「ソーシャル・ディスタンス」ではなく「フィジカル・ディスタンス」
新型コロナウイルスによる感染症拡大に関連して、WHO は最近 ”social distancing" ではなく"physical distancing" という言葉を使うことを推奨している(参照)。カタカナ言葉で言えば、「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)ではなく「フィジカル・ディスタンス」(物理的距離)ということだ。
個人的にも、「お互いの距離を十分に取り合う」ということを「ソーシャル・ディスタンス」という言葉で表現することには、かなりの違和感を覚えていた。「『社会的距離を置く』なんて言ったら、意味合いが別になっちゃうだろう!」と思っていたので、当初はなるべくこの言葉を使いたくなかった。
しかし言葉としてどんどん市民権を確立してきたように見えたので、今月 16日の「満員電車には乗れない体になってしまった」という記事中でしかたなく、(西欧人、米国人に関して)「彼らの『ソーシャル・ディスタンス』は、どうみても日本人よりずっと広い」と、初めてこの言葉を使った。
ところが皮肉なもので、それより 2ヶ月も前に、WHO が、"physical distancing" という言葉を使おうと呼びかけていたのだ。東京新聞も先月 25日付で "<新型コロナ>「ソーシャル・ディスタンシング」→「フィジカル・ディスタンシング」 人との距離、言い換える動き" という記事を載せている。
ああ、もうちょっと注意深くニュースに接していればよかった。
よくよく考えるまでもなく、そりゃそうだよね。この場合はどう見ても、「社会的距離」なんて言うより「物理的距離」と言う方が的確な表現だ。私が元々抱いていた違和感は正しかったということになる。
今後は自分の言葉センスにもっと自信をもとうと思ったのであった。
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