「オ パッキャマラド パッキャマラド パオパオパ……」 とは
『クラリネットをこわしちゃった』という歌をご存じだろうか。私がこの歌を初めて知ったのは、前の東京オリンピックの前年、1963年の NHK「みんなのうた」で放送されたことによる。私はこの時小学校 5年生で、歌はダークダックス、アニメは久里洋二によるモノクロ動画だった。それが YouTube で見つかったので狂喜しちゃったよ。
【注: 2022年 1月 4日 記】
この時に見つけた YouTube 動画は、NHK の規制によるのかどうかしらないが、見つからなくなっているので、改めて見つけたニコニコ動画の方をごらんいただきたい。見当違いのコメントがズラズラ流れるのが鬱陶しいが、がまんしていただくことにして。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm18012408
【さらに 2023年 2月 13日 記】
このニコニコ動画の方も削除されてしまったようだ。というわけで、この歌の NHK 『みんなの歌』バージョンは、視聴できなくなってしまった。残念。
ちなみについ最近知ったことなのだが、この歌のリフレイン、「オ パッキャマラド パッキャマラド パオパオパ……」というのは単なる「はやしことば」じゃなく、れっきとしたフランス語で、きちんと意味があったのである。
堪能な人なら初めからフランス語として聞き取っていただろうが、私はフランス語は挨拶と「メルシ」と「どういたしまして」と 4つまでの数(5つ以上だと、「あれ?」 となっちゃうんだよね) しかわからないので、半世紀以上も知らずにきてしまった。Wikipedia によるとこのリフレインは、”Au pas, camarade / Au pas camarade / Au pas, au pas, au pas" というフランス語なんだそうである (参照)。
"Camarade" は英語でも "comrade" という言葉があるので、「仲間/同僚」という意味だとすぐに知れるが、"au pas" となると、否定形に用いる "pas" 関連しか頭に浮かばず、「もしかして『仲間はずれ』って意味?」なんて思ったが、実は "pas" には「ステップ」という意味もあるのだそうだ。これだからフランス語ってややこしい。
というわけで、”Au pas, camarade" は「友よ、ステップだ (前進しよう)」という意味なのだと、ようやく理解できたのである。なんで 「クラリネットをこわした」 という歌でこんな歌詞が出てくるのかというと、Wikipedia には次のように解説されている。
原曲は、「La chanson de l'oignon(玉葱の歌)」と呼ばれる行進曲とされ、1800年のマレンゴの戦いでナポレオンの軍隊が士気を上げるために歌ったとする説がある。歌詞はクラリネットとは無関係だが、日本で 「オーパキャマラド」と歌われるサビの「Au pas, camarade / Au pas camarade / Au pas, au pas, au pas」は共通している。これは「戦友よ共に進もう」という行進曲風にも、「(パパが演奏する)リズムに合わせて演奏しなさい」という楽器の手ほどき風にも、解釈できるという。
なるほどね。「戦友よ、いざ行かん」という勇ましい意味と、「一緒に演奏してみようね」という楽器演奏指導の親心的な意味の、両方が読み取れるというわけだ。なんでまた、軍隊の士気を上げるための行進曲が『玉葱の歌』なのかは謎のままだが、一方で「玉葱」はフランス語で "oignon" ということは知った。英語の "onion" と共通するので、忘れずにすみそうだ。
で、改めて YouTube でダークダックスの歌を聴いてみると、リフレインの部分が、字幕スーパーは「オ パッキャマラド…」と表示されるが、実際には 「オ パッキャマラドゥ」 と発音されている。私はこの半世紀ぶりの気付きに驚いて、「おぉ、さすがインテリのダークダックス、こだわってるなあ!」 と、一瞬思ってしまったが、すぐに 「いや、そりゃ違うだろう!」と気付いた。
というのは、"camarade" の後に "au" が続くのだから、ここは 「オ パッキャマラドゥ」 ではなく、きちんとリエゾンして 「オ パッキャマラド パッキャマラド……」 でいいはずではないか。あるいは、本当は ”Au pas, camarade, pas camarade..." なのかなあ。いや、その後に "au pas, au pas, au pas" と続くのだから、やっぱり ”Au pas, camarade, au pas camarade..." なんだろう。
ダークダックス、やっぱり発音おかしいぜ。
というわけで最後に本題とは関係なく、唐突に「ダークダックスより、デュークエイセスの方がいいよなあ!」と再確認してしまったのであった。断っておくが、これは単に個人的趣味の問題である。
【2021年 10月 26日 追記】
コメント欄で 山辺響さんが "「ドゥ」ではなく「ド」と歌っているように聞こえます" と書いてくれているので、せっかくなので原曲の『玉葱の歌』(Chant de l'Oignon)の動画を埋め込んでおく。本当に「パッキャマラド」である。
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コメント
この歌を聞いて強い違和感を覚えるのはクラリネットの演奏の方です。
一体クラリネットのどこがどう壊れたらあのような音になるのか不思議でしょうがない。歌詞ではドレミファソラシの音階が全て出ないと歌ってる。そんな故障はない。
クラリネットを一本持ってる身としてそんなことが気になってしまう。
単に私がひねくれものか?それは間違いない。でも、いつも気になる。
投稿: ハマッコー | 2018年8月19日 09:37
ハマッコー さん:
私の解釈としては、クラリネットは決して壊れたわけではなく、下手すぎてまともな音が出ないというだけなのだと思っています。
(私がまさにそうですので ^^;)
投稿: tak | 2018年8月19日 17:43
これ、前に「フランス語だったのか!と面白がって調べたことがあるのですが、
フランス語版の原曲も
https://youtu.be/XXL_uFHDaCA
「玉葱の歌」も
https://youtu.be/YE70jrhOrjk
「ドゥ」ではなく「ド」と歌っているように聞こえます。
投稿: 山辺響 | 2018年8月23日 12:22
山辺響 さん:
やっぱり、リエゾンしますよね。
「原典」に当たっていただいて、スッキリしました。ありがとうございます。
投稿: tak | 2018年8月23日 20:51