「血ぃ見るで!」・・・ 一音節名詞のこなし方
本日は、一昨日の "「カガ/チガ」じゃなかった、「蚊/血」に見る二律背反" という記事の、いわば続編のようなものである。「またしても、妙なところにこだわってるな」と苦笑いされるかもしれないが、まあ、ちょっと我慢してお付き合いいただきたい。
親が「蚊が!」とか「血が!」とか言いがちなので、子どもが「カガ」とか「チガ」とかいうのだと思い込むのは、結構よくあることのようなのだ。それで小学校 6年生の子が「『カガ』に刺されちゃった」と口走ったり、ウチの長女が怪我をして「『チガ』が出ちゃった」とアセったりする。
それで私としても、"げに恐るべきは「一音節の名詞」である" と書いている。
ところが関西弁では、「一音節の名詞」を文字通り短い一音節で発音することは少ないようなのである。母音をちょっと延ばし気味にして、寸詰まりの一音節で終わるのをビミョーに避けている。
というわけで「蚊」とか「血」は、「蚊ぁ」「血ぃ」になったりする。「いわゆる標準語」では「血をみるぞ!」というところが、「血ぃ見るで!」になり、このシステムの方がずっと迫力あるのだ。
そのおかげで、「手を出す」と言うところを「手ぇ出す」と発音して、「を」という助詞の省略を可能にしている。「いわゆる標準語」では助詞を省くと「手出す」になって寸詰まり感が出てしまうが、「手ぇ出す」だとかなり自然だ。やはり関西弁の方が日本語の本家本元と思わざるを得ない。
ちなみに私の故郷の庄内弁でも、「蚊ぁ」「血ぃ」「手ぇ」・・・ になる。「蚊に刺された」は、庄内弁だと「かぁがらかっだ」。わけわからないだろうが、原語的には「蚊から食われた」ってこと。
ついでに説明しておくと、「食う」は「食わない、食います、食う、食うとき、食えば、食え、食おう」の五段活用だが、庄内弁では、「かね、(くいます)、く、くどぎ、けば、け、こ」と、チョー・シンプル。なお、「くいます」なんて言い方は滅多にされず、敢えて丁寧に言うなら、「くなでがんす」かな。
尾籠な例だが、「へぇふる」と言ったら「屁をひる」という意味で、ちょっと高尚になると「木を見て森を見ず」は「木ぃ見で森見ね」だ。関西だと「木ぃ見て森見ぃひん」みたいになるのかな。
自然な日本語では、「てにをは」が結構自然に省かれる。ところが「一音節の名詞」をかっちりと短く発音する際には、ことさらに使う必要が生じてしまうわけだ。ちょっとワンクッション置かないと、どうしても寸詰まりになってしまうのでね。
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コメント
>「かね、(くいます)、く、くどぎ、けば、け、こ」と、チョー・シンプル。
……非庄内弁話者としては、どこがシンプルながかさっぱりわかりません……w
投稿: 柘榴 | 2020年9月 3日 06:47
柘榴 さん:
「食わない」(4音節):「かね」(2音節)
「食えば」(3音節): 「けば」(2音節)
「食え」 (2音節) :「け」( 1音節)
「食おう」 (3音節): 「こ」(1音節)
庄内弁では、音節がほとんど半分で済みます。
「ご飯を食べなさい」が、「ままけ」で済むのですから、これをシンプルと言わずに何と言えばいいのでしょうか (^o^)
投稿: tak | 2020年9月 3日 17:35
速記さながらの高度な圧縮プロトコルですね。あまりに先進的すぎてにわかにはちょっと手が出せないですw
投稿: 柘榴 | 2020年9月 4日 09:01
柘榴 さん:
確かに、すごい圧縮プロトコルではありますね (^o^)
投稿: tak | 2020年9月 4日 11:34