大塚家具とヤマダ電機は、似たもの同士?
昨年末のニュースなので今やちょっと旧聞になってしまったが、大塚家具がヤマダ電機の傘下に入ることになったようだ。大塚家具に関してはこれまで 2度書いている("大塚家具の騒動を外野から眺めて" :2015/3/3、"大塚家具は、末期的状態らしいので " :2018/8/5)ので、その流れでもう一度書こうと思う。
世間では「大塚家具は高級イメージがあるのだから、大衆路線への転換は間違いだった」「従来路線を継続した父親の『匠大塚』の業績は順調なのだから、娘の方針が失敗なのは明らか」という声が大きくなっている。しかしマーケットというのはそんな単純なものじゃない。
私は上述の 2015年 3月 3日の記事で、次のように書いている。
大塚家具という会社は、高度成長期の日本に最適化して伸びてしまったから、今になって体質改善に苦労しているという典型的な例なんだろう。従来手法を維持するにしても、新しいマーケティングを採用するにしても、多分どちらの道も多くは望めないだろうと思う。いっそ高級ゾーンと普及ゾーンの 2つのマーケットに対応するために、分社してしまえばいいのに。
で、推移としては図らずもその通りになった。もっとも明確な経営コンセプトに沿った判断ではなく、「喧嘩別れ」でそういう結果になったというだけのことなのだが。
さらに 2018年 8月 5日の記事ではこんな風に書いた。
というわけで、大塚家具のようなビジネスモデルは、既に歴史的使命を終わりかけているのだろう。倒産しないで存続するためには、外聞を気にせずに、規模を思いっきり縮小しなければならない。
朝日新聞の記者の視点では、「不死鳥のような復活か、さもなくば倒産か」という二者択一の運命しかないような書き方になっているが、「不死鳥のような復活」なんて求めたら絶対に潰れる。ここは、「近頃はなかなか話題にならないけど、どっこい、高収益モデルとして生き延びてます」みたいな企業になるしかないではないか。
で、結果として図らずも「どっこい、高収益モデルとして生き延びてます」となっているのは、親父の「匠大塚」の方である。喧嘩別れのおかげで企業規模が思いっきり縮小してしまったのだから、従来イメージを崩さない路線で成功するのは当たり前の話で、要するに「いいとこ取り」しちゃったわけだ。
残された本体の大塚家具としては、企業規模としてはそんなに小さくなっていないのに「いいとこ」だけ親父に持って行かれちゃったのだから、低迷するのは当然だ。むしろ、潰れてないだけ「まだマシ」ということだってできる。
いやはや、前に軽い気持ちで書いちゃった通りの結果になってるので、我ながら気持ち悪いほどだ。いっそ嫌いな仕事の筆頭、「マーケティング・コンサルタント」とか「ビジネス・コンサルタント」とかにでもなっちゃおうかしらん。
私としては 2015年 3月 3日の記事で書いたように、「いずれにせよまったく思い入れのない企業だから、どうなっても知ったことじゃない」というだけの話だ。ヤマダ電機に対しても、似たようなスタンスなので(参照:ヤマダ電機のマーケティング)、今回は「似たもの同士でくっつくのね」と思っている。
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コメント
ヤマダ電機は家丸ごとを扱うようになってきましたね。瓦屋根や壁材も店内に見本が置いてあります。今度はポテチの横に家具を並べるんだろうか。
資金援助だけでは大塚家具はただの金食い虫なので同じ結果を繰り返すだけになる。家賃の高い既存の売り場から撤退してヤマダの店舗の一部を利用して営業することになるだろうが、家具売り場は場所を食う。
マーケティングの失敗した者同士が手をつないでどうなるか興味が尽きません。
投稿: ハマッコー | 2020年1月23日 08:10
ハマッコー さん:
>瓦屋根や壁材も店内に見本が置いてあります。
それは知りませんでした。家具を置くのは時間の問題ですね。
一体、何屋さんになるつもりなんでしょう。
投稿: tak | 2020年1月23日 19:37