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2019年9月20日

「全身の皮膚を顔にすれば寒くない」という乱暴な発想

季節が巡って、ようやく秋らしくなってきた。下の画像は気象協会のページにあった昨日の気温を示すもの(クリックで拡大表示される)だが、東日本は概ね最高気温が 28℃ 以下で、最低気温は 20℃ を下回っている。西日本はさすがにまだ最高気温が 30℃ 前後だが、沖縄を除けば熱帯夜にはなっていない。

190920

台風 17号が南の暖かい空気を引っ張り込んでしまったら、また暑苦しくなるかもしれないと思っていたが、つくば周辺では明日は最高気温が 20℃ で、最低気温は 16℃ と予測されている。こうなると、夜などはちゃんと毛布を掛けないと寒いぐらいだ。

「寒い」という言葉で妙なことを思い出してしまった。私の母が子どもの頃、つまり戦前の話だが、近所に変わったオジさんがいて、夏は上半身裸、冬でもシャツ 1枚で過ごしていたという。そしていつも「全身の皮膚を顔にしよう」とかなんとか書かれた旗を掲げて歩き回っていたのだそうだ。

なるほど、冬になっても顔は外気に触れたままで大丈夫なのだから、もし全身の皮膚を顔にしてしまうことができたら、冬でもシャツ 1枚で十分すぎるほどだろう。もっともその乱暴な発想に積極的に挑戦してみようとは決して思わないが。

というわけで、「どうして顔の皮膚は寒さを感じないのか」ということを調べようと思い、試しにググってみたのだが、これがまた、結構面倒なことになった。

例えば「Yahoo! 知恵袋」で "寒い冬でもなぜ「顔」だけは寒くないのですか?" という質問へのベストアンサーに選ばれたのが、「マスクをすると体感温度が1℃上がるそうです。寒い日にはマスクをしてみて」というものだ。質問とは全然無関係の話である。こんなものがどうして「ベストアンサー」なんだ。

他にも "寒くても顔が寒くないのはなぜですか?" という質問に「感覚と発熱の問題です。水中では、体温の90%が頭部から奪われます。頭部の防寒は効きますよ」なんていうアサッテの方からの「ベストアンサー」もある。質問の趣旨を勘違いしているとしか思われない。

数少ないまともな解答を探しまわった結果、OKWAVE での「布団から肩が出ていると、とても寒く感じてなかなか寝れないのに肩から上(顔)が出ていても寒く感じないのはなぜですか??」という質問への KGS さんの解答が見つかった。要点をまとめるとこんな具合である。

  • 皮膚には外部からの刺激を感じる痛点、圧点、冷点、温点の4つがセンサーがあるが、各センサーの分布が体の部位によって違う。
  • 冷たさを感じる冷点はクラウゼ小体とも言われ、人間の場合、生命に直接影響のある内臓近くに多く分布している。
  • 顔は内臓から遠く、脳は頭がい骨に守られているため、寒さより熱を警戒しているために、冷点が少ない設定になっている。

なるほど。これは論理的に納得できる。

さらに「素朴な疑問集」というサイトの ごまさばさんからの解答が、「なるほど、それもあるかもね」と思わされる。まとめるとこんな感じだ。

  • 顔同様にいつも外気に晒されている「手」は冷たさを感じる。
  • この違いは、顔は手と比べて「血液の量」が違うからではないか。
  • 脳には大量の血液が循環するから、顔の体温が奪われにくいのではないか。

一応の結果としてまともなのは、この KGS さんと ごまさばさんからの 2つの解答しか見つからなかった。というわけで今のところ、この 2つの合わせ技で納得しようと思っている。

なお、ごまさばさんの解答の上に表示されている mars さんの書き込みは、一見もっともらしいが、基本的なところで「実は顔面は後頸・前腕と並び全身の中で最も『冷点』密度が高い部位の一つだといいます」という記述がまったく事実に反するので、無視! (「ヒトの冷感受性の部位差について」という学術論文参照)

インターネットはこれだから、アブナいところがあるというのだ。

あるいは人間の「暑さ/寒さ」という感覚をさらに深く突き詰めると、単純に気温や湿度と皮膚のセンサーとの関連だけでは済まない「複雑系」の領域になってしまうかもしれない。何しろ「全身の皮膚を顔にすれば寒くない」という乱暴な発想もあるくらいだからね。

 

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コメント

毎日楽しみに拝読しています
たぶん生まれてからずっと外気にさらされているので
体の他の部分と比べて感覚の閾値が高くなっているのだと思います
本当に寒いところへ行けば寒いですし
氷などをつければ
体の他の部分と同じように冷たく感じますよね
じゃぁ生まれたときから
裸ならやっぱり顔の皮膚になるのかって事になりますが
なるんじゃないかなぁと
ただ
その前に体温が下がって死んじゃうんだと思います

投稿: わさび | 2019年9月20日 20:17

わさび さん:

なにしろ、普段は上半身裸で、冬でもシャツ 1枚のオッサンがいたというほどですからね。なかなか得体の知れない世界です (^o^)

投稿: tak | 2019年9月20日 21:48

ほほー、これは面白いですねえ。好奇心をくすぐられます。

私見ですが、猿の顔面には毛がありません。とすると人間だけでなく霊長類全般の顔面が寒さに強いと言えそうです。哺乳類全体で考えてみても、顔面の毛が長い動物と言うのはすぐには思いつきません。特に鼻先はほぼ無毛のような気がします。

ではなぜ顔面の毛が短くまたは無毛なのか。
おそらく視覚・嗅覚・聴覚・呼吸・食事の邪魔になるからではないでしょうか。
つまり外界の情報と必要物を取り入れる器官が顔面に集中したため、その取り入れの妨げとなる毛が少なくなり、同時に毛が少なくても大丈夫なように寒さに強くなっていった、という説はどうでしょうか。
哺乳類の足裏に毛が無いのも、滑りやすくなってやはり邪魔だったからでしょうか。

と、ここまでうまくまとまった様に見えますが、猿の尻に毛が無いのはなぜかと思い至った時に詰みました(笑)
まさかSEXアピール!?

投稿: らむね | 2019年9月20日 22:25

らむね さん:

いずれにしても、顔面には毛がない方が楽なので、冷点も退却してくれたんだろうと思うのが自然なのでしょうね。

サルなどのお尻に毛がないのは、う〜む、やっぱり SEX アピールなのでしょうかね (^o^)

投稿: tak | 2019年9月21日 20:38

昔高倉健さんの映画で網走番外地シリーズがあり、網走なので大変寒いわけですが、健さんが「全身ツラだと思えば寒くねえよ」というセリフを言っていたのですよ。
実際顔だと思っても寒いものは寒いと思うので、無理な話ですけどね!
イラストレーターの和田誠さんのエッセイで読んだときは「全身ツララだと思えば寒くねえよ」だったと記憶していますが、「ツラ」の方がありえますよね。

投稿: Rスズキ | 2023年11月18日 15:35

Rスズキ さん:

>イラストレーターの和田誠さんのエッセイで読んだときは「全身ツララだと思えば寒くねえよ」だったと記憶していますが、「ツラ」の方がありえますよね。

「ツララ」というのは、かなり無理があるような気がしますので、やっぱり「ツラ」でしょうね (^o^)

投稿: tak | 2023年11月18日 18:11

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