ラジオ体操では、どうしていつも左が先?: その 1
65歳を過ぎた頃からどういうわけか、NHK ラジオに合わせて「ラジオ体操」というのをするようになった。若い頃は「こんなもん、軽すぎてちっとも運動にならんわ」なんて思っていたが、近頃では朝一番の運動としてちょうど手頃と感じるのだから、年は争えないものである。
ところでラジオ体操では、前後の動きでは当然ながら前が先だが、左右に関してはいつも左が先と決まっている。子どもの頃は「どうして左が先?」と不思議だったが、これ、日本では飛鳥時代からの伝統であるらしい。日経の「くらし&ハウス 暮らしの知惠」というサイトに詳しく解説してある。
「右と左どっちが上位? 国内外で違うマナーの常識」というページで、初出は「日経プラスワン」2013年 2月 2日付だそうだ。インターネットの世界広しと言えども、私の見るところ、この問題についてはこのページが最も適切にしかも解りやすく説明してある。
「左の方がエラい」というのは「左上右下(さじょううげ)」と言われる原則で、体の動きにしてもこれに沿って左が先と決まっている。この思想は大昔に唐の国から遣唐使が持ち帰ったもので、その根拠はこんなようなことであるらしい。
皇帝は不動の北極星を背に南に向かって座るのが善しとされ、皇帝から見ると、日は左の東から昇って右の西に沈む。日の昇る東は沈む西よりも尊く、ゆえに左が右よりも上位とされた。
いわゆる「天子南面」に発するもので、なるほど、理窟である。というわけで律令制のもとでは、「左大臣」の方が「右大臣」より偉かった。今でも「格上の人が左に座る」というのがビジネス・マナーとされているし、ラジオ体操の体の動きでも「左が先」となっているのだから、なかなか馬鹿にならない(参照)。
とはいえ、本家本元の中国では「王朝や時代の変遷によって『左上位』と『右上位』がしばしば入れ替わった」というのだから、「何だよ、それ!」と言いたくなってしまう。一度伝えられたことを律儀に守り通している日本は、かなり(あるいは無駄に?)生真面目な国なのかもしれない。
もっとも西洋では、英語でも「右」を「正しい」という意味ももつ "right" という言葉で表すほどで、「右が上位」と決まっており、それがそのまま国際儀礼になってしまっている。それで日本の皇室もそのプロトコルに沿い、今は天皇陛下が右に立たれるという。(ひな人形も「関東式」はそう飾る)
「左右」というのは突き詰めていくと結構ややこしい話になるが、それはこの問題に関する宿命でもある。これについては長くなるので、稿を改める。
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コメント
ひゃあ~びっくりしましたぁ~~
ほんと!ちょっとラジオ体操をやって
確かめましたよ。
なんと!左が先なので
びっくりしました~~ひゃあ~~
ほんと!
私はこの年で初めて気が付きましたが、
takさまは、小学生でもう、気づいておられたなんて!!
さすがですね!!
投稿: tokiko | 2020年8月19日 13:43
tokiko さん:
これまで気付いていらっしゃらなかったとは、逆にびっくり! (^o^)
投稿: tak | 2020年8月19日 14:36