「勝利」と「敗北」という対義語
「勝利」と「敗北」という言葉がある。なんとなく気にかかっていたことだが、「勝利」の反対語が「敗北」で、なぜか「北」という文字が突く。なのに「勝南」という言葉があるというわけじゃない。これは一体どういうことなのだろうか。
まずどうして「敗北」という言葉があるのかというと、「北」という漢字には、元々「敗走する」という意味があるのだそうだ。「語源由来辞典」には次のようにある。(参照)
「北」は二人の人が背を向け合っているさまを示した漢字で、「相手に背を向ける」「背を向けて逃げる」の意味があり、「逃げる」の意味もある。
そこから、「戦いに負けて逃げる」ことを「敗北」というようになり、単に争いに負けることも意味するようになった。
なるほど、「北」というのは象形文字だったのだね。
一方、「南」というのは暖かい方角だから元々いい意味なのだろう。のほほんとしたイメージだから、戦いの結果を示すということにもならず、だから「勝南」なんて熟語にもならない。
ではなぜ「勝利」と「利」の字が付くようになったのか。「利」という漢字の成り立ちを調べると、「一期一名」というサイトに次のようにある。(参照)
「禾」は穀物、ツクリの「刂(りっとう)」は刃物を表し、2つを組み合わせて「穀物を刈り取る様子」を表す。
というわけで、「利」の字は「鋭い」とか「役に立つ、順調な」といった意味をもつようになったという。
なるほどね。そういうわけで、「勝利」と「敗北」という対義語が成立したわけだ。
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コメント
廃木 になってますよ
投稿: 重箱の隅 | 2019年11月 4日 01:10
北風を受けるのが「背」ですよね。
投稿: ハマッコー | 2019年11月 4日 17:46
重箱の隅 さん:
おっと失礼、ありがとうございます。さっそく訂正です。
投稿: tak | 2019年11月 4日 18:33
ハマッコー さん:
なるほど。
人は基本的に明るい南を向いていたいわけですね。
投稿: tak | 2019年11月 4日 21:03
そこまで顕著ではありませんが、先日ふと、増大(あるいは増加)と減少のアンバランスも気になりました。
増減が対であるならば、大小を対応させて、増大・減小になるのが自然に思えますが、たいていは減少を使うように思います(「減小」もいちおう変換はできますが、手元の国語辞書には載っていない)。減少を基にするならば、増多となるはずで、これも変換はできますが、見たことはない…。
投稿: 山辺響 | 2019年11月 5日 15:53
山辺響 さん:
「増加」の反対語は「減引」だろう! とも言いたくなるような。
ううむ、深く考えすぎると頭痛くなりそうなので、適当な所でやめときます ^^;)
投稿: tak | 2019年11月 5日 22:07