サザエさんのエンディング・テーマは、なかなかのくせ者
先日クルマを運転しながらカーラジオを聞いていたら、サザエさんのエンディングテーマが話題になっていた。昔のアニメのテーマソングは、結構名の知れた作曲家が作っていて、この 「サザエさん一家」 というエンディングテーマも、あの筒美京平が作曲している。
それだけに、コード進行もちょっと凝っていて、オギュメント・コード(aug)なんかが使用されているので、曲の途中でちょっとした不安定感が醸し出される。それがかの有名な 「サザエさん症候群」(サザエさんのラストテーマを聞くと、心が不安定になる)の原因の一つだなどと言われてきた。
「サザエさん症候群」というのは、日曜夕方の『サザエさん』の番組終了時に、エンディング・テーマを聞くと、「ああ、明日からまた学校に行かなければ」ということが思い出されて、心が不安定になるというものだ。エンディング・テーマのコード進行が、そうした不安定感を増幅させているかもしれないという。
オギュメント・コードというのは、基音から数えて 5番目の音が半音上がるのである。例えば C のコードは 「ド・ミ・ソ」 の音で構成され、とても安定しているが、この中の 「ソ」 にシャープがついて半音上がると、歩いている途中でいきなり蹴躓いてゆらっと前のめりになってしまったような、妙な不安定感に襲われるのである。
このオギュメント・コードがどこに使われているかというと、1番の歌詞では、「今日は楽しい、今日は楽しい、ハイキング〜」というところの、2度目の「今日は楽しい」の繰り返し部分である。ここがちょっと「ヨレッ」と感じてしまうところだ。ほんの些細な和音効果だが、毎週聞いているうちに、妙な感覚が心にプリントされてしまう。
それから、この曲にはもう一つ話題がある。イントロ部分が、米国のポップバンド、1910 Fruit Gum Company の "Bubble Gum World" という曲の「まんま」なのだ。下に埋め込んだテレビ番組「トリビアの泉」の動画をご覧いただくとわかる。
このサザエさんのアニメは、1969年から放送されているが、"Bubble Gum World" の方は、1968年にリリースされている。つまり、1910 Fruit Gum Company の方が 1年先なのだ。イントロ部分が「まんま」というだけなので、盗作問題にはならないようだが、どう考えても影響を受けていないわけはないよね。
というわけで、あの『サザエさん一家』という曲は、なかなかくせ者のようなのである。
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