「せん遍以」を「方言漢字」とはこれ如何に?
東京新聞の 11月 16日付に「草加にちらほら…なぜ「せん遍以(べい)」 八潮の昼間さん、方言漢字を探る」という記事がある。草加煎餅の老舗の看板に「草加せん遍以」という表記が目立つことから、これを「方言漢字」と称しているという内容である。
正直言って驚いた。こんなの、ことさらに「方言漢字」なんて言うより、単なる「変体仮名」による表記とみれば OK だろう。「そば」を「そむ」みたいに見える字で書くのと同じだ。これについて私は、8年近く前に ”「そむ」 って何だ? ” という記事にしている。
「そむ」と見えてしまう表記の、一見「む」の字に見えるのは、あれは「者」という漢字の草書体で、「は」と読むのだ。つまり「そむ」と見えるのは「そは」と書いてあるのである。(もっとも最近はそれを知らずに、モロに「そむ」と書いていい気になっているケースが多いが)
さらに同じようなものに「う奈ぎ」(うなぎ)とか 「志る古」(しるこ)などがある。
ちなみに「方言漢字」でググって見ると、「方言漢字から歴史学んで 埼玉・八潮でシンポジウム」という記事が見つかった。以下に内容の一部を紹介する。
講演した笹原宏之早稲田大教授(国語学)によると、「閖」は水が門の中に入ってきたことを示しており、かつて津波被害に遭った先人からのメッセージとの見方もできるという。
八潮市には「垳」という固有の地名があるほか、千葉県匝瑳市の「匝」、石川県羽咋市の「咋」など方言漢字は全国各地で使われている。
なるほど、「閖」「垳」などの地方独特の漢字表記を「方言漢字」というのはわからないでもないが、単なる変体仮名表記は地方独特というわけではなく全国的なものだから、「方言漢字」というには当たらないだろう。一緒にしてもらいたくはないなあ。
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コメント
https://mojikiban.ipa.go.jp/1bf7a30fda/data/MJH
こちらのページに、「ヘ」の変体仮名として「遍」の変化がありますし、「以」は言うまでもありませんね。
「方言漢字 草加せんべい 変体仮名」などでググっていくつか漁ってみましたが、誰がどこまで勘違いをしているのか判別できませんでした。
1、この大学職員が変体仮名を知らない
2、知っていて、草加地域だけ「遍」由来の仮名を使っていることを「方言漢字の一種」と考えているが、記事を書いた東京新聞が変体仮名を知らない
このどちらかのようですけどね。
投稿: らむね | 2019年11月18日 23:10
らむね さん:
>このどちらかのようですけどね。
まさに、そうとしか考えられませんね ^^;)
投稿: tak | 2019年11月19日 23:57