難しなければならない。周囲は率先して彼らの避難に手を貸すべきである。

ところが人間、えてして「自分だけは死なない、大丈夫」と思いがち(これを 「正常化の偏見 = normalcy bias」という)で、ぎりぎりまで自宅に留まることが多い。過去の災害時の記録をみると、いち早く避難指示に従う人は 10%にも満たないというのが、ごく普通らしい。危険が差し迫っているのに逃げないで自宅に留まり、土砂崩れで生き埋めになったり、孤立してしまったりする人が多いのである。

私の住む地域は、今は河川の整備が進んだおかげでかなり安全になったが、実はちょっと前までは水害頻発地域だった。もう 32年前になる昭和 61年に、小貝川の堤防が決壊した時には、床下浸水の被害に遭った。この時は自治体の「避難勧告」に従い、幼い 2人の娘と、3人目を妊娠中の妻、そして犬 1匹、猫 1匹を連れて、早めに高台の中学校に避難するという経験をした。

この時驚いたのは、近所では我が家以外に誰も避難しなかったという事実である。我が家は小さな子どもと妊娠中の妻がいるという事情もあり、さっさと避難したのだが、 あの様子だと、たとえ「避難勧告」が「避難指示」に切り替わったとしても、住民のほとんどは自宅に留まっていただろうと思う。

つまり、現実に水害が出始めても「誰も逃げようとしない」のだ。最悪、命に関わる問題なのに、なぜ逃げないのか、私には理解できない。

私は自分の経験からも、避難は早めにすることをおすすめする。初期の「避難勧告」の段階なら比較的スムーズに移動できるが、のっぴきならない段階まで来てしまったら、混乱が生じて動きにくくなる。周囲が浸水してしまっていたら、ボートで脱出しなければならないのだから、人数が増えたら順番待ちになる。

ましてや、明るいうちならまだいいが、日が暮れてしまってたら、もうほとんどアウトだ。本当に、逃げられるうちに逃げておくに限るのである。腰は軽い方がいい。タイミングを逸したら逃げ遅れて孤立してしまうか、下手すると命を落とす。

私の場合は、一晩避難して翌日に戻ってみると被害は床下浸水程度で済んでいて、汚水は床上までは達していなかったのでやや安心したのだが、それでも「避難してよかった」と思った。避難する前に和室の畳などは全て 2階に上げ、しっかりと対策をしていたので、心置きなく家を離れられたし。

それに、一番雨と増水の激しい不安な時間帯に、高台のしっかりとした避難場所で、自治体の用意してくれた水と食料を支給してもらい、ある意味「お客様扱い」されながら、不安なく眠れたことも大きい。あのまま家に留まっていたら、まんじりともしなかったろう。

本当に本当に、避難の要請には早めに従う方が身のためである。これは命の問題なのだから。

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