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2018年8月31日

EU は「サマータイムの廃止」なんか望んでいない

EU が既に導入しているサマータイムの再検討に向かっているとの報道が盛んになっている(参照)。これは東京オリンピックの暑さ対策としての、「にわかサマータイム」のお粗末さへのアンチテーゼとして報じられているという要素が大きいと思う。

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日本ではサマータイム導入は総スカンを食らっている状態で、私も今月 6日に反対論を書いている(参照)。そして日本のマスコミとしても「本家本元のヨーロッパだって、多くの人たちはサマータイム反対と言っている」と、ことさらに訴えたいもののようだ。しかし問題は、「EU 圏の 8割以上が サマータイムの廃止を望んでいる」という表現である。ニュースをよく読めば、決してそんなわけではないということがわかる。

今回の調査では、EU の全 28加盟国から 460万件以上の意見が寄せられ、その 8割以上が希望したのは、「時間の切り替えをしない」ということなのだ。しかも時間の切り替えを望まない人の多くは「1年中、夏時間のままで通す」ことを望んでいるというではないか。

要するに EU 圏の多くの人が希望しているのは「サマータイムの廃止」なんかではない。それどころか、「サマータイムをずっと維持して、冬時間(標準時)に戻すな」と言っているのである。見出しは正確につけてもらいたいものだ。

私は個人的には、何度もヨーロッパに出張した経験から「明るいうちに仕事を終えて、寝るまでの時間を長く楽しめる」というサマータイムを、ずっと羨ましく思っていた。だから 6日の自分の記事でも「私は基本的にサマータイムに賛成の立場なのだが、今回の政府案はちょっとおかしい」と書いているのである。

そんなわけで、EU の多くの人たちの「明るいうちに仕事を終えて、自由時間を楽しみたい」意識に変わりはないようなのだ。その上で、「1年に 2回、時計を早めたり遅らせたりするのは億劫だし、体もきつい」ので、「1年中ずっとサマータイムで通す方がずっとマシだ」と言っているのである。その気持ち、私はとてもよく理解できる。

「時間の切り替えをせずに、ずっとサマータイムにする方がいい」というのを「サマータイム廃止」なんて見出しにしてしまうのは、コトの本質をよく理解していないからで、乱暴すぎる話である。この乱暴さは、日本人の多くがトランプ大統領が安倍首相に「リメンバー・パールハーバー」と言ったと受け取っている構造と似ていると思う。

トランプは "I remember Pearl Harbor"(私は真珠湾を忘れていない)と言ったのである(参照)。いくらトランプでも、米国大統領が日本の首相に "Remember Pearl Harbor" (真珠湾を忘れるな)なんて言うわけないじゃないか。

人間はニュースを、受け取りやすいストーリーにねじ曲げて受け取るものなのである。

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