「ノックは 3回」という歌があるが
中学生の頃から洋画ファンだったもので、ドアは 4回ノックするものと思っていた。というか、「4回」と明確な数字を意識していたわけじゃなく、「ドンドンドンドン」とたたく音とリズムが身についてしまっていたのである。だって、洋画ではみんなそうしているのだもの。それがフツーと思うほかないではないか。
多分、フツーの欧米人も、別に親から「ノックは 4回しなさい」と教えられたわけじゃなく、日常の生活の中で自然にその音とリズムに落ちつくのだろう。私の場合はたまたま、よく見ていた映画を通してそんな風になったのだが。
ところが上京して、友人や先輩の住むアパートを訪ねる時など、フツーに「ドンドンドンドン」とノックすると、とくに先輩などは「お前のノックはうるさい。普通にトントンと 2回叩けばわかる。なんで 4回も叩くんだ」と言うのだ。
その頃としては、「日本ではそういうことになっているのかなあ」と思うほかなかった。日本のアパートなんて狭いし、ドアも薄っぺらなのが多かったから、西洋流に叩くとうるさく感じるというのもわからないではない。
先輩の 1人はアメリカン・ポップスの『ノックは 3回』(YouTube で聴ける)というのを持ち出して「アメリカだって、『ノックは 3回』ということになってるじゃないか。お前はやりすぎだ」なんていうのである。まあ、確かに 1971年のリリースで、そんなヒット曲があった。
しかしあの歌は、ちゃんと聴けばわかるけど、ドアのノックの回数のことを歌ってるんじゃない。アパートの下の階に住む女性に恋を打ち明け、「受け入れてくれるなら、天井を 3回叩いて知らせて」という歌詞なのだ。ちなみに「ノー」だったら配管を 2回叩いてくれと言っている。
ただ、そこで英語の歌詞の解説なんか始めたら逆に嫌みと取られかねないから、仕方なく引き下がり、それ以後は日本的妥協の産物として、小さく「コンコンコン」と 3回ノックすることにした。まあ、それが落としどころってもんで、仕方ないよね。
ところでノックの回数については、最近注目されている、いわゆる「就活サイト」でも取り沙汰されているみたいなのである。、面接を受けるために入室する際のノックは、何回が望ましいのかという話である。日本人って、細かいところでいろいろ言いたがるのだね。探してみたところ、こんな風に書かれているページが見つかった。(参照)
ノックには正しい回数があることを知っていましたか? 実は、国際標準マナーであるプロトコールマナーによって、状況に応じての正式なノック回数が定められているのです。ノック 2回は、トイレの在室確認用。3回は、家族、友人、恋人などの親しい相手。4回以上は、礼儀が必要になるオフィシャルな場や初めて伺った場所。
「プロトコールマナー」なんてものがあるとは、この年になって初めて知った。なんと、「一般社団法人 日本プロトコール・マナー協会」「日本マナー・プロトコール協会」という 2つの団体まであるらしく、びっくりである。
ただ、発音は 「プロゥトコル」(アクセントは第二音節の「ロゥ」に置く)が一般的だと思うがなあ。「プロトコール」って、業界用語みたいになっちゃってるのかなあ。つい「コ にアクセントを置いて伸ばして発音してしまいそうだよね。
ちなみに上述の就活サイトでは、「4回がプロトコール」 と言いながら、現実的には 3回が望ましいとして、次のように書かれている。
実際に面接官の判断基準に沿うと、やはりこの 3回を基準にしている場合が多いようです。人事から直接、正しく 3回ノックをしたことを褒められた者もいたようで、見ている人は見ている(聞いている)ということでしょう。
「見ている人は見ている(聞いている)」 というのは、一体何を根拠として見ている(聞いている) のだろうかと思うほかない。というわけで、日本という国はやはり「やたら細かい一方で、実際には言わく言いがたいウヤムヤの国」であるようなのだ。なんだか、ナースコール、おっと違った、「プロトコール」の協会に怒られちゃいそうである。
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コメント
個人的には四回ノックはいやですね。
何か早く開けろと急かされているようです。
在宅中にそれをやられたら完全に無視してます。
>4回以上は、礼儀が必要になるオフィシャルな場や初めて伺った場所。
反感を買うだけですね。
“プロトコール”にはびっくりです。
この団体自体信用できませんね。
投稿: ハマッコー | 2018年11月13日 07:09
ハマッコー さん:
というわけで、私もあれからは 3回にしてます ^^;)
>“プロトコール”にはびっくりです。
>この団体自体信用できませんね。
静止画像 (still pictures)を何故か 「鉄鋼写真」(スチール写真) というようなもので、マナーでメシを食う業界の中では、もはや誰も疑いを抱かない業界用語と化しているのでしょうね。
きっと、「コ」 にアクセントを置いて 「ナースコール」 などと同じ調子で言ってるんだろうなあと思っています ^^;)
投稿: tak | 2018年11月13日 13:00
ノック4回は借金取りを想像しますね。「ドンドンドンドン!〇〇さん!いるんでしょ!開けてください!」みたいな。まぁ私はそういう経験はありませんがね。古い人間ですかね。
投稿: 萩原のうさぎマリオです。 | 2018年11月13日 13:33
萩原のうさぎマリオです。 さん
そう来たか ^^;)
まあ、日本ではノック4回は避けた方がいいってことのようですね。
国際標準は通用しないということで (^o^)
投稿: tak | 2018年11月13日 14:16
都市伝説の類という話も……。
https://www.apriori-eye.com/entry/protocol-manners-knock-the-door
投稿: 山辺響 | 2018年11月13日 14:29
山辺響 さん:
まあ、「プロトコール」 なんて表記をしている時点で 「なんだかなあ…」 と思うほかなくて、全面的信頼はしてなかったんですが、やっぱりそんなことでしたか (^o^)
確かに、西欧の公共トイレは (近頃は日本の多くのトイレも) 空室の時はドアが開いているというスタイルが多いので (稀に例外あり)、「在室確認は ノック 2回」 なんて 「プロトコール」 を定める意味がないですね。家庭用は ”bathroom" だし。
投稿: tak | 2018年11月13日 14:46
こんな都市伝説が生まれた経緯について調べている興味深いブログがありました。
https://www.netlorechase.net/entry/2017/01/22/070000
個人的には回数よりも早さ(間隔?)が気になります。
普段は落ち着いて「コッコッコッ」とやりたいし、「開けるよ」の合図くらいなら「ココッ」とやりたくなります。
投稿: たに | 2018年11月13日 15:22
たに さん:
おお、なかなか説得力のあるブログですね。紹介していただき、感謝します。
「回数よりも早さ」 というのも、なかなか納得です。
投稿: tak | 2018年11月13日 21:14