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2019年2月12日

「ブレグジット」と日本

FNN PRIME が「どこに向かうの? ヨーロッパ」という連載をしていて、2月 8日付は「我々はヨーロッパとは違う!…EU離脱支持の奥底に流れるもの」という記事だった。

180212

FNN の記事は冒頭に要点が示されることが多いが、この記事の場合は次の 3点だ。

  1. イギリスはEUから「半身」が離れているような特別な立場
  2. 「欧州懐疑主義」は元来、保守層に根強くある
  3. イギリス国民の世代間の「断絶」も深刻

そしてこの記事は次のような書き出しで始まる。


「もし日本が中国や韓国と同じルールに縛られて、物事を決める時に彼らの意見を聞かないといけなければ、あなたはどう思う?」あるイギリス人女性に私が言われた言葉だ。

なるほど。そう言われてみれば、英国人の気持ちが多少わかるような気がしてしまう。「ブレグジット」してしまうと、英国は EU との貿易や経済交流においてかなり面倒な立場になってしまう。英国人が大陸を旅行するにも大変だろう。それでも保守層を中心に、「我々はヨーロッパとは違う」という根強い意識が拭い去れないようなのだ。

それを日本とアジアの関係に置き換えて考えてみよう。将来アジア諸国が経済的に発展し、中国、韓国(もしかしたら北朝鮮と一体になるかも知れず)、タイ、ベトナムなどが連合して一つの経済圏(Asian Union = AU とか)を構成しようという気運が高まるかもしれず、「100円で 1エイシャ」 なんて通貨単位にならないとも限らない。

そうなるとしたら日本は、英国人女性の言うように、ある程度は「中国や韓国と同じルールに縛られ」 てしまうことになるだろう。物事を決めるにも、彼らの意向を尊重せざるを得なくなる。そうした事態を、日本人は簡単に受け入れることができるだろうか。

英国保守層が「欧州懐疑主義」を根強く抱いているように、日本人の多くも「アジア懐疑主義」を抱いている。何を決めるにも中国や韓国との擦り合わせが必要になるとしたら、彼らは確実に憤慨してしまうことだろう。

英国の意識調査では、49歳以下の若い層では「EU 残留派」が多数を占め、とくに 24歳以下では 71%と、圧倒的多数を占める。50歳〜64歳の層でも、「離脱派」は 60%程度なのだから、このあたりを境にして世代間ギャップは大きい。つまり何はともあれ「ブレグジット」したがっているのは、かなりの高年齢層が中心なのだ。

一方日本では、少なくとも今の段階で「アジアとの経済統合」なんてことを言ったら、若い層でも「とんでもない!」という反応が圧倒的多数となるだろう。しかしアジア諸国の経済発展が続いて、世界経済におけるポジションが今より遙かに高くなるとしたら、どうなるかわからない。

何十年先になるかわからないが、そうなる頃には日本経済も英国同様に「斜陽」なんてことが言われるだろう。アジア大陸との関係性も、今のような形では継続できないはずだ。

今の 20代は、30年後には 50代になってしまうが、その頃に登場する新しい 20代の日本人は今の状況を経験せずに成長するのだから、「アジアと一体の経済圏を構成する方がメリットがある」と判断するようになるかもしれない。大きなジェネレーション・ギャップが顕在化してしまうだろう。

今の英国は 「EU からの離脱」 がテーマだが、その頃になったら日本では「アジア統合経済圏に加わるべきか否か」(「ブレグジット」ならぬ 「ジャパネントリー?」)なんていうのが難しいテーマとなるだろう。まあ、私はそんな時代までは生きていない可能性が高いから気楽だが、後に続く世代が間違った判断をせずに済むような空気を醸し出しておく責任はあるだろうと思う。

 

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