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2019年2月 6日

「庵点(〽︎)」というもの

「庵点」 というものをご存じだろうか? 21世紀の日本語としてはほとんど馴染みのない言葉だが、下の写真の赤いマル印にしたのがそれだと言えば、「見たことはある」という人が多いだろう。ただ、この記号の名称が 「庵点」 であるとは、私も先日の節分になるまで知らなかった。

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どうしてこの節分に知ったのかというと、当日付のブログ記事 "「末は未来で」 という思想" の中で使おうとしたのだが、どうやって表示させればいいかがわからず、必死に調べまくったからである。結局、こんな感じで表示に成功した。

そして「〽︎貴賤群衆 (きせんくんじゅ) の回向の種、未来成仏疑いなき、恋の手本となりにけり」 という浄瑠璃でクライマックスとなる。

「庵点」 というものについて、Wikipedia では次のように解説されている。

庵点 (いおりてん) 「〽︎」 は、日本語で、歌のはじめなどに置かれる約物のひとつ。歌記号ともいう。古来能の謡本や連歌などにおいて目印として使われていた。

さらに 「謡曲本 (謡本) においては、能の役柄であるシテ、ワキ、地謡などの役割がかわるところで、語句の頭に使われる」 と解説され、これは能ばかりでなく、上の画像で示したように歌舞伎でも地の台詞ではなく太夫が浄瑠璃で語る部分になると「〽︎」で記されている。さらに演歌の歌詞なども庵点で示されることが多いようだ。

そして Wikipedia の末尾近くでは、庵点がデジタル・テキストで表示しにくいために、「ウェブや電子メールなどにおいて、JIS X 0208 に含まれている 『♪』 が歌記号として用いられることが多い」 と解説されている。

確かにその通りで、私も過去に歌詞を紹介する部分ではもっぱら 「♪」 を使ってきた。しかしいくら何でも浄瑠璃の文句を書くのに 「♪」 では蕎麦をフォークで食うぐらいの違和感があるので、苦労して調べて「〽︎」の使用に辿り着いたというわけだ。

せっかく 「いおりてん」 の読みで単語登録までしたので、たびたび使いたいのだが、実際には使う機会は少ないだろうなあ。

【付記】

ちなみに一番上の写真は、『菅原伝授手習鑑』の『寺子屋』のくだりで、「無礼者め」の見得を切る松王丸(11代目市川團十郎)。歌舞伎役者って、どうして指をあんなに反り返らせることができるのだろう。

浄瑠璃から歌舞伎に採り入れられた「丸本物」といわれるジャンルの中で『菅原伝授手習鑑』は『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』とともに、代表的な「三大時代物 と言われているので、死ぬ前にどれか 1つぐらいはナマで見ておく方がいい。

一番上の写真で、さらにもう 1つ。3行目の「ト源蔵、首桶を抱え......」は、登場人物の動作を現す「ト書き」。こちらは現代でもよく知られている。

【付記 2】

庵点は特殊な記号だけに、当初は iPhone では黄色の記号として表示されていて、Twitter と Facebook でリンクさせた場合は、PC でも同様に下の画像のように黄色で表示されていた。

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しかし、いろいろ試行錯誤した結果、iPhone 上でもまともに表示されるようにしたので、ご報告まで。

 

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コメント

こんにちは~

庵点 (いおりてん) 「〽︎」
ありがとうございます~
いおりてん
初めてこの読み方がわかりました~
昔は良く見た記号です。あはは・・

投稿: tokiko | 2019年2月 7日 11:43

tokiko さん:

本当に昔はよく見ましたよね。IT 全盛の現在はほとんど用のない記号になってしまって、なんだか残念です。

投稿: tak | 2019年2月 7日 18:13

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