若者が投票に行きたがらないのは
NewSphere が「アメリカの若者が選挙に行かない理由 日本とは異なるシステム上の問題も」という記事を報じている。見出しでは日本と異なるファクターが強調されている感があるが、内容的をよく読むと日本とも重なる部分が多いように思える。
記事の内容は、米中間選挙を前に、ニューヨーク・マガジンが掲載したインタビュー記事を紹介したものだ。インタビューに登場するのは、「選挙では多分投票しない」と答えた 21~29歳の 12人の若者たちである。
米国で若者の投票率が低いのは、投票するためのシステムが日本より煩雑で手間がかかるためでもあるというのは、かなり知られたことである。日本では一定の年齢に達すると自動的に自宅に投票券が届くが、米国では「事前登録」の手続きが必要で、これに手間がかかるために敬遠する若者が多い。
また、米国の投票日は(今回の中間選挙のように)平日であることが多いので、期日前投票や不在者投票ができない州では、仕事を休んで投票に行かなければならない。そのため、米国の選挙システムは「安定した職と定住場所がある大人に向いており、若者やマイノリティのような不安定な層には向かない」という指摘がある。
ただ、米国の若者の投票率が低い理由は、こうした制度上の問題だけではない。インタビューによって浮かび上がったのは、若者の抱く選挙への「幻滅感」だった。とくに 2年前の大統領選でヒラリーを支持した層にこの幻滅感が大きく、「よくわからないのに投票する有権者になるより、物事をよく知りながら投票しない人でいたい」という発言が注目される。
また、2016年に民主党サンダース候補のボランティアだった若者の「最後にサンダース氏が党のために敵対していたヒラリー候補を承認したことなどで、政治は茶番だとわかり、すっかり嫌気がさした」という反応も紹介されている。
さらに「知らないことがあるのに、投票に自信が持てない。間違った決定を下したくない」「自分の一票では変わらない。投票に行かないと非難されるが、有権者を熱狂、関与させるものがない」「選挙制度が間違いだと思っているのに選挙に行くことはその制度を承認することになる」などの意見もあったという。
選挙制度の違いによる理由を除けば、日米両国の若者の「投票しない理由」というのは、かなり共通したものがあるとみていいだろう。違いといえば、米国の若者はポジティブな姿勢が裏切られたことによる「明確な不信感」の増大という傾向が大きく、日本ではもっと漠然とした「政治不信」とか、「政治に期待してもしょうがない」という無力感といった要素が大きいという印象だ。
こうしてみると、若者が自然に積極的に投票に行くためには「自分たちがきちんと選挙による意思表示をしないと、大変なことになってしまう」という危機感をもつことが必要ということになる。ただ、そうした「危機感」を明確にもたざるを得ないような状況には、あまりなって欲しくない。いや、もしかしたら既にそうした状況にさしかかっているのかもしれないが。
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