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2019年5月19日

オッサンの「ガラパゴス的自尊心」が日本の情報化阻害要因

NewsPhere に「“まだFAX、CD、ガラケー!?” IT に保守的と海外が驚き…日本企業衰退の理由との指摘も」という記事がある。2016年 4月 3日、つまり 3年以上も前の記事とはいえ、まだちっとも古くなっていないのが驚きだ。いや、記事の中身そのものは充分に古色蒼然なのだが。

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BBC によると日本の情報化に関するガラパゴスぶりの要因は、早く言えば「新技術の導入に関して非常に保守的な日本企業の悪癖」ということで、もっと細かく分析すると次のようになる。

  1. 慣れ親しんだ古い技術にこだわる高齢者が多い、少子高齢化の影響
  2. 日本企業の 99.7%を新技術導入に保守的になりがちな中小企業が占める。
  3. 「データ流出やハッキングを恐れる」経営者の守りの姿勢
  4. 「手書き」を尊重する礼儀の文化

このうち 1 と 2 はかなり関連している。中小企業の幹部はオッサンが多く、この層がとにかく IT を使いたがらないのだ。「25(歳)の時から独立してやっておりますので、常に従業員あるいは秘書に指示することでやっておりますので、自分でパソコンを打つということはありません」と言い放った前サイバー・セキュリティ担当大臣の桜田義孝氏は、その代表例である。

ちょっとしたメールぐらいは部下に指示するより自分で打つ方がずっと手っ取り早いはずだが、こうしたオッサン連中はひたすら IT に距離を置きたがる。私の周囲にもメールで連絡を取れない不便なオッサンが何人かいる。

こうしたオッサンは同報連絡(複数の相手に同じ文書を送る連絡)をする場合に面倒極まりない。本来はメール送付の際に宛先を複数指定すれば済むのだが、メールのできないオッサンのために、いちいち電話や FAX という別手段に頼らなければならず、時間がない時は心ならずも無視することになる。

還暦過ぎの男性の IT リテラシーはかなり格差が大きくて、日常的にフツーに使いこなしている層とまったくダメな層に極端なほど分かれる。そして後者は「頑固なまでに」と言っていいほど、IT に関わりたがらない。

これについて私は、「今さら不慣れな IT で恥をかきたくない」というオッサンの「ガラパゴス的自尊心」が邪魔していると見ている。女性の場合は仲間内で盛り上がるために「ケータイ・メール」ぐらいは普及しているようだが、オッサンの場合はこの妙な自尊心が邪魔して、「そんな軽薄なことをするのは沽券に関わる」ぐらいに思っているようなのだ。

はっきり言おう。まさにこの構造、つまりオッサンの無意識に近い心的領域に存在する(だから理性的にはコントロールできない)「ガラパゴス的自尊心」こそが、日本の情報化を遅れさせる最大の要因であるとみて間違いない。

最後に一言。上の画像の "WHAT THE FAX" は、意味がわからない。

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パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

ああ、これは「What the fuck」のもじりではないですか?

投稿: 通りすがり | 2019年5月19日 23:15

大企業にはほぼFAXが100%あるのは知っています、官公庁も同様ですね。それは複合機の一部の機能にFAXの機能があるからそういうことになります。複合機にFAXの機能があってもなくても導入コストはそれほど変わりません。

複合機の使い方のほとんどは、スキャナーとして文書をパソコンに入れる、プリンターとして使うがほとんどだと思います。
外国人が思うほどFAXを多用しているとは思えません。

ガラケーが廃れないのは電話の機能としてはスマホより優れているからです。片手で素早く操作できるので工事現場などでは重宝しています。電池の持ちもスマホより優れている。
パソコンよりFAXの方が便利と言う業種のあります。

また家庭ではFAXはとても馴染みやすいと思います。
·既存の電話回線がそのまま使える。
·通信料は使った分だけ
·設備投資は15000円程度
·使用方法は極めて簡単
·テキストデータの入れ方を思える必要もない。
·クレカの月刊誌には商品の紹介がありFAXで発注するための用紙が綴じられている。(通販誌全般)
どなどの理由で家庭でも企業でもFAXはなくならないと思います。

日本の生産性が先進国で最も低いのは、出社してもほとんど何もしなくても給料をもらっているひとが多いからです。そういう人、現場をたくさん見てきました。
そりゃ、一人当たりの生産性は下がります。

BBCの指摘はあまり当たってないと主追います。
未だにFAX、ガラケー、CDがあるからと言ってそれを生産性の低さに結びつけるのは無理があるかなと思います。

野菜や果物の選別が極めてきびしい。賞味期限が近いものは廃棄する習慣。電気製品の箱に少しキズが入っただけで商品にならないと返品してしまう商慣習、事実上ほとんど問題にならない程度の遺物が混入しただけで何十万個の商品を回収し破棄してしまう。このような国民性が生産性を下げていると思います。

さらに、徹底的にITが進まず生産性が低く、しなくてもよい無駄をしているのが医療業界ですね。
個人の病歴、薬歴、各種検査の結果などが病院、診療機関で共有できれば、医療コストは大幅に下がるし診療時間も下がるでしょう。
技術はあるのにやらないのは 困る人がいるからでしょうか。

投稿: ハマッコー | 2019年5月19日 23:53

通りすがり さん:

なるほど。WTF の頭文字にのみ注目すればよかった (^o^)

ありがとうございました。

投稿: tak | 2019年5月20日 20:00

ハマッコー さん:

さすがにほとんどの大企業は IT を使いこなしていると思われますが、中小企業の実態はなかなかそうは言えないようです。

日本の労働者が長時間会社にいるだけで、ほとんど何もしてないのが生産性の低さに直結するというのは、ご指摘の通りだと思います。

ただ、忙しそうにしているのを見ると、FAX で送られてきた数字を必死に Excel に手入力してたり、メールで送られたデータでも、Word で送られたデータを必死に微修正しながら Excel にコンバートしてたり (そもそも、なんでまた Word で表なんか作るんだ ^^;) してるという馬鹿馬鹿しい仕事が多いようで、しみじみ気の毒になってしまいます。

(あくまでも、中小企業でのお話。大企業ではさすがそんなことはないと信じます)

さらにインターネットに馴染まないうちに企業を定年退職しちゃったような人が何かの同好会とかに所属した場合、仲間内の同報連絡にかなり支障をきたしているようです。

「他の人はみんなメールで OK なのに、〇〇さんは FAX でないとダメだし、△△さんは電話でないとダメな上に、何度電話しても出てくれないんだよね」という愚痴は、あちこちで聞かれます。

不合理な商習慣というのも、かなりの阻害要因ですね。傷物が出たら、返品なんかしないで割引価格で売ってくれればいいのにと、心から思います。

投稿: tak | 2019年5月20日 20:18

「ウチの最新IT技術はFAXなんですよぉ」

って関係各所に発信して、状況打破をなんとかしようと思ってます。

古い業界なんで、未だ固定電話同士の会話による受発注が、実はデフォルトだったりします。

「言った言わぬの水掛け論」
それでも淘汰されない実情は、仲間内限定で存外優しい業界なんでしょうかね。
(世代交代できたところは、FAX通り越してSMS含めてメール受発注ですけどね〜。)

投稿: 乙痴庵 | 2019年5月28日 22:21

乙痴庵 さん:

メールでサクッと済ませたい理由というのは、私面倒くさがりなので、電話苦手なんです (^o^)

投稿: tak | 2019年5月28日 23:19

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