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2018年12月14日

答えにくい質問もしてこそのジャーナリズム

一昨日は例の「次の質問どうぞ」4連発の記者会見に関して、河野太郎外相を「ヘボ役者」と批判した(参照)が、今日は会見に出席していた記者について書いてみたい。

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世間では 「日ロ外交交渉の微妙な点について具体的な答弁ができないのは当然なのだから、そんな質問をする記者の方が悪い」とか「ちゃんと答えられるような質問をすべきだ」などと、記者のあり方を批判する声もある。しかしそれは、実はぞっとするほど危険な考え方だ。

そもそも具体的な答弁ができないからと言って、質問そのものを無視するというのはいくらなんでもひどい。記者会見というもののシステムをないがしろにする態度である。差し支えない範囲で答弁するか、あるいは「答弁を差し控える」と言えばいいのであって、あんな無礼な態度で対応されたら、記者側も少しは怒って見せていい。

普通なら記者が揃って席を蹴って退席してもいいぐらいのこと(昔は現実にそんなことがあった)だが、そうはならなかった。これは記者クラブというシステムの長年にわたって作ってきた雰囲気のなせるワザで、なんだかんだ言っても、記者側は政府にビミョーなソンタクをしなければならなくなっている。悲しいお話だ。

「ビミョーなソンタク」と書いたのは、「ちゃんと答えられるような質問をすべきだ」などというところまでは、譲歩していなかったからである。「ヤバい質問」はしないでもないが、「その質問をないがしろにされても、コトを荒立てるようなことはしない」という、実に不思議な予定調和の世界が、あの場では現出していたわけだ。

ところで、一部では「答えられない質問をしても時間の無駄だから、ちゃんと答えられるような質問に限るべきだ」などと言い出す輩もいる。誰とは言わないが。

しかしいくら何でもそれは、ソンタクのし過ぎというものだ。政権側がスラスラ答弁できるような質問しかしない記者ばかりの国というのは一体どんな国だろうかと、考えてみるがいい。それはどうみてもまともな国じゃないし、私はそんな国に住みたいとは、決して思わない。

国民の側が「記者はちゃんと答えられるような質問しかするな」などと言うのは、「この国を自由のない国にしていただいて結構」と宣言しているようなものだ。本来は、多少は答えにくい質問もしてこそジャーナリズムというものである。

 

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コメント

ただ、この記者はこの時以前に同じ質問をし、その時は無視ではなく拒否されていたらしく、結局、拒否するエズラが欲しくてした質問らしいですね。まあ、政治家ですから付き合わなければいけないのかもしれないですが、それってジャーナリストのする事でしょうかね。TV的には仕方ない。以前の時はカメラが回ってなかったのでという事のようです。周囲の記者はそれがわかっているから、抗議の論調が弱かった?

投稿: basara10 | 2018年12月15日 03:14

basara10 さん:

迂闊なことに、それは知りませんでした。情報、ありがとうございます。

記者としては、カメラの廻っている場面で、もう一度ダメ押しという意図があったのでしょうね。

しかしそれならそれで、私だったらこう対応したところです。

「あなたは 1週間前にまったく同じ質問をされましたね。よってこの場でもまったく同じ回答をするほかありませんが、繰り返すのは時間の無駄ですので、次の質問どうぞ」

単に 「次の質問どうぞ」 ではある意味、記者の思うつぼでしたね。このあたりが 「ヘボ役者」 の所以です。

投稿: tak | 2018年12月15日 19:55

basara10さんのおっしゃる「この記者」というのは、「次の質問をどうぞ」と対応された3社4人全員なのでしょうか?

投稿: 山辺響 | 2018年12月17日 09:54

山辺響 さん:

12月4日の記者会見記録
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000782.html

12月11日の記者会見記録
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000785.html

以上の 2つの記録を参照する限り、「この記者」 というのは、読売新聞の梁田記者であると思われますが、いかがでしょうか?

11日の会見では、同記者は 日ロ問題に関して 2番目に質問に立っています。

まあ、質問内容の事前通告によって、河野大臣は梁田記者が同じ質問をすることを知っていたのでしょうが、それに先立つ 時事通信の越後記者の質問の時から、突然 「変なオジサン」 になるヘボ役者ぶりを発揮していますね。

投稿: tak | 2018年12月17日 18:07

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