エベレスト山頂付近の渋滞に思う
「エベレストで死者続出、何が起きているのか」というニュースの画像を見て、思わず「うひゃあ!」と声を上げてしまった。頂上へのルートが登山者の列で大渋滞を起こしている。
上に紹介した写真は、5月 22日に、1人の登山家が公開したエベレスト山頂付近の写真であるらしい。こうした大渋滞が影響してか、今年は既に 11人の登山者が死亡しているといい、そのほとんどが高山病で亡くなっているとされている。
平地の人混みを歩くのとはわけが違うのである。標高 8,000メートル以上の登山ルートで大渋滞が発生してしまったら、苛酷な自然状況の中に長い間置かれることになる。記事では「12時間で登れるところを未熟な登山者が20時間で登れば、当然酸欠になり高山病になる」と指摘されている。
私も山登りは大好きで、若い頃は暇さえあれば山に入っていたが、人気のある北アルプスには足を向けなかった。よく行ったのは奥秩父、南アルプスの 2,000〜3,000メートル峰と、北八ヶ岳、東北の朝日連峰などで、いずれもあまり人混みにはならない山域である。
穂高や槍ヶ岳などの岩稜に象徴される北アルプスに人気があるのは、ヨーロッパ・アルプス的な雰囲気があるからだろう。しかし私はそうした人気のコースよりも鬱蒼とした森の中や誰もいない尾根ルートなどを歩くのが好きだった。何しろ人に会いに行くのではなく自然の中に浸りに行くのだから、当然そうなる。
夜を越すのも山小屋ではなく、テント泊だ。狭い山小屋の中で山談義に花を咲かせ、人と折り重なるようにして寝るのは真っ平である。そのうちテントすら余計な障壁のように感じられて、タープ 1枚を斜めにさしかけ、その下でゴアテックスの透湿防水カバーに入って寝るようになった。
夜の山の中で外界との障壁幕のない眠り方をすると、月明かりの下で結構いろいろな動物が行き来しているのがわかる。彼らの 2つの目が月明かりを反射して行き来しているのを見ると、とても懐かしい気分になるのだ。山小屋で人とばかり話をしていたら、こんな気分にはなれない。
渋滞を承知でエベレストに登るというのは、山に登るというより「数字に登る」という意識なんじゃなかろうかと思ってしまうのだよね。
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コメント
何年か前にナショナルジオグラフィックが取り上げてたやつですね。「挑戦者の9割が『ツアー費用を払えば登頂できて当然』だと思ってる、登山の基礎的な訓練すら未経験のお客様登山者」とか「登山者の増加でエベレストのゴミ問題が深刻化している」とか「天候予測が正確になったことで、好天の日に人が集中するようになって混雑がさらに悪化」とか、そんな感じの内容だったと記憶しています。
身近なところだと富士山も似たような状態だとも聞きますね。
投稿: 柘榴 | 2019年6月 5日 04:11
柘榴 さん:
>「挑戦者の9割が『ツアー費用を払えば登頂できて当然』だと思ってる、登山の基礎的な訓練すら未経験のお客様登山者」
そりゃまた、難儀な話ですね。インドやネパールにしてみれば貴重な「観光資源」ということなのでしょうが、山麓のトレッキング程度で満足してくれればいいのに。
投稿: tak | 2019年6月 5日 21:25