ポリティカル・コレクトネス(政治的適正)という問題
スラドが 7月 26日付で "VMware がコネクターの「オス/メス」表記を非推奨にするとの報道" という記事を載せている。元記事は The Register の "VMware to stop describing hardware as ‘male’ and ‘female’ in new terminology guide" (7月 23日付)というものだ。(VMware: 参照)
コネクターの(いわゆる)「オス/メス」を英語でも ”male/female" と言い慣わしているとは、この年になって初めて知った。洋の東西を問わず、発想は共通しているようなのである。
そして今後は "plug/jack" (プラグ/ジャック)の表記を推奨するというのだが、「ジャック」が「受け口」の方だったなんてことも、この年になって初めて知った。何しろ 68歳になったばかりだし。
ポリティカル・コレクトネス(政治的適正)に基づいた表現というのは、1980年代に米国で始まったものだが、40年近く経った今でもコネクター関連で ”male/female" なんていう言葉を使っていたとは、かなり意外なことである。妙なところに盲点ってあるものだ。
この記事では、次のような語句の置き換えも推奨されるとしている。
英語 | 意味 |
she/he → they | 彼女/彼 → (ちょっと意訳して)人々 |
kill/abort → stop | 殺す/中絶する → 止める |
segregate → separate | 隔離する → 隔てる |
blacklist → denylist | ブラックリスト → 否定リスト |
black hat → unethical | 悪意あるハッカー → 非倫理的 |
なるほど、性的、身体的、人種的にアブない、あるいはビミョーな表現は避けようということのようだ。ただ、これに関しては次のように触れられていて、さらにビミョーのようなのである。
ソースはThe Registerが目撃した「Offensive Terminology Effort」というVMwareの内部文書とのことで、真偽も確認できない。導入時期や方法については記載がなかったとのことだが、VMwareが数日前に公開したサポートドキュメントの中にも「blacklist/whitelist」が使われているものがあり、VMware内部で話が進んでいる感じでもなさそうだ。
本当だ。リンク先をみると何とまあ、見出しの部分に "whitelist and blacklist" としっかり表記してあるじゃないか。ことほどさように、この問題に関しては、まだまだこれからのようなのだ。それにしても改めてみると、IT 用語って、ヤバい表現が案外多いのだね。
| 固定リンク
「言葉」カテゴリの記事
- AirPods でリアルタイム翻訳が可能になるらしいが(2025.03.16)
- 睡眠時間が短いと、「死亡率」が増加するって?(2025.03.08)
- 177番の天気予報が、来月末で終了なんだそうだ(2025.02.28)
- 「Me-Time(自分時間)」って、うまい言い方だ(2025.02.16)
- 日本人の英語力って、下から数える方が圧倒的に早い(2025.02.07)
コメント
PCの中にハードディスクが二個入ってると、それぞれに「master] [slave] という名前をプログラミングでは付けてますが、それを「main] 「replica] に置き換えようという動きが加速しているようです。
https://www.businessinsider.jp/post-214738
投稿: ハマッコー | 2020年7月29日 01:46
takしぇんしぇいの後追いになりまつが、コネクターの凸と凹を欧文でもそうゆうふうに表示するとは、異星人のぼくもギョッとしたよ。おっさんの考えることはどこもだいたい同じなんだね( ̄ー ̄)
投稿: NOUSAGI-1 | 2020年7月29日 12:18
ハマッコー さん:
確かに "Slave" は問題ありすぎですね。
IT 用語というのは、これまで案外無神経にきてしまったようです。「オタク同士の符丁」的なものでいいやという感覚が強かったのかもしれません。
投稿: tak | 2020年7月29日 21:15
NOUSAGI-1 さん:
>おっさんの考えることはどこもだいたい同じなんだね( ̄ー ̄)
それは言えてる (^o^)
IT 用語の世界も、ようやく「もの好きオタク」だけの間で意味が通じりゃいいやという感覚から、ある意味「民主化」されつつあるのかもしれません。
投稿: tak | 2020年7月29日 21:17
昨年、メレディス・ブルサード『AIには何ができないか:データジャーナリストが現場で考える』という本を読んだのですが、タイトルどおりというよりも、STEM(Scicence, Technology, Engineering and Mathematics)分野が、リベラルなイメージとは裏腹に、ジェンダーや人種・民族に関する差別意識が強く、リバタリアニズムとの親和性が高いと分析されている点が面白かったです。
投稿: 山辺響 | 2020年7月31日 16:38
山辺響 さん:
なるほど。
リベラルとリバタリアニズムは、かなり別物なんですね。
投稿: tak | 2020年7月31日 19:22
英語には疎いので思いつくのは日本語ですが、教育現場では絵の具の「肌色」は今は「薄だいだい色」と言いますね。あと笑える話としては、工業高校で先生がネジのオスメスの呼び方を教えたら、保護者からクレームがきたとか(いや笑えないのか?)。
この流れは基本的に賛成なのですが、以前見た例の中でどうしても素直に賛同できないものがありまして。
それは「女王」です。
曰く、男の王は男王と呼ばないのに、女の王をなぜ女王と呼ぶのか、女性蔑視につながる表現だ、だそうで。
(英語はking/queenだから良いのだとか。まあ確かにfemale kingなどとは言いませんが)
うーん、確かに理屈ではそうですが・・・
私自身が「女王」という言葉を使うとき、そこに女性蔑視の感情はこれっぽっちもないので、それを「女性蔑視だ!」とレッテルを貼られてしまうと複雑な気分です。これも10年20年すれば女王を使わないほうが一般的になるんでしょうか。
takさん、どう思われます?
投稿: らむね | 2020年7月31日 23:13
↑上の工業高校の例、女子生徒の保護者から、です
投稿: らむね | 2020年7月31日 23:15
IT業界でメシを食い始めてはや四半世紀…
今さら急に呼称を変えろと言われても、それに対応できる柔軟性を兼ね備えているか…自信ございません。
私なんかの年齢(←45歳)以上のIT技術者は、たぶんそのままの呼称で仕事しちゃうんじゃないかなと思っております。
投稿: もりけん | 2020年8月 1日 03:57
らむね さん:
「女王」については、ちょっと横っちょの方からの発想ですが、発音関連で鬱陶しくも面倒くさい問題があることもあって、個人的にはあまり使いたい言葉ではありません。
(参照:「女王」は「じょおう」か「じょうおう」か」)
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/11/post_c06e.html
将来的には「クィーン」という外来語にまとめてもらいたいぐらいに考えています。
女王蜂は「クインビー」になるのかなあとも思いますが、このカタカナ言葉、既に余計なイメージが付きすぎているみたいで、これまた鬱陶しいですね ^^;)
投稿: tak | 2020年8月 1日 15:46
もりけん さん:
確かに、長年ごく自然に言い慣わしてきた言葉というのは、なかなか変えられませんね。
「そっちのチャネルは殺しといて」なんて、フツーに使っちゃいますから。
ただ、「オス/メス」だけはそのうち変えないといろいろ差し障りが出てきそうな気がします。
今のうちに「デコ/ボコ」に変えといたりして (^o^)
投稿: tak | 2020年8月 1日 15:58