「夫婦別姓」 は、保守派にもメリットがあるだろうに
夫婦別姓ということに関する議論が、ようやく普通に行われるようになってきた。いや、「なってきた」というより「なりかける兆しが見えている」程度のことかもしれないが。下図は、「カイカイ ch」 というサイトの 「夫婦別姓についてどう思う?」 というページからお借りした年代別調査結果で、若い層ほど夫婦別姓に肯定的だが、20〜30代は積極的な賛成がやや少ないという面白い傾向が見て取れる。
私はこれについては、「一応賛成」だ。8年前には "「夫婦別姓」には消極的反対の私" という記事を書いているが、社会的な変化もあって、ほんのちょっとだけスタンスが変わったのである。「消極的反対」と「一応賛成」の差はそれほど大きくないという実感がある。
ただ「夫婦別姓に賛成」というと、「全ての夫婦が別の姓を名乗らなければならない」という押しつけのように受け取っちゃう極端な解釈の人もいるので、かなりアブない。これは「夫婦が別の姓を名乗るってこともあっていいよね」という程度の、ユルい話なのである。現状の「夫婦は同姓でなければならない」というシバリの方が、ずっとキツい。
言うまでもなく、これまでの制度で決められていたように「同じ姓」を名乗りたければ、そうすればいいのであって、そうでないケースも認めるというだけのことだ。慣れるまでは違和感をもつ人もいるだろうが、慣れてしまえばどうってことのないお話だと思う。
思えば、「夫婦別姓」ならぬ「親子別姓」というケースがある。今の世の中では、親が離婚して、母親が旧姓に戻ったために、子どもと姓が違うという場合が多いだろう。しかし昔は、そうではない理由での「親子別姓」というのがあった。
それは一人娘が結婚して姓が変わってしまったために、「家督相続」する者がいなくなり、どうしても「家」というものを継続させたいがために、生まれてきた子の 1人を母親の両親の養子として縁組してしまい、それによって母方の「家」を継がせるというものだ。大方は子どもの知らないうちに養子縁組を成立させてしまうので、子どもが幼いうちは、当事者ながらよくわからない事情であっただろう。
保守派は「夫婦別姓では、親と子の姓が違ってしまい、家族の一体感が阻害される」などといって反対するが、その昔の「子どもが知らないうちに、祖父母の家に養子縁組されてしまっている」というケースに関しては、「親と子の姓が違ってしまい…云々」 みたいなことは言わない。これは甚だ不公正な態度と言えるだろう。
私が小学校の時にも、クラスにそうしたケースに当てはまる子がいた。その子は、祖父母の家の姓を名乗り、実の親の姓とは違っていたのである。クラスの子たちは、その辺りのビミョーな事情を嗅ぎ取って、その問題には触れないように気を使っていたが、当人としては何となく割り切れない思いがあったようだ。
もし夫婦別姓が認められれば、こうしたケースもかなりオープンにすることができるようになる。ってことは、保守派にとってもメリットがあるじゃないかということだ。どうしてそんなに頑なに反対するのか、よくわからないのである。
【2023年 10月 13日 追記】
この後、2020年 12月 17日付 "「選択的夫婦別姓」は、はっきり「賛成」と言っておく" の記事で、一層「積極的賛成」の態度を明確化している。
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コメント
別姓、ってことですが、
元号ってのも、shonaiさんに語ってもらいたい気がします。
今年、よく聞くフレーズに「平成最後の…」、
とか銘打ってますが、次のは、もしかしたら、元号ってのの、日本の歴史上、最後のものになるのではないかと思います。
「めーふぁーず」ってのに一票!
国民投票にできんかな?
別姓にしても元号にしても、もういい加減、下げ渡される感じから抜け出る必要がある感じがします。
感覚的ですみません。
投稿: ようちゃん2号 | 2018年10月20日 02:08
ようちゃん2号 さん:
ええと、元号に関しては、私は割と嫌いじゃないんですよね。
「明暦の大火」 とか 「昭和元禄」 とか 「平成の怪物」 とか、割とキャッチーな表現も可能だし。
「あいつ、昭和だなあ」 と言えば、アナクロなヤツのことを指しますが、そのうち、「あいつ、平成だなあ」 と言ったら、いつまでも AKB 的なものに入れあげてるヤツのことを指したりするようになるかもしれないなんて、思ってます。
投稿: tak | 2018年10月21日 00:40
親子別姓の件ですが、私はそうなっていた可能性があるんです。
といっても幼少期から家を継ぐために、とかではなくてですね。
母が2人姉妹で2人とも嫁に行ったので、母方の祖父母の苗字が途絶えたんです。
でこれがまあ、https://myoji-yurai.net/ここで検索して全国で20人というレア苗字でして。
しかもここの数字は10人単位での表示で、現にその苗字は小田原市で10人と表示されますが、実際は昨年の祖父の死去で0人になっているので、本当に全国で1桁しかいないかもしれないレアさです。
いっぽう母の結婚後の苗字、すなわち私の苗字は全国でも有数の多い名字でしかも”かっこ悪い”んですなあ。まだ鈴木や佐藤のほうが書としても見栄えがします(あ、メールアドレスでtakさんには私の苗字がわかりますね。この字書きにくいんですよ。普遍的な字の美しさである”末広がり”にどうやってもならなくて)。
それでまあ、私の成人後ですが、そのレア苗字が無くなってしまうのは惜しいという話になったことがあるのですが、それほど積極的な動きもなく、祖父が亡くなって途絶えてしまいました。
それと元号は、私も好きです。多分次の改元時も私は生きていると思うので、もし国民投票あったら存続に1票入れますよ(笑)。
ちなみに来年の改元は、「新元号が事前に国民に知らされる」という点で日本史上初の珍事だと思っています。
投稿: らむね | 2018年10月21日 19:04
どうもゼロサムゲーム的な発想というか、「誰かが今よりも幸せになることは自分がそれだけ不幸になることだ」と思ってしまう人がけっこういるんじゃないかと思います。別姓を「選択できる」ようにしたところで、同姓が当たり前、あるいは望ましいと思っている人は同姓にすればいいのだし(恐らく法制度的には「特に意思表示をしなければ同姓」になるでしょうし)、ご指摘のように、保守的な理由による別姓のメリットも生じるだろうに。
そういえば、らむねさんが紹介されているのと同類ですが、日本郵便のサイトが先日話題になっていましたね。同じデータベースを使っているのか、やはり10名が最低単位です(恐らくそれ以上細かいデータがあるとしても、プライバシー保護の観点から出せないのではないかと推察しております)。
https://nenga.yu-bin.jp/myoji/
投稿: 山辺響 | 2018年10月22日 10:39
らむね さん:
おお、せっかくのレア苗字が途絶えるのは、惜しい気がしますね。
さて、次の元号はどんなのになるんでしょうね。「平成」 と発表された時は、「へえ、何だかなあ」 みたいに思った記憶がありますが、まあ、そのうち馴染んでしまうものですね。
投稿: tak | 2018年10月22日 19:47
山辺響 さん:
なるほど、この手の話が問題になるのは、「ゼロサムゲーム的な発想」 のせいというのは、鋭い指摘だと思います。
「他人がいい目を見る分、自分の取り分が減る」 みたいな考え方をしがちなのかもしれませんね。「みんなでハッピーになればいいじゃん」 みたいに思えないのは、ヤバい気がします。
投稿: tak | 2018年10月22日 19:50