お父さんの恋人は現在進行形、お母さんの恋人は過去形
安倍首相が参院選の応援演説で「お父さんも恋人を誘って...... お母さんも昔の恋人を探し出して、投票箱に足を運んでいただくよう......」と発言したというのは、当初のニュースでは「言い間違えた」みたいなニュアンスで伝えられていた。しかし動画(下の画像をクリックすると表示される)を見るとそんなものじゃない。どう聞いても「確信犯」としか思われないよね。
彼としては軽いユーモアを交えたぐらいのつもりだったのかもしれないが、まともな常識さえあればこんなことは恐ろしくて言えない。欧米だったら非難囂々の大問題になるだろう。この程度の取り上げられ方で済んでいる日本という国は、妙な意味で大人すぎるところがある。ちなみにこの演説の「ヤバい点」を挙げると、次のようになる。
- 日頃強調する「家族の大切さ」は、「お妾さん」を当然とする価値観だった
選択的夫婦別姓に関しては「家族の解体を意味する」として反対を表明していた安倍首相が「お父さんも恋人を誘って」と、不倫を前提とする文脈で語るのは、「妾がいて当然」という戦前的家族観への回帰願望を反映しているよね。 - お父さんは恋人がいても、お母さんは不倫しちゃいけない
「お父さんも恋人を誘って」の対句のように続くのが「お母さんも昔の恋人を探し出して」という言葉である。お父さんの恋人は現在進行形でも、お母さんの場合は過去形でなければならず、しかも「探し出す」必要があるほど縁遠くなっていなければならないというわけだ。かなり歪んではいるが厳然とした女性差別的価値観が表明されている。 - 「投票所」じゃなく「投票箱」に足を運んでもらいたいのね
世間一般では「投票所に足を運んでいただきたい」というのが「ごくフツーの表現」になっているが、安倍首相は敢えて「投票箱に足を運んでいただきたい」と、一種異様な言い方をしている。彼の関心の対象が投票所に行く有権者の意識よりも「投票箱の中身」でしかないことが、無意識的かつ、あからさまに表現されている。
元々安倍首相は「あんまりオツムのよろしくない人」と思ってはいたが、いよいよ「アブない人」の本性が無意識的な言い方の中に露骨にさらけ出される段階に達したようだ。このような「戦前的思想」の持ち主を、この国は総理大臣としてありがたがっているのである。
ちなみに彼が「選択的夫婦別姓」に反対なのは、「妻が別姓だと、妾と区別つかないじゃん!」と心のどこかで思っているからに違いないと、今さらのように思い当たった。彼の価値観としては、「本妻ならつべこべ言わずに、夫の姓を名乗れることを幸せに思え」ってことなのだろうね。
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コメント
>ちなみに彼が「選択的夫婦別姓」に反対なのは、「妻が別姓だと、妾と区別つかないじゃん!」と心のどこかで思っているからに違いないと、今さらのように思い当たった。
な、なるほど! 妾という発想がなかったので、それは思い浮かばなかった!
投稿: 山辺響 | 2019年7月19日 16:02
山辺響 さん:
安倍さん自身の「恋人」発言で、露呈しちゃいましたね (^o^)
投稿: tak | 2019年7月19日 17:58
なるほど!
ものすごく腑に落ちました。
正直、明日の投票は棄権しようと思っていたのですが、やはり行くことにします。
投稿: もりけん | 2019年7月21日 00:28
もりけん さん:
投票は是非してください。
私はこの 10数年、期日前投票で済ませてます。自分の都合で行けるので、なかなかいい制度です。
投稿: tak | 2019年7月21日 11:44