「誰かの弾くギターに合わせて、すぐにハモって歌い出せる」世代
7年半以上前、ってことは、あの東日本大震災の前ということだが、「SMAP がハモらないのは」という記事を書いた。その SMAP も今は解散してしまっているので、ずいぶん昔の話だが、この中で触れられている内容は、今でも古くなっていない。それは、東アジアには 「ハモって歌う」 という文化が根付いていないということだ。
この記事の冒頭を以下に引用してみよう。
だいぶ前のことだが、森山直太朗がラジオにゲストとして出演しておもしろいことを言っていた。「母の世代は、どうして集まるとすぐ車座になるんだろう。そして、どうして誰かの弾くギターに合わせて、すぐにハモって歌い出せるんだろう」と、子供の頃から不思議に思っていたというのである。
そして彼はずっと、「自分の世代には、車座になってハモって歌える歌がない」と感じてきたのだそうだ。ふぅん、そうなのか。そうなのかも知れない。私の世代にとっては、集まってみんなで歌い出すのは案外自然なことで、しかも複数の人間が集まって歌うのにハモらなかったら、何だか損をしているような気さえしてしまうんだがなあ。
この記事の中で私は、「代わりばんこにソロ取って、サビはユニゾン」というのが、日本のアイドル・グループの定番スタイルのようだとしている。さらにこれは韓国の場合でも同様のようで、つまり、東アジアでは「ハモって歌う」という文化がないということのようなのだ。
そして最近、私はこの 「代わりばんこにソロ取って、サビはユニゾン」 というスタイルが、とくにアイドル・グループの専売特許というわけじゃなく、ずっと昔からごく当たり前に踏襲されてきた「伝統的スタイル」なのだと知った。というのは、いわゆる「デュエット・ソング」というものを聞き、「これこそまさに、『代わりばんこにソロ取って、サビはユニゾン』の決定的スタイル!」 と気付いたからである。
同窓会の二次会などでカラオケに繰り出すと、必ず誰かがペアになって、 『銀座の恋の物語』なんてのをご機嫌で歌い始める。申し訳ないがはっきり言って、私としてはこのタイプの曲は「違和感の塊」でしかないし、従って、団塊の世代以前のアイドル扱いとなっている石原裕次郎という人についても「古い時代の人」と思うばかりで、まったく思い入れがない。
とにかくこうしたタイプの、典型的な「代わりばんこにソロ取って、サビはユニゾン」というスタイルは、「気持ち悪くて仕方がない」のである。というわけで、今のアイドル・グループの曲にしても同様に 「気持ち悪さ」 が先に立ってしまうのだ。
いみじくも森山直太朗が言っているように、「誰かの弾くギターに合わせて、すぐにハモって歌い出せる」という私の世代は、日本の音楽文化においてはちょっと異端的な位置付けにあるのかもしれない。
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コメント
最近はハモるタイプの曲があまりないですもんね。最近の音楽はつまらないっすね。(キッパリ)
投稿: エル ノウサギ パサ | 2018年11月 6日 01:06
エル ノウサギ パサ さん:
ハモる歌を出しても、カラオケで誰も歌えないんじゃしょうがないんでしょうね ^^;)
投稿: tak | 2018年11月 6日 02:17
カラオケに於いては、「勝手にハモられるとムカつく」と言う世論もございます。
酔っ払って気持ちよくなてって、ついヤっちまって疎んじられた過去と、ついヤっちまって参加メンバーから賞賛をいただいた過去とは、約20年の差がございますなぁ…。
特に、「戦争を知らない子供たち」の杉田じゃない方のジローのパート…。
ヤっちまったなぁ…。
投稿: 乙痴庵 | 2018年11月 6日 18:43
乙痴庵 さん:
ハーモニー付けられても、「何だかわからない雑音」 をくっつけられたとしか感じない人がいますね。
「つられちゃうから、やめてくれ」 なんて言い出す人もいるし。
「和音」 の感覚がないと、わけのわからない世界なんでしょうね。
投稿: tak | 2018年11月 6日 18:57
私は「ハモれない」ほうでして。
最初は小・中学校の合唱コンクールあたりからでしょうか。
主旋律は女声(あるいはソプラノ)で、当然伴奏のピアノもそっちに準じた音階なわけで、そういうとき私は「つられずに男声を歌う」ことができない人間です。
歌手の人達がハモっているのは理解できます。合唱も同じ。
ただその場合「女声がドレミの時に男声はシラシ」のように、ハーモニーができる音階が決まっているのならわかるのですが(ただし私は主旋律につられますが(泣))、カラオケでそれをやるっていうのがチンプンカンプンです。
得意な人だからできるのか、若い頃にハモることを覚えた世代だからできるのか、・・・
記事もコメントも耳が痛いです(笑)
投稿: らむね | 2018年11月 7日 04:16
らむね さん:
>「女声がドレミの時に男声はシラシ」のように、ハーモニーができる音階が決まっているのならわかるのですが
実は、大体決まってるんですよ。コード進行に沿ったパターンってのもあります。
例えば女性が 「ドレミ」 の場合、テノールは 「ミファソ」 とやれば、ちゃんとハモります。「ミーレードー」 で終わる場合は、「ソーファーミー」 でハモります。
数こなすと、身についちゃいます。
ちなみに 「ドレミ」 に 「シラシ」 を付けると、フツーはちょっと気持ちの悪い不協和音になります ^^;)
投稿: tak | 2018年11月 7日 18:59