日本語になった 「トッピング」 という言葉の意味
下の写真は、先日入った立ち食い蕎麦屋のカウンターにあった「トッピングメニュー」というものである。たまご、きつね、コロッケ、わかめの他に「いなり 2ケ」というのがあって驚いた。いなり寿司をどんぶりの蕎麦の上に載せて食うというのか。
「そんなのありかよ!?」と思いつつふと隣を見ると、お盆の上に蕎麦のどんぶりと「いなり 2ケ」の小皿が乗っかっている。蕎麦の上に載せるのではなく、サイドディッシュ的扱いのようで、一安心した。
それにしても、サイドディッシュとして提供されるものを「トッピング」と称していっしょくたに扱ってしまうのには違和感がある。もしかして "topping" という言葉が「トッピング」というカタカナになったとたんに、元々の「上に載せるもの」という意味を離れてしまったんだろうか。
三省堂大辞林では、「トッピング」 というのは次のように説明されている。(参照)
トッピング 【topping】
料理や食品の上にのせたり飾りにかけるもの。ピザにのせる具やアイス-クリームに振りかけるチョコレート-チップなど。また,それを行うこと。
これは読んでホッとするような、まともな解釈である。一安心だ。しかし念のために、Wikipedia にも当たってみると、こんなようなことになっている。(参照)
- ケーキの上飾りなど、料理において仕上げの段階で飾りとなる食品などを盛り付ける調理法。また、その飾り付ける食品などのこと。見た目を良くするためや、味や栄養バランスの調整などのために用いられる。ローソクや人形など食品以外の物を追加する場合もある。
- レストランなどの料理に用意された追加できる食材のこと。別皿で提供される物、混ぜ込む物、仕込みの段階で入っている物など上飾り以外の物でもトッピングと呼ばれる。食品以外でもオプションの事をトッピングと称している場合もある。
1番目の説明はまともだが、2番目の方はびっくりである。カタカナの「トッピング」は、「別皿」(つまり 「サイドディッシュ」ね)とか「オプション」とか言う意味ももってしまっているようなのである。言葉というのは生き物みたいなところがあるから、ひょっとしたことから別方向への進化を遂げてしまったりすることはあり得る。
例えば山形県の米沢辺りでは、「ありがとう」の意味で 「おしょうしな」(お笑止な) と言ったりする。「笑止千万」みたいなちょっと恥ずかしい気持ちということから転じて、その「くすぐったい気持ち」が「ありがとう」という意味をもってしまったようなのだ。(参照)
今後、「サイドディッシュ」 とか 「オプション」 とかいう意味で「トッピング」という言葉が使われることが一般的になってしまうのかと思うと、私の故郷の庄内弁でいうところの 「笑止」 である。(庄内弁の 「笑止」 は 「しょし」 と発音して 「お恥ずかしい」 という意味になる)
| 固定リンク
「言葉」カテゴリの記事
- セブンとセブイレ、さらにスカツリ、いたせり、絞り染め(2024.09.29)
- 親友を空港に置き去りにした "AITA"(あ痛!)な女性(2024.09.23)
- 画びょう、押しピン、プッシュピン・・・ 同じ物? 別物?(2024.09.03)
- 「異にする」を「いにする」と読んじゃうことについて(2024.09.01)
- 茨城の「いばらき/いばらぎ」より根源的な問題(2024.08.26)
コメント
> いなり寿司をどんぶりの蕎麦の上に載せて食うというのか
それはやってはいけないことのような気がするけれど、
しかし美味しそう!と思いました。
トッピングは上に乗せて提供してほしいですね…。
カレーの半熟たまごトッピングとか、ちゃんぽんの辛みそトッピングとかも、
なぜか別皿で提供されることが多いです。
(´・ω・`)
投稿: ひろゆき王子 | 2019年1月17日 00:31
ひろゆき王子 さん:
>カレーの半熟たまごトッピングとか、ちゃんぽんの辛みそトッピングとかも、
なぜか別皿で提供されることが多いです。
ということは、既に 「トッピング」 は "topping" じゃなくなっているんですね。なるほど。
投稿: tak | 2019年1月17日 06:58
とはいえ、「言葉を正しく使うため、今後はトッピングとサイドメニューを別オペレーションで提供します!」などとぶち上げられても店員さんが迷惑するだけかと(一昔前だったら大真面目におっぱじめるところがあってもおかしくなかったかも(^-^;)
あとはまあ、「サイドディッシュ」と「トッピング」のどっちが高価そうに聞こえるかの問題だったのでしょうね。
投稿: 柘榴 | 2019年1月17日 17:12
柘榴 さん:
「付け合わせ」 で行けばいいんじゃないかと思うんですが、「トッピング」 の方がオシャレで美味しそうってことなのかも知れませんね。
そのうち、「サイディング」 なんて和製英語が出てきたりして (^o^)
投稿: tak | 2019年1月17日 21:00
揚げ足取りにて恐縮ですが…。
サイディングって言うと、家屋の壁材で「サイディングボード」ってのがございまして、ええ。
しかしまぁなんですねぇ。
おいなりさんの種類にもよりますが、こっそり汁にトプンとつけて喰らうのは、好きな方です。
かき揚げなどは、先乗せどぶどぶ派です。
投稿: 乙痴庵 | 2019年1月18日 01:10
乙痴庵 さん:
サイディングボードというのは、真っ当な用法ですね。
線路の引き込み線とか、壁張りとかいう意味は、元々の英語の siding にありますから。
それにしても、おいなりさんをかけ汁にドボッとするのは、潜伏愛好者がまだまだいそうですね。それを知ってびっくり (^o^)
投稿: tak | 2019年1月18日 14:38