カリフォルニア森林火災の原因
米国カリフォルニア州で森林火災が頻発して大きなニュースになっている。何しろ空気の乾燥具合が半端じゃないので、ちょっとしたことで火が燃え上がってしまうというのだ。
ニュースでは「自然発火してしまうほどの乾燥」などと言われるが、本当にそんなに頻繁に自然発火なんてしてしまうものなのだろうか。
中学生の頃だったか、板にちょっとしたくぼみを作ってその中にノコギリ屑を盛り、棒を押しつけてきりもみさせ、摩擦熱で発火させるという実験をしたことがある。ものの本には、原始人はこのようにして火を起こしたと書いてあるのだが、実際にはなかなか容易に火が付くものではない。
何人か交代でトライし続け、ようやく僅かに煙が立ち昇るようになる程度で力尽きる。たった 1度だけ、ポッと炎が上がったことがあったが、それも一瞬でしかなかったと記憶している。いくら「湿度 10%以下の乾燥」といっても、そんなに簡単に自然発火が起きるものだろうか。
試しにいろいろ検索してみたところ、森林の「自然発火」を積極的に肯定しているページはほとんどなかった。National Geographic の 2014年 5月20日付の記事は、「カリフォルニア山火事、95%は人為的」としている。落雷による火花が原因の場合もあるが、多くは人為的な原因によるものだったとしている。
Naver まとめの「頻繁におきるカリフォルニアの『山火事』の原因。納得できるものから意外なものまで」という 2015年 7月 18日の記事は、mamemoke さんという方が「毎年疑問だったので調べてみました」としてまとめてくれたものだが、その中で一応「自然発火」ということにも触れられており、その出典とされる Wikipedia では、次のように書かれている。
山火事の原因は主に2つに分かれる。1つが自然発火で、雷や火山の噴火などが原因となり発生する。まれにだが、枯れ葉同士が風で擦れあい、その摩擦で発生する場合や熱波の影響で発生する場合もある。
ここで注目すべきは、自然発火とされるものも多くは雷や火山の噴火などが原因とされており、摩擦で発火するのは「まれにだが」と但し書きされていることだ。やはり山火事の直接的原因となる「火」は、ほかからもたらされることが圧倒的に多いようだ。
このサイトでは他の原因として、「放火」、「電線が落下」、「草刈り機の火花」、「たき火の不始末」、「違法なキャンプファイヤー」、「狩猟者 (ハンター) による火の不始末」、「子どもの火遊び」、「花火」、「麻薬密売組織による、調理時の火の不始末」、「ゴルフ(!?)」、「救助を求めての放火(!?)」 というのが挙げられている。
意外なのは最後の 2つで、「ゴルフ」というのは、「ラフに打ち込んだゴルファーが、リカバリーショットで草の下にあった岩をこすって、火花が飛び…」というケースだ。「救助を求めての放火」というのは、「米カリフォルニア州北部の森林公園に出産間近の女性が迷い込み 1人で出産、数日間身動きが取れずにいたが、助けを呼ぶためにつけた火が大きな山火事となり…」なんてことらしい。いやはや。
いずれにしても、他の原因については具体的な実例が紹介されているが、「枯れ葉同士の摩擦」ということに関しては、実例紹介が見当たらない。やはり山火事の原因は圧倒的に人為的なものが多いようなのだ。
ちなみに自然発火に含まれる「落雷」が原因ということに関しては、フツーは雷には雨が付き物なので、山火事の原因にはなりにくい。しかしカリフォルニアではあまりの熱波で上空の気温も上がってしまい、雷雲から落ちる雨が地上に届くまでに蒸発してしまって、乾燥したままの地表に雷だけが届くという「ドライ・サンダーストーム」が発生する(参照)。
いずれにしても、これほどまでの森林火災の多発は、地球温暖化に伴う熱波と乾燥がバックグラウンドになっていることが否定できない。トランプは「州の森林管理の粗雑さ」が原因と tweet したが、実はカリフォルニアの森林の 60%は連邦政府の管理下にあるという。「できるもんなら、自分で緻密に管理してみろよ!」と、ブーメランが戻ってくるだけのようだ。
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