落とした財布が戻ってくると言われる日本だが
NewSpere に出てから 3か月以上も経ってしまった記事だが、「日本ではなぜ落とし物が帰ってくるのか? 海外メディアが原因を分析」というのがある。
このニュースによると、日本では届け出のあった財布の落とし物の 93%が落とし主に戻るという。これは奇跡的と言っていいほどの数字だ。何しろニューヨークで落とし主に戻るのは、わずか 6%に留まるというのだから。
ただ、このような「奇跡的数字」の理由は「日本人の正直さ」故とは必ずしも言えないとする、次のような見方が紹介されている。
シティ・ラボ誌は日本の法制度に注目しており、遺失物法第 28条の規定により落とし主から拾い主に 5%から 20%のお礼(報労金)が支払われる、と伝えている。3ヶ月経っても落とし主が現れない場合は、拾い主は正式に所有権を得ることも可能だ。(元記事はこちら)
つまり日本では財布を拾ったら交番に届け出れば、落とし主が現れた場合は謝礼がもらえ、現れなかったら全額自分のものにすることができるので、ネコババするより良心の呵責がなく、しかも合法的に利益が得られる。確かにこれはなかなかいい制度のように見える。
しかし実のところ、コトはそう単純ではない。自分の体験から言うのだが、拾った財布を交番に届けても何の得にもならないことが少なくないのだ。
私は小学校 6年生の頃、結構な額のお金の入った財布を拾ったことがある。当時の聖徳太子の肖像入り 1万円札が数枚入っていたから、今の貨幣価値にしたら少なくとも 50万円以上に相当する拾い物で、この中身を観た時はかなり興奮した。
これを正直に警察に届け、内心で謝礼のもらえるのを楽しみに待ったのだが、結果的には警察からも落とし主からも何の連絡もなかった。おそらく落とし主に戻ったのだろうが、そいつは拾って届けてくれた小学生に謝礼を渡そうなんて露ほども考えなかったようで、うやむやになってしまったのである。
同様の体験は、大学に入学して上京してからもあった。結構な額の現金とカードの入った財布を拾い、警察に届けたのだが、やはりそれっきりだった。カードのデータがあるのだから、落とし主に戻ったのはほぼ確実なのだが。
つまり制度上は落とし主が謝礼を払うことになっているのだが、実際にはそんな決まりはシカトされてしまうことが多いようなのである。
念のためこれに関する法律(遺失物法)の条文(参照)を調べてみると、拾得者は遺失者に返還されてから 1か月以内に謝礼の支払いを請求することができるということのようなのだね。これについては、愛媛警察署のサイトに「拾得者の権利」として具体的に説明されている(参照)。
しかし私の体験としては、届け出た金が落とし主に返還されたなんてことを警察はまったく知らせてこなかった。ということは、いつ誰に請求すればいいかを知るよしもなかったのだ。
この事情のよくわかった今から思えば、届け出てから 3か月ぐらいしてから「あの財布、どうなりました?」と警察に問い合わせてみるべきだったかもしれない。しかしその時点で返還されてから 1か月以上経っていたら、報労金支払いを請求する権利が消滅している、
要するに「警察の怠慢」から発していることのようだ。このことからしても、この世は富の再分配がまともに機能しないようにできているということがわかるってなものである。
ただ、だからといって私は財布を拾ったらネコババする方がいいと言っているわけでは決してないので、その辺りはなにぶんよろしく。良心に恥じないで生きる方がいいのは、当然の話なのでね。
そうそう、「警察の怠慢」といえばこんなヒドいこともあったから、この際ついでに自分の過去記事にリンクを張っておく。おっと、そういえばこんなこともあった。なんとまあ、私ってば結構な正直者なんだね。
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コメント
私も過去に何回か財布を拾いましたが、全て交番に届けています。
そして「権利放棄します」と宣言することにしています。
警察官は「二割もらえますよ」と言ってくれますが、「全て落とし主に返してあげてください」というようにしています。(ええかっこしいです)
その後丁重な礼状が届き一件落着、お互い win-win で終わり目出度しです。
たとえ、正当な権利を行使して二割を貰ったとしてもあまりいい気分ではない。そんな気分を味わうくらいなら権利放棄したほうが気分スッキリですよ。
投稿: ハマッコー | 2020年12月31日 13:31
ハマッコー さん:
そういえば、末尾で触れた「落とし物を拾ったら」という記事にもその旨、コメントしていただいてますね。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2016/08/post-9eb4.html
わかるような気がします。私も警察から「落とし主の元に返った」と連絡が来たとしても、謝礼の請求なんてしないだろうと思います。
ただ、小学校 6年の時は、「謝礼がもらえたら、ステレオを買おうか、テープレコーダーを買おうか、いや、自転車にしようか」と、幼心に結構楽しみにしていた記憶があります (^o^)
投稿: tak | 2020年12月31日 14:21
ありゃ、四年前にも同じこと書いてますね。
信念が変わらない自分がいたことが確認できました。
投稿: ハマッコー | 2020年12月31日 23:51
ハマッコー さん:
>信念が変わらない自分がいたことが確認できました。
素晴らしいです!
投稿: tak | 2020年12月31日 23:59