「人間ドック」と「人間犬」
先日夜遅く、カーラジオを聞きながら帰宅する途中、番組に登場した某お笑いコンビが「人間ドッグ」の話題で盛り上がっていた。「人間ドッグって、入ったことある?」「こないだ初めて入ったけど、やっぱり若いうちに入っといた方がいいよ、人間ドッグ」などと続き、聞いていてムズムズしてしまった。
言うまでもなく「人間ドッグ」では「人間犬」ということになってしまい、正しくは「人間ドック」である。船の点検や修理などをする「ドック(dock)」を、人間の体の総点検に喩えた言い方だ。
しかし私の印象では、日本人の 60%以上は「人間ドッグ」と言っているんじゃないかと思う。Yahoo 知恵袋にも、「人間ドッグの意味を教えて下さい。なぜドッグ(犬?)なのでしょうか」なんて質問が寄せられているぐらいのものだし。
先日のラジオ放送でも、さんざん「人間ドッグ」を連発し続けても、スタッフからのダメ出しがなかったように見受けられる。スタジオには「人間ドッグ」が間違いと知る者がいなかったのだろうか。それとも、単にうっかり気付かなかったのだろうか。
で、ふと思いついて「人間ドッグ」でググってみると、さすが Google で、正しい言い方の「人間ドック」での検索結果もちゃんと気を利かせて表示してくれるが、「人間ドッグ」もかなり多く引っかかる。とにかく日本中の「人間ドッグ」機能のある病院が、いくつも表示されてしまうのだ。
ただ、Google 検索では「人間ドッグ」で引っかかっても、そのページに飛んでみると、ちゃんと「人間ドック」と表示されている場合がほとんどだ。
病院からの発注でウェブサイトを制作したやつが「人間ドッグ」と思い込んでいて、そのように作り込んでしまい、チェックの段階で 「おいおい、ウチは人間犬じゃないよ、ちゃんと『人間ドック』に直しといて」 と言われて慌てて修正したのだろう。ただ、ソースの「ページタイトル」の部分までは修正し忘れがちなので、Google 検索結果では「人間ドッグ」で表示されてしまうのだろうと推察する。
「やっぱり定期的に受けた方が良い? 人間ドッグ」なんていう大真面目なページでは、「人間ドッグ」と「人間ドック の表示が混在してしまっていて、かなりの混乱が見て取れる。これは病院の営業用ページじゃないので、ついチェックがいい加減になっちゃったんだろうね。
そうかと思うと、”越谷レイクタウン内科 「人間ドッグについて」” というれっきとした営業用ページは、ソースのページタイトルも、実際のページの表現も「人間ドッグ」で統一されている。大したものだと思いかけたが、URL が "https://laketown-clinic.jp/dock/index.html" となっているために画竜点睛を欠く。一貫性の確保のために "dog" としておけば満点だったのに。
関連業界まで範囲を拡げると 「健診・人間ドッグ向けサプライアイテム セール一覧【AXEL】アズワン」 というページは破綻なく 「ドッグ」 で一貫している。
ちなみに「人間ドック」というのは和製英語(和製半分英語?)で、英語で "human dock" なんて言っても通じない。しかしよく調べてみると、イギリスの口語表現で「彼は入院中だよ」ってことを "He is in dock now." とか言うことがあるみたいなので、もしかしたら、こうしたところから「人間ドック」という言葉ができたのかもしれない。
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コメント
人間ドッグ…wwww。そういえば「ビッグ」と「ビック」の混同もよくあるけど、カメラやさんのほうは「ビックりするほど安い」の意味だからいいのよね。手塚先生のあの超人ものの場合はどうだったか気になって調べたら「ビッグ」だったわ。あーよかった(笑)。
投稿: あほうさちゃん | 2018年10月13日 09:00
あほうさちゃん さん:
カメラ屋さんの方は、ビックカメラ ”Bic Camera” のようですね。
手塚作品の方は知らなかったのでググっちゃいました。へえ、私が小学 5年から 中学 2年にかけての連載だったんだ。どうして知らずに来てしまったんだろう。
投稿: tak | 2018年10月13日 20:56
dogついでに;
American dog なる食べ物がありますね。あれは和製英語のようで、アメリカでは Corn dog というそうです(材料も日本のものと違うようです)
昔から、なぜ dog という言葉が使われてるのかさっぱりわかりません。辞書を当たってもそれらしき説明が全くなく、長きにわたってむずむずしてます。
どなたかご存知ないでしょうか。
と、ここまで書いて、hot dog で当たってみたら「熱いフランクフルトソーセージを細長いパンで挟んだもの、犬肉を使ったといううわさから?」とある。
アメリカ人は hot dog を注文する際にどんな気持ちでいるのだろうか。犬肉を想像しながら?
投稿: ハマッコー | 2018年10月13日 22:30
hot dogについて
ドイツ移民が持ってきたあの細長い形のソーセージを、同じくドイツ産の犬に見立ててダックスフント(dachshund)と呼んでいたみたいですね。どういう流れでホットドッグになったか決定的証拠がないですが。
ただ英語的にも語呂が良い感じで、hot dogとはいいネーミングです。アメリカでは自分でいろいろトッピングできるから羨ましいです。
投稿: 沖縄県30代男 | 2018年10月14日 13:33
ハマッコー さん:
Hot dog のことは、一時 「熱犬 (ねっけん)」 と称していました。私の仲間内だけのことかもしれませんが。
語源は、下で沖縄県30代男さんが書いていらっしゃるようなことのようですね。はっきりとはわかりませんが。
投稿: tak | 2018年10月14日 20:14
沖縄県30代男 さん:
ホットドッグは、今までに 2〜3回しか食べたことがないと気付きました。最近は肉を食わないことにしているので、もう一生食べずに済んでしまうでしょう。
でも考えてみれば、面白いネーミングですね。
投稿: tak | 2018年10月14日 20:16
同じ発音変化で、bagをバックって言う子供は割と多いですね。さすがにどちらも単純な英単語なので、中学生以上では激減しますが。
多分『~っぐ』という発音が日本語に無いからではないでしょうか。
そういえば、サザエさんも言いにくそうにしてましたね!
「んがっぐっぐ」(笑)
投稿: らむね | 2018年10月15日 22:16
らむね さん:
そう言えば、「バッグパッキング」 と言う人もいましたね。今ではあまり聞かない言葉ですが。
サザエさんネタ、理解できずに、調べまくってようやくわかりました。ごめんなさい。
投稿: tak | 2018年10月16日 00:45