「利休七則」というもの
茨城県の常総市というところにある「いおり庵」という和菓子屋の煎餅と最中が、地元ではやや注目されているようで、最近立て続けに頂き物として舞い込んでくる。これがなかなかおいしい。
有り体に言ってしまえば、和菓子のおいしさなんていうのは大抵決まり切っていて、きちんと作れば大体みんな同じような味になるもののようだ。ただ、その「きちんと」というのが問題で、いい加減に作るとそれなりのものにしかならない。
で、このいおり庵という店のお菓子は、なるほど「きちんと」作ってあるものという気がする。最中の甘さにしつこさがなく、煎餅もぱりぱりとあっさりかじれる。この「頃合い」というのが大切だ。
「頃合い」の見極めというのは、実はなかなか哲学的なものである。この店の包装紙はシンプルな真っ白な紙に、次のような文句が印刷してある。
茶は服のよきように点し
炭は湯の沸くように置き
花は野にあるように
夏は涼しく冬は暖かに
刻限は早めに
降らぬとも傘の用意
相客に真心を
うぅむ、このシンプルさがいいではないか。これは「利休七則」 というもので、千利休が残した茶道のおもてなしにおける心得の究極であるらしい。
ちょっと浅薄なことを言うが、私は有名な晴れ男のくせに、出かける時は折り畳み傘をいつも用意しているので、この 「降らぬとも傘の用意」 というのは、ちょっと泣ける。あとは、自分のためだけでなく人のためにもさりげなく傘の用意ができるようになれば OK なのだろうが、これって案外難しいのだよね。
幸せになるための哲学とは、ほんのちょっとしたことなのだが、これがなかなか難しい。ただ、難しいと思っているうちは単なる凡人で、これをさりげなくできるようになってしまうと、人生の達人ということになる。
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