トランプは「壁を乗り越えろ」と檄を飛ばしている
米国の Daily Show という番組で流されたというビデオには、笑ってしまった。"Don’t Show Mexico This Video of Trump From 2004 We Found" (我々が見つけたこの 2004年のトランプのビデオを、メキシコに見せちゃいけない) というものである。
このビデオはトランプが、15年前にニューヨークの Wagner College という大学で名誉博士号を授与された際に、卒業する学生たちに向けたスピーチを行った際のものらしい。ビデオそのものは全編が元から YouTube で公開されていたらしいが、とくに注目されていたわけではないようだ。
しかしこのほど Daily Show のスタッフが、スピーチの終盤に聞き捨てならない発言を見出してしまったのである。こんなセリフだ。
Don’t give up.
Don’t allow it to happen.
If there’s a concrete wall in front of you, go through it.
Go over it. Go around it. But get to the other side of that wall.
(つたない翻訳で申し訳ないが、こんな感じかな)
諦めてはいけない。
それが生じるのを許してはいけない。
もし目の前にコンクリートの壁があっても、それをすり抜けろ。
乗り越えろ、迂回しろ、そして壁の向こう側に辿り着きなさい。
Mashable Asia の Nicole Galluncci は、これについての記事の冒頭で、"President Donald Trump is a master at giving mixed signals." (トランプ大統領は混乱したシグナルを出す達人だ)と述べている(参照)。まさに、「壁を乗り越えろ、向こう側に辿り着け」と煽った張本人がその 15年後に、メキシコ国境に壁を作るなんて寝言を言い出して、20日以上も政府機能を麻痺させているのだからね。
トランプの ”mixed signal" の深層意識としては、自らの処世譚をネタにして「諦めるな、壁を乗り越えろ」と言いつつも、「それが実際にできるヤツは多くない。俺はできたけどね」みたいな傲慢な考えなんだろう。「メキシカンにコンクリートの壁を越えられるわけがない」なんて思っているからこそ、壁建設に執拗にこだわっているのだ。
しかし 15年前のこのビデオは、米国を目指す多くのメキシコ人を思いがけなくもエンカレッジしたんじゃあるまいか。壁なんかない方がいいに決まっているが、不幸にして建設されてしまったとしても、なんとか潜り抜けてしまう者が続出するに違いない。
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