「もっともらしく聞こえるけど実はアブない」という話
よく「ストレスが多いと白髪になる」なんてことが言われて、66歳になっても白髪がほとんどない私なんか、「よっぽどお気楽に生きてるんでしょ」なんて言われたりする。
そんなわけで先々月の Livedoor News にあった「白髪とストレスに因果関係なし!」というニュースは、ある意味歓迎したくなるストーリーではある。「俺だって、少しは苦労してるんだよ」と言いやすくなるからね。
しかしこのニュース、公平に見れば、「おい、それってちょっと迂闊な断定じゃないか?」と言いたくなってしまうのだ。この記事は、ストレスによって白髪が増えるという考えを、以下のように真っ向否定している。
これは真っ赤な嘘である。理由は単純明快で、白髪とストレスには因果関係がないからだ。毛髪や肌を色づかせる物質はメラニン色素だが、白髪はそれを生み出すメラサイトが減少することによって起きる。ストレスとは何の関係もないのだ。
まず「理由は単純明快で、白髪とストレスには因果関係がないからだ」というフレーズが、論理的に幼稚すぎる。「因果関係がないから」ということを「理由」とするには、「本当に因果関係がない」ことを事実をもって証明しなければならないが、この記事はそんなことにはまったく無頓着だ。
「白髪はストレスではなく『それを生み出すメラサイトが減少することによって起きる』と書いてあるではないか」といわれるかもしれないが、その「メラサイトの減少」がどうして起きるかという、「それこそまさに知りたい」という情報については、まったく言及されていない。もしかしたら、メラサイトが減少する要因の一つとして、ストレスが挙げられるかもしれないのに。
「よく『退屈な話を聞いていると眠くなる』というが、睡眠とは視床下部睡眠中枢が働くことによって起きるのであり、『話の退屈さ』とは関係がない」なんて言うのと同列の乱暴な論理である。近年、心と体の密接な関係について研究が進み、多くの病気がストレスなどの心的要因と関係があるとわかってきているのだから、メラサイトの減少がストレスと無関係と言い切るのは、早計すぎる。
もちろん、「ストレスが必ず白髪を生じさせる(ストレスと白髪は 100%の因果関係がある)」というわけではないだろう。それは「ストレスが必ずガンを発生させる」ってわけじゃないのと同様である。しかしだからといって、両者に「何の関係もない」と言い切るのは、医学を専門的に学んだわけじゃない私でも、怖くてできない。「関係ない」ということを証明するほど難しいことはないのだ。
そもそもこんな専門的領域に属するテーマを、大衆週刊誌(元記事は『週刊実話』に掲載されたらしい)が、署名も取材源のクレジットもなく取り上げること自体、「はあ?」というお話だと言うほかない。本来なら多くの臨床例から導き出されなければならない話だが、白髪如きで医者にかかる人は極々少数だろうし、ストレスの数値化も難しいだろうから、データ不足で「よくわからない」と言うべきことなのだろう。
「アヤシ過ぎる話」を信じちゃいけないのは当然だが、「一見もっともらしい話」も、軽はずみに信じちゃいけない。最近は「アヤシい話」が 「もっともらしい体裁」を取ることが珍しくない。
【追記】
「白髪 ストレス」のキーワードでググってみたところ、「ストレスで白髪が増えるは本当だった。 ストレスホルモンを制御する遺伝子が色を作る毛包を変化させる(米研究)」という記事が見つかった。少なくとも論理展開の仕方は、上述の乱暴な記事よりはずっとまともという印象だ。
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コメント
「政界財界の要人や芸能人が、よくお忍びで利用することもあるんだとか。」(お店の紹介記事)
そうなのかもしれないけど、誰が信じるか。
お店の壁に来店した著名人のサイン色紙が貼ってあって、それを記事中に掲載しているなら、まぁそうなんでしょう。
しかしながら、あまりその類のお店には、進んで近付きたくない。
「著名人が来る店だ。そこらの一般客、食わせてやるから敬って諂え。」と考えているお店がほとんどだとか。(←にわかに信じちゃいけない例)
投稿: 乙痴庵 | 2018年9月 5日 12:46
乙痴庵 さん:
ウチの田舎に行くと、別に紹介記事では触れられてないけど (触れる必要ないし)、行ってみると、壁に有名人の色紙が貼ってあるという店はありますね。
そんな店の特徴は、「ただ、貼ってあるだけ」 ということで、逆に、我々一般の客に、「あの連中にも食わせてやったからね」 と訴求しているように思われたりします (^o^)
投稿: tak | 2018年9月 5日 19:09