« デザイナーとしての葛飾北斎 | トップページ | 「ぶっちゃけ本音主義」もここまで来たか »

2020年9月11日

「お洒落なだけの web サイト」は付き合いきれない

東洋経済 ONLINE に垣内勇威(かきうち ゆうい)さんという方による「Web サイト刷新の 75% が失敗に終わる残念な訳」という記事がある。「経営者や責任者の気分はユーザーに無視される」というサブタイトル付きだ。

200911

私はこの記事を読んで、「そうそう、そうなんだよ!」と膝を打った。いや、実感としてはむしろ逆に「ユーザーにとっての『使いやすさ』は、経営者や責任者の『気分』で無視される」という方がいいんじゃないかとさえ思う。

本当に(どこのサイトとは敢えて言わないが)、企業や団体の Web サイトが突然リニューアルされてしまうと、それまで重宝していたページへのリンクが妙に廻り道になってしまったり、あるいはそのページ自体が削除されてしまったりで、「なんだよ、こりゃ!」と言いたくなってしまうことが多い。

見た目は確かに「お洒落」にはなっている。しかしただそれだけの話で、使いやすくなったとも中身が充実したとも言えず、大抵の場合はむしろ使いにくく薄っぺらになってしまっている。

なんでそうなってしまうかというのは、垣内氏が明確に指摘しているように、"Web サイトリニューアルにおいて、最も重視されるのは表層的な「デザイン」の刷新" でしかないからだ。具体的には、次のように指摘されている。

リニューアルの大半は、経営者や事業責任者の「気分」でスタートする。彼らにとって Web サイトリニューアルは「儀式」の1つだ。「新しく社長に就任する」「新しい経営戦略を打ち出す」「DX(デジタルトランスフォーメーション)に注力している感を出す」など、「新しい感」を出したくなったときにまずテコ入れされるのが Web サイトである。

私自身、10年以上前に Web サイト制作の仕事に関わっていた(顧客のほとんどは中小の企業、団体だったが)時にも、それは如実に感じていた。経営者や理事たちの要望なんて単なる「雰囲気のモノ」でしかなく、「お洒落な見た目」しか求められない。

彼らの多くは「きれいな写真やビデオをふんだんに使って、動きのあるページにしてくれ」なんて言うのである。だがそれを言うなら、もっとちゃんと製作費を出してくれってなものだ。

予算が限られているならシンプルでも実質的な内容にして、受注や問い合わせの増加が見込めるサイトにすべきなのだが、決してそうはならない。彼らにとっての Web サイトとは、営業マンに訪問先で「これ、ウチのホームページです。どうです、お洒落でしょ?」と言わせるための道具でしかないからだ。

実際には、単にお洒落なだけで目的のページに行くのに手間のかかるサイトなんて、2度目のアクセスが望めない。ましてや、それまで使いやすかったサイトのデザインが急に変わってわけがわからなくなったりしたら、「もう、この会社とのお付き合いは終わり!」なんて言いたくもなる。

というわけで、多くの経営者の web サイトに関する考え方が、この 10年以上にわたってあまり変わっていないことに驚いてしまった。

 

|

« デザイナーとしての葛飾北斎 | トップページ | 「ぶっちゃけ本音主義」もここまで来たか »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« デザイナーとしての葛飾北斎 | トップページ | 「ぶっちゃけ本音主義」もここまで来たか »