「ネスティング」という言葉の意味合い
久しぶりに会った友人が、「近頃は『ステイホーム』というより、もろに『ネスティング生活』だよ」と言っていた。「へえ、『巣ごもり』しちゃってるわけね」と言うと、「いや、『巣ごもり』というよりもっと積極的で、家の住み心地をよくするのに情熱を燃やしちゃってる」なんて言う。
部屋の模様替えをしたり、壁紙を貼り替えたり、照明をアレンジしたりと、結構楽しんでいるらしい。コロナ騒ぎが起きる前は仕事仕事で、それどころではなかったので、これを機会に「インテリア親父」になってしまっているという。とにかく、何か夢中でしていないと気が済まない男である。
ただ、そうした生活を「ネスティング」と言うのは、ちょっと意味合いが違うんじゃないかなあと思っていたが、どうやら英語の "nesting" と日本語の「ネスティング」は、微妙にニュアンスが違うらしい。手持ちの辞書で調べてみると、こんな具合である。
英和辞書の "The WISDOM English-Japanese Dictionary" で ”nest" ("nesting" の項目はなかった)を引くと
名詞
- (鳥、昆虫、小動物の)巣、巣穴
- (悪党の)巣窟、隠れ場、(犯罪の)温床
- 家、住処、心地よい(くつろげる)場所、(人目に付かず安全な)休息の地、避難場所
- 入れ子式家具、(容器)一式
- ひとかえりのひな、(同じ巣に住む鳥、昆虫などの)群れ、(悪党などの)一味、同じものの集まり
- (火器の)陣地、基地
自動詞
- (鳥などが)...に巣を作る、巣ごもりする
- (物が)ぴったりはまる、入れ子になる
- 鳥の巣を探す、採りに行く
他動詞
- 入れ子にする、重ね合わせる
- ...を巣にすませる(入れる)
とある。どちらかと言えば、鳥や虫の「巣」とか「巣窟」とかいうイメージが勝っていて、あとは「入れ子」というイメージが強い。そういえば、入れ子式に積み上げて収納する椅子なんかを、「ネスティング・チェア」なんていうよね。
一方、国語辞書で「ネスティング」を引くと、上の画像(Goo 辞書)で示したように、こんな具合である(参照)。
外で遊び回らず、自分の部屋を居心地よく演出することを重視するライフスタイル。インテリアに凝ったり、自分の趣味に合う食器や家具をそろえて恋人や親しい友人を招き、食事やゲームを楽しんだりする。
さらに「ネスト 4」というのは、「 構造化プログラミングにおいて、複数の命令群を何層にも組み合わせ、内包させながらプログラムを構成すること。入れ子構造。ネスティング」ということになっている(参照)。プログラミングの世界の専門用語で、「入れ子」という意味合いが強調されている。
うぅむ、こうしてみると日本語の「ネスティング」では、やたら具体的に「家の居心地を良くすることにこだわる」みたいな意味合いが強調されているように思われるよね。ずいぶんドメスティックな価値観に沿っているわけだ。
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コメント
おおお…(;゚д゚)
僕はプログラマーなので、条件分岐の中の条件分岐とか、
いわゆる入れ子の意味でしか使ったことがない単語です。
こういうところ、一般の方(パンピー)とズレることが多いんですよね
気をつけます…
投稿: ひろゆき王子 | 2020年5月 2日 23:32
ひろゆき王子 さん:
現状、「巣作り」と「入れ子」が意味として代表格ですよね。
投稿: tak | 2020年5月 5日 06:22
電気回路系だと ラッツネストというのがあります。 どんなものかはググってもらうのが正解ですが、(近年ネズミの巣を見ることは少ないので、) 電柱のカラスの巣みたいなものという例えがよさそうなものです。
プログラムでの用例も同様な感じですが、「なんか グチャグチャ積み重なったもの。」を指し示す言葉のようですね。
我が家はへんなところで 欧米風であったのか。
投稿: Sam.Y | 2020年5月 6日 16:39
Sam.Y さん:
なるほど。
「ネスティング」とは、プラグラミングの世界ではかなり具体的なイメージが確立されているもののようですね。
投稿: tak | 2020年5月 6日 23:02