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2019年6月30日

"Windows" が 「ういんどーず」と発音されることについて

今月初め、「企業名の表記と発音(キヤノン、キユーピーなど)」という記事を書いた。「キヤノン」と書いて「キャノン」、「キユーピー」と書いて「キューピー」、「シヤチハタ」と書いて「シャチハタ」と読ませるなど、表記(「ヤ、ユ、ヨ」が大きい文字)と発音の異なる企業がかなり多い。

190630 

一方、この記事でも触れているが、「富士フイルム」は表記も発音も「フイルム」で、「ある意味潔いことである」と書いたところ、「富士フイルム地元民」のらむねさんから、「フイルム」で既に固有名詞化しているとのコメントをいただいた。日常会話でも「フイルムに勤めています」「フイルムが無くなると市の財政がヤバイ」なんて言うそうだ。

表記も発音も「フイルム」なのは、「昔の人は 『フィ(fi)』の発音ができなかったから」などと言う説もある。確かに昔は、「ファン心理」と「不安心理」の区別のつかない人はいくらでもいた。なるほど、「それならいっそ『フイルム』と書いてしまえ」と決めたのは、さらに潔いことである。

ただ、「キヤノン」や「キユーピー」「シヤチハタ」などは、いくら昔の人でもちゃんと発音できただろう。「お客様」を「お規約さま」に聞こえる言い方をする人はいないし、「急病人」が「杞憂病人」に聞こえたら(「死やれ」じゃなく)洒落にならない。

ただ、「ウィ」や「ウェ」の発音だけは、今でも「うい」「うえ」になることが多いようなのだ。例えばマイクロソフトの OS、"Windows" は、IT 系の仕事の人ほど「ういんどーず」と平板アクセントで発音しているような気がする。このあたりは「富士フイルム」を「フイルム」で固有名詞化してしまった「地元民」とも共通する意識を感じる。

新しめの言葉でも、"Windsurfing" はウェブで調べるとほとんどが「ウインドサーフィン」(「ウィンド」の「イ」が大きい)という表示だ。何しろ「日本ウインドサーフィン協会」というのがあるぐらいのものである。「サーフィン」は「サーフイン」じゃないのだから、ビミョーにダブルスタンダードである。

そういえば、「ウイークデー」「ウイスキー」「ウインタースポーツ」などと言うのは老いも若きも変わらない。「ウェ」となるとさらに顕著で、「weight(重量)」は 体重別競技の場合、平板で「ウエート制」と言わないと通じない。ピーターパンに出てくる "Wendy" も「ウエンディ」で定着している。「ハードウエア/ソフトウエア」や「レディスウエア/カジュアルウエア」なども同様である。

そうかと思うと、ジーンズの "Edwin" は社名表示が「エドウイン」だが、みんな「エドウィン」と読んでいる。ドラッグストア・チェーンの「ウエルシア」もフツーは「ウェルシア」と呼ばれている。

なかなか一筋縄ではいかない奇々怪々さである。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

旧仮名のゐゑ、ヰヱを失くしてしまったのは大失敗だったと思っています。「ヰンドーズ」と片仮名表記されれば「うぃ」の発音もスムーズに受け入れられたのではないかと。「ヰスキー」がもっと市民権を得れば、復活しないかな。

同様に「しめす偏」を片仮名の「ネ」にしてしまったのも大失敗だと思います。ころも偏にそっくりです。これがどれほど小中学生を苦しめていることか。「示」のままでも書く手間はほとんど変わらないですよね?
もう、教える身としては「当時の責任者、出てこーい!(怒)」という気持ちです。

投稿: らむね | 2019年6月30日 22:35

らむね さん:

うぅむ、それは個人的にはかなり疑問です。

「を/ヲ」を「うぉ」と発音することが、かなり昔から絶えていたことからも、そう思わざるを得ません。(方言を別として)

「奥の院(おくのゐん)」も、「おくのうぃん」と言わなくなって久しいですし、12世紀頃には、「猪(ゐのしし)」を「うぃのしし」、「鳥居(とりゐ)」を「とりうぃ」とは言はなくなつてゐたやうです。

また「ウィスキー」に関しては、ニッカは「ニッカウヰスキー」と表記していますね。(これもケッタイといえばケッタイな表記です)
https://www.nikka.com/

というわけで、現代では「ヰンドウズ」と表記しても、おそらく「いんどうず」みたいに読まれてしまうんじゃないかと思います。

そうでなくするためには、"「ゐ/ヰ」は「ウィ」と発音する" と教育しなおさなければならず、そうすると、12世紀以降の『奥の細道』などの古文の世界とダブル・スタンダードとなり、ややこしさに輪をかけることになるのがコワいです ^^;)

投稿: tak | 2019年6月30日 23:56

なるほど、ゐゑと書いてあってもウィウェと発音してなかったのですか。そもそも(大昔は別として)日本語には無かった発音なんですかね。

いろいろ見て回っていたら、小さく書く文字の中でも一般的と思われる「ゃゅょっ」が公文書で使われるようになったのはなんと1988年だそうで(すぐにも平成ですよ!)、その辺りも関係してるかもしれませんね。

投稿: らむね | 2019年7月 1日 01:13

らむね さん:

>そもそも(大昔は別として)日本語には無かった発音なんですかね。

実はあったんですよ。
私の祖母は、奈良時代の発音を昭和の御代にまで残していた人でした。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/11/post_d720.html

投稿: tak | 2019年7月 1日 08:23

「ウインドサーフィン」はダブルスタンダードですが、「キヤノン」「キユーピー」「シヤチハタ」「富士フイルム」の類は単に旧仮名遣いでデザイン上の理由で今もそのままだと思っていましたが、違うのですかね?

投稿: automo | 2019年7月 2日 08:14

automo さん:

キヤノンに関しては、この社名は戦後に付けられたもののようですので、旧かなのままということではないようです。

以下、キヤノンのサイトから転載

「ヤ」の字が大きく表記された「キヤノン」が生まれたのは、1947年に、社名を「精機光学工業株式会社」から「キヤノンカメラ株式会社」と変更したときでした。当時の登記簿や株主総会後に発表される営業報告書、朝日新聞に掲載した広告など、すべて「ヤ」が大きくなっています。では、なぜ「キャノン」ではなく「キヤノン」にしたかというと、全体の見た目の文字のバランスを考え、きれいに見えるようにしたからなのです。 「キャノン」では、「ャ」の上に空白が出来てしまい、穴が空いたように感じてしまうので、それを避けたのです。

https://cweb.canon.jp/pls/webcc/WC_QA_MENU.EdtMenu

キユーピーが今の社名になったのは、1957年と、もっと新しいことのようです。やはりデザイン上のバランスから敢えて「ユ」を大きくしているようです。

シヤチハタの名は戦前から続いているようですが、広報的には、キヤノン、キユーピーと同じような説明をしているようです。


投稿: tak | 2019年7月 2日 20:32

ブランドとしては戦前からあるので、旧仮名遣いの名残り説も捨てがたいのですが。(笑)

投稿: automo | 2019年7月 3日 08:11

automo さん:

なるほど、Wikipedia に "1935年(昭和10年)には「キヤノン」「Canon」を商標登録" とありますね。

キユーピーも、商標としては戦前に登録されているようです。

てことは、「全体の見た目の文字のバランスを考え、きれいに見えるようにした」 というのは、後からのこじつけと考える方が自然ですね。

ありがとうございました。

投稿: tak | 2019年7月 4日 02:16

拙宅ブログ等では「ウィキペディア」も、感覚だけで、「ヰキペヂア」表記にしちゃってます。

ちっちゃい「ィ」の功績は、ヂズニーって書かなくても良くなったってことかな。
ほかにチッシュペーパーとか?

未だ、ヰンドーズの境地には至っておりません。

投稿: 乙痴庵 | 2019年7月 5日 20:11

乙痴庵 さん:

>ちっちゃい「ィ」の功績は、ヂズニーって書かなくても良くなったってことかな。
>ほかにチッシュペーパーとか?

わはは (^o^)

投稿: tak | 2019年7月 5日 20:23

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