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2020年9月26日

「現金なやつ」と、キャッシュレス後進国

Japaaan Magazine のサイトに "よく「現金なヤツ」というけど…その語源を調べてみたら、文字通りの通貨だった" という記事がある。「現金なヤツ」の「現金」というのは、とりもなおさず、お金の「現金」ということだったというお話だ。

200926

江戸の昔は「掛け売り」が盛んで、月末にまとめて払うというのが一般的だった。ところがこれだと、払いを踏み倒されるリスクもあり、店側としては「いつもニコニコ現金払い」してもらうに越したことはない。

で、現金払いしてくれるなら客の言う多少の無理は聞かないこともないということだった。そんなわけで、この記事では次のように説明されている。

例えば客が無理な条件を提示した時、ツケ払いなら「あきまへん」など一刀両断にされるところ、「現金一括で支払うからさ」とカネを出したら「勉強させてもらいますわ」と手のひらクルリ。

そんな変わり身の早さを「現金なヤツ」と呆れるやら、商売上手を感心するやら……というのが語源だそうです。

で、この記事の 2ページ目に使われているのが、奥村正信の浮世絵『駿河町越後屋図』(上図: クリックで拡大表示される)で、よくみると左側の鴨居に「現金かけねなし」の貼り紙がある。

この駿河町越後屋という呉服屋は、実は現在の百貨店、三越の前身で、Wikipedia の「三越」のページに、次のように紹介されている。

江戸時代の1673年(延宝元年)に江戸本町一丁目14(後の駿河町、現・東京都中央区日本橋室町の一部)において、「店前現銀売り(たなさきげんきんうり)」や「現銀掛値無し(げんきんかけねなし)」「小裂何程にても売ります(切り売り)」など、当時では画期的な商法を次々と打ち出して名をはせた、呉服店の「越後屋」(ゑちごや)として創業。現在では当たり前になっている正札販売を世界で初めて実現し、当時富裕層だけのものだった呉服を、ひろく一般市民のものにした。1928年には「株式会社三越」となった。

今は、下手すると時代から取り残されかねない百貨店だが、江戸時代は世界の最先端を行くビジネスモデルとしてスタートしていたわけだ。

そしてその最先端のビジネスモデルを描いた浮世絵に、さらにまたアバンギャルドな絵画手法が使われている。左側の間はオーソドックスな遠近法で描かれているのに、右側の間は一見すると、奥に行くほど広がっているように感じられることにお気付きだろうか。

このように、近代西洋画的な遠近法にとらわれないというのが浮世絵の特色だが、さればといって、遠近法の発想とテクニックがなかったわけでもない。それは左側の間がおおむねちゃんとした(天井の描写がちょっと辻褄合わないが)遠近法で描かれていることからもうかがわれる。

そして右側の間は壁で隠されている部分が多いので、遠近法なんて適用してもしょうがないと言わんばかりだ。「その辺のことはわかってるけど、あえて理窟にはとらわれないもんね」ということのようなのである。

要するに、当時の日本人の発想というのはかなり自由奔放、自在の境地に遊ぶというところがあり、そんなところからも「現金正札販売」を打ち出すビジネスモデルにつながったのではないかと思ってしまうわけだ。

ただ、この「現金正札販売」重視のポリシーが、時代の変わってしまった今では「日本はキャッシュレス後進国」ということになって現れているのかもしれない(参照:時代遅れの「現金主義国家」日本)。世の中の移り変わりというのは、なかなか難しいものである。

 

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コメント


キャッシュレスで進んでいるのはユニクロでしょうか。
無人レジで商品をかごに入れたままトレイの上に置くと瞬時に買い物内容と合計額が示されびっくり、決済方法をクレカに設定して暗証番号をいれてオシマイ。実にストレスフリーです。
帰宅してから値札シールをはがすと裏面にICタグが印刷されてました。
一枚10円くらいのようなのでスーパーやコンビニではとても使えないシステムですがユニクロにはピッタリのシステムです。

これにより十人位いたレジ要員が3人になっているので、人件費の節約額は年間五千万位になるでしょう。
京都大学に100億円寄付できるのも納得です。
(100億を寄付できるのは工場労働者が過酷な労働を強いられている結果かも)

投稿: ハマッコー | 2020年9月27日 22:15

ハマッコー さん:

へえ! 最近ユニクロで買い物をしてなかったので、知りませんでした。

今度試してみます。

投稿: tak | 2020年9月27日 22:39

おお、しばらく前から「未来の買い物スタイル」みたいな記事で目にしてましたがユニクロでやってましたか。私も最近行ってないので知らなかったです(そもそも地方店舗で大丈夫かな・・・)。

見聞きした中で一番進んでるなあって思ったのが
「店内いたるところにカメラがあり、買い物客それぞれと、その人が手に取った商品をすべてAIが識別し、棚から直接自分のカバンに放り込み、出口のゲートで客のポケットのスマホとリンクして会計を済ませる」
というやつで。すごいことを考える人がいるもんですよねえ。実用化されれば万引きがゼロになるメリットもあるそうですが、この買い物スタイルって万引きそっくりですよね(笑)

投稿: らむね | 2020年9月28日 14:31

らむね さん:

ご紹介のシステム、気分はもろに万引きですね。

しかも、堂々たる万引き (^o^)

投稿: tak | 2020年9月28日 16:05

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