つくば市中心部のクレオの悲劇
私の居住地からそう遠くない、つくばエクスプレス(TX)つくば駅近くの商業施設クレオが、空き家状態になって半年が経過した(参照)。今では馬鹿でかいばかりのお荷物施設になってしまっている。
この建物、私がつくばに居を構えた 38年前には存在しなかった。現つくば市の中心部は、TX の駅もなく、ちょっと離れたところに筑波大学があるだけの、だだっ広い田舎だったのである。間もなくそこに「クレオ」と称する大きなビルができ、西武百貨店とイオン(店名変更以前は「ダイエー」)が、つくば市中心部開発の二大核店舗として入った。
西武筑波店の初代店長は、つくばに来る前は渋谷店の店次長だったという人で、つくばなんていうド田舎に移動せよという辞令が出た時は「あまりのショックに、一体何がバレたんだろう? と思った」と冗談を言っていたほどだ。開店してしばらくは、農作業を終えてゴム長のまま来店する客が多かったので、とくに雨の降った後などは床の掃除が大変だったという。
そうこうするうちにバブル経済の時代となって、西武もダイエーもそれなりに繁盛していたが、混雑時はパーキング・ビル入り口で渋滞が発生するなどの問題もあり、決して入りやすい店じゃなかった。そのうちにバブルは崩壊し、他の地方都市同様、市の周辺部にいろいろな店舗が進出してくるようになると、面倒くさい中心部の店に来る客は少なくなった。
で、核店舗の西武はあんな感じで没落して、いち早く撤退。ダイエーもおかしくなった上に「イオン」になってからは他の大型スーパー同様、郊外店に力を入れ始め、やっぱり中心部からは撤退した。こうしてクレオは「誰も入りたくない巨大なる空き家」となったまま、今に至るのである。
つくば駅に近いのだから、もっと適正な規模であれば乗降客を拾ってそれなりにやって行けると指摘する人もいるが、いかんせん、駅ビルみたいに直接つながっているわけではないし、そのくせ規模が大きすぎる。やっぱりクルマで来店する客がなければ、ガランとしてしまう。しかしクルマで買い物する消費者は、広い駐車場のある郊外ショッピング・モールに行く。どうにもやっかいな物件なのである。
自分自身のことを思えば、西武筑波店で買い物したことなんて 20年以上の間に 2〜3度しかなかった。ましてや生活必需品は近くのスーパーで買うから、ダイエーの方には足を踏み入れたことすらない。百貨店と駅前大型スーパーの使命が終わりに近付いていた時代に、クレオはスタートしたのである。
今から思えば貧乏くじを引いたわけで、スタート直後にバブルがあったために、それに気付くのが遅れただけだ。再生するには、建物の半分は潰して更地の駐車場にし、残る半分でやっていくしかないと思うのだが、それだとなまじ駅前の一等地なだけに、経済効率に合わない。もっと評価が落ちてからでないと、動くに動けないのだろう。ああ、気の毒に。
【2020年 7月 25日 追記】
つくばクレオは、「つくばクレオスクエア」として再生しているらしい。私の予想通り、旧イオン棟は解体してスリムになって再出発したようだ。
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コメント
ストリートビューで見ると閑散としてますね。
家主はあらゆる百貨店に声をかけ一棟貸しに拘ってるようですが、郊外の小型百貨店はほぼ全滅の時代には無理でしょうね。
西友もウォルマートが売りに出すくらいですから一棟貸しの可能性は極めて低い。
あるとすれば業績絶好調のドンキくらいか。
他には、駅前の立地を生かして保育園と幼稚園くらいか。
投稿: ハマッコー | 2018年8月24日 23:02
ハマッコー さん:
要するに、大きな器を作りすぎたということでしょうね。
駅の乗降客を狙うにも、つくばというのは、市内の研究施設に勤務する人が多くて、都心まで通勤する人は稀です。ということは案外市内のクルマ移動で完結してしまう土地柄ですから、駐車場を広く取れる周辺の店舗が繁盛して、中心地はガランとしてしまいます。
地方都市の中心部が廃れるのは、全国共通ですが、つくばは際立っているかもしれません。
投稿: tak | 2018年8月25日 13:18