「かなとこ雲」を巡る冒険
今月 3日の 「和歌ログ」 に、「薄れ行くかなとこ雲といふ雲の名前も知らず見上ぐる子らよ」という歌をアップした。この日は大きな「かなとこ雲」が出ていて、夕方の薄れ行く頃に、それを見上げている子供たちが「変な形の入道雲!」なんて言っているのを聞いたことで詠んだものだ。
「変な形の入道雲」じゃなくて、「かなとこ雲」という立派な名前があるのだが、最近の子たちは「金床」というものを知らないから、「かなとこ雲」も当然ながら知らないのだろう。上の画像は「かなとこ」で画像検索した結果の一部だが、「かなとこ雲」でググったわけでもないのに、雲の画像の方が圧倒的に多かった。
Wikipedia で調べると、「金床(かなとこ、鉄床、かなしき、金敷、鉄敷、鉄砧、ハンマー台)とは、鍛冶や金属加工を行う際に用いる作業台のことである」と説明されている。最近の日本ではこうした作業自体が減っているので、当然ながら「金床」という道具を見たことのある子どもも減っているのだろう。
雲の形で言えば、上の画像の左上の雲がまさに上部が平らで、"金床そのもの" みたいな形をしている。ちなみに「かなとこ雲」 でもググってみて、今回初めて知ったのだが、「学術名 "Incus" も、ラテン語で『金床』を意味する」とある。英語でも "anvil cloud"(参照 anvil は「金床」の意)と称するらしいし、この特色ある形は、洋の東西を問わず同じ道具を連想させるのかと思ったが、「いや、待てよ」と考え直した。
もしかしたら、この「かなとこ雲」という名称自体が、明治以後にできた翻訳語なのかもしれない。そう言えば、江戸時代以前の古典でこの名称が現れるのを知らないし(私が知らないだけかもしれないが)。このあたりの事情に詳しい人がいたら、コメント欄に書き込んでいただきたいものだ。
かなとこ雲は入道雲の高く盛り上がった最上部が 「対流圏界部」 にまで達すると、それより上に伸びることができないため、横に広がったものだという。道理できれいに平らに広がったものが見られるわけだ。
私としては 「入道雲」 を気象用語で「積乱雲」というように、かなとこ雲にもそれなりのもっともらしい専門的名称があるのだと思っていたのだが、Wikipedia によると 「雲形分類では、部分的に特徴のある雲を細分類し『副変種』として扱われ、積乱雲だけに見られる」ということで済まされていて、ちょっと力が抜けてしまった。
あんなに存在感に満ち満ちた雲なのに、学術的見地からは「積乱雲の副変種」でしかないのだね。
【追記】
本日の 「和歌ログ」 の方も、かなとこ雲に関する歌にさせていただいた (参照)。
8月 14日付 "「かなとこ雲」が翻訳語という推量は正しかったようだ" も参照されたし。
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コメント
雲と言えば、10年ほど前に乳房雲を見ました。
その形状に驚き、ただ当時は名前を知らず、帰って「雲 下にモコモコ」などという検索をした印象があります。まさかエッチな名称が出てくるとは(笑)
本文の子供たち、入道雲という名前を知っているだけで大したものだと思います。塾で理科を教えて「積乱雲って入道雲みたいなやつだよ」と言ってもまあ通じない通じない。
ところで入道ってでっかい迫力のある印象が(雲の所為か)ありましたが、調べても単にお坊さんの別名なんですよね。ところがそのあと画像検索にしたら・・・
妖怪だらけでした!
投稿: らむね | 2018年8月11日 19:26
らむね さん:
へえ、入道雲知りませんかね。びっくり。うちの近所の子がたまたま知ってただけなのかなあ。
>画像検索にしたら・・・
>妖怪だらけでした!
本当だ (^o^)
投稿: tak | 2018年8月11日 21:31