「ふるさと納税」の返礼品って、食い物ばっかり!
私は仲間内でも結構な「物知り」と思われていて、「あいつに聞けば、大抵のことはよくわかるように説明してくれる」なんてことになっているが、その実、知らないことは徹底して知らない。
とにかく、興味のないことは全然覚えようとしない傾向があることは、子どもの頃から自覚していた。おかげで、小学校の頃の成績は常にクラスで断トツだったのに、かけ算の「九九」を覚えるのはクラスで三番目ぐらいに遅かった。「そんな呪文みたいなもの、馬鹿馬鹿しい」と思っていたのである。決まり切ったものを覚えるだけというタスクには、まったく興味がなかった。
ただ、基本的な計算への必要性を理解してからは、「それならそれで、仕方がない」と、あっという間に覚えた。九九を覚えるのがいくら早くてもそれは「単純記憶」に過ぎないから、論理思考ができるわけじゃない。「単なる呪文」を覚えることには興味がなかったが、それを論理思考に応用するのはクラスで一番得意だった。
というわけで、私はこれまで「ふるさと納税」についてまったく知らなかった。最近になって「ふるさと納税新制度云々」というニュースが流れても、基本的な理解がないから全然わからなかった。「どこか関係のない地方に税金納めて、その金額の何割か分の特産品なんかもらうより、そんなに欲しかったら初めからその特産品を直接買っちゃう方が手っ取り早いし、得じゃん」と口走って、妻に「あなた、大丈夫、年のせいで社会常識がなくなってきたんじゃないの?」なんて心配されたほどだ。
「私だって完全にわかってるわけじゃないけど、好きな自治体に納税すると、その分だけ自分の地元に納税した金額から控除されて戻るらしいのよ。だからどうせ同じ額の税金として取られるんなら、返礼品をもらえる方がいいということで、ふるさと納税がはやってるわけよ」と、妻が説明してくれた。社会常識を妻からレクされるなんて、3年に 1度あるかないかのレアなことである。
「へえ、知らなかった。要するに、『好きな自治体の発展を願って』なんてことじゃなくて、何も戻らない税金より、少しは品物の姿で戻ってくる税金の方がいいってことでしかないのか!」私は純粋に驚いてしまったのである。地元への税金は目に見えるカタチでは何も戻らないが、多少は地域の役に立ってるのだから、気持ちよく払っとけばいいのに。
で、人気のある返礼品ってどんなものなのかをネットで調べたところ、とことん食い物ばかり多い。まず、断然「肉」。しかも高級牛肉。そして「ブランド米」「高級果物」「うに」「かに」「明太子」その他モロモロ、とにかく高級食材のオンパレードである。
個人的には、たまたまもらっちゃえば食うけど、自分で求めてまで食わなくてもいいと思うものばかりで、とくに「肉」に至っては、ここ数年は肉食を避けているからもらいたくもない。高級牛肉の返礼品欲しさで牛肉産地を選んで納税するなんて、日本人、どんだけ食い物に執着があるんだ。
返礼品をもらうならもらうで、ほかにももっとおもしろいものがあるだろうに。和紙とか、粋な柄の手ぬぐいとか、切れ味のいい鋏とか、塗り物の箱とか引き出しとか、世の中には魅力的な特産品がいくらでもあるじゃないか。
ただ、そんなものをアピールしても全国から「ふるさと納税」が集まらないんだろうか? 食い物の圧倒的なパワーには歯が立たないのか?これだけ食い物に執着が深いようだと、国全体が餓鬼道に落ちてしまうんじゃないかと、はかなんでしまうよね。
【4月 12日 追記】
食い物以外では、福岡県直方市の バルミューダ製トースター、Apple Watch、iPad などを返礼品とするプロジェクトがあるらしいが、これは製品がまともに仕入れられず、トラブっているらしい。そもそも地元の特産品じゃないという点が「人の褌で相撲を取る」みたいなものだし、ふるさと納税の返礼品として iPad をもらおうなんていう発想も「はあ?」って気がする。多分、もらってもあまり活用しないことになりそうだ。
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コメント
総務省では「返礼品には地元の産品を」と言ってますが、地元の名産品のない自治体もありますね。
そういう自治体ではふるさと納税額が極めて少なく、私の出身地は年間で50万円程度です。これでは自治体のコストの方が上回るでしょう。
そんな自治体が「人の褌で相撲を取る」ことになってしまうのでしょう。ちょっと同情してしまいます。
ところで、スバルの工場が立地する太田市がスバル車を返礼品にしようとしたらスバル社から「それは勘弁してほしい」といわれて返礼品リストから外れました。返礼品選定はむずかしい。
投稿: ハマッコー | 2019年4月12日 21:48
ハマッコー さん:
結局のところ、「ふるさと納税」という名称が欺瞞の極みなんでしょうね。中身は「控除・返礼付き寄付」以外の何ものでもないようですから。
その「欺瞞」の結果、おいしい牛肉とか海産物の産地、つまり「強者」が栄えて弱者が窮するということになります。
いろいろもっともらしいことが言われているようですが、私はこの制度の意義がさっぱりわかりません。
「寄付も欲でしろ」ということしかないような気がします。
投稿: tak | 2019年4月12日 22:10