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2019年8月17日

肉食を避けるライフスタイル

佐久間裕美子さんという人が NewSphere に 「ヒップな生活革命、その先(Wear Your Values)」という連載をしていて、その中で「食をめぐる問題」というのを書かれている。そのしょっぱなでレポートされているのが、アメリカの食べ物が最近おいしく健康的になってきたということだ。

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レストランのメニューに "Locally grown and sourced"(地元で栽培・調達された)との文言を見ることが当たり前になって、有機栽培の野菜も増えているというのだから、かなりうらやましい話だ。一時はジャンクフードばっかりみたいな印象のあったアメリカの食べ物だが、近頃かなり進化しているようなのである。

地元で農薬を使わずにオーガニックな育て方をされた野菜は、間違いなくおいしい。海を渡ってくる化学肥料と農薬漬けの野菜とは別物と感じられるほどだ。

彼女は 2年前から肉を食べるのを止めたと書かれている。卵や牛乳などに至るまで動物性の食品を完全に避ける「ヴィーガニズム」ではなく、魚介系は食べる「ペスカテリアニズム」を実践しているとのことで、この点は私も同様にペスカテリアンなので、ますます共感をもって読んでしまった。

今回の記事は彼女の連載の内容をそのまま紹介することが目的ではないので、興味のある方はリンク先に飛んで読んでいただきたいが、1点だけここでも強調するとすれば、「人間が肉を食べる行為を減らし、肉の生産量を減らせば、急速に進む温暖化の緩和に貢献できる」ということだ。どうしてそうなるのかも、リンク先を読んで戴ければ理解できる。

私が肉を食べない理由はこうした環境倫理的なものなので、この点でも彼女に共感する。このように、世界では好き嫌いではなくエシカル(倫理的)な理由で「肉を食わない」というポリシーの人が増えているのである。

ところが日本では肉食が花盛りで、肉を食わない人間が外食しようとすると、本当に選択肢が狭まるのである。それについては 3年前の「ノーミートのメニューは選択肢が極端に少ない」、昨年の「何でもかんでも肉が入ってしまう時代」という記事で触れた通りで、私なんか最近は「蕎麦屋以外にはアブなくて入れない」と思っているほどだ。

ここで心配になるのが、来年の東京オリンピックである。外国からかなり多くの「肉を食わない人」が入ってくるだろうが、彼らの需要にきちんと対応できるレストランは本当に限られる。

外国人に「毎日蕎麦を食え」というわけにもいかないし、さらに厳格なヴィーガンとなると魚の削り節で出汁を取る蕎麦汁も御法度だから、本当に食うものがなくなってしまう。彼らが困らないような対応ができてこそ、文化国家というものだろうが、この点では日本はお寒い限りだ。

日本は無闇に「皆と一緒」が尊重される画一主義の国で、多様なライフスタイルが受け入れられない。宗教的、倫理的な理由で食にこだわるのはややもすると「変人」「わがまま」という扱いにされてしまい、きちんとした対応がほとんど期待できない。

私は「真夏の東京でのオリンピック」なんて、ある意味狂気の沙汰と思っているほどだが、日本で肉を食わない者のためのメニューが豊富な外食店が増えるきっかけになってくれるとすれば、少しは意味があるかもしれないと思う。

【付記】

魚介は食べるが肉は食べない「魚菜食主義」は英語では "pescetarianism" と言われるが、外来語として入ってきてから日が浅いためカタカナ表記が定まっておらず、魚菜食主義者は「ペスカタリアン」「ペスクタリアン」などと表記されている。

ただ、これは魚介系スパゲティなどの「ペスカトーレ」とローマ字読みの折衷みたいなもので、実際の英語の発音から離れすぎなので、ここでは佐久間さんに倣って、「ペスカテリアニズム/ペスカテリアン」と表記した。

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