「添付ファイルを紙で送ってくれ」というおっさん
最近増えた「ネット会議」というのは参加者が IT 操作に手慣れたビジネス・パーソンだけなら何の問題もない。「家で気軽に会議に参加できるから、かえって楽」というぐらいのものだ。
しかしたまにフツーのおっさん、おばさんも参加するような広域自治会や「草の根運動」的なものに顔を突っ込まされてしまうと、話は別だ。それでも「非常事態宣言」などで、とくに年配者ほど実際に集まってもらうわけに行かない場合は、ネット会議をするほかない。
初めのうちは「ネット会議は年配の女性にはハードルが高い」なんて思われていたが、実際に付き合ってみると、それも「人による」だけとわかる。80歳近いおばあさんが気軽に Zoom ミーティングに参加する例はいくらでもあるし。
どうにもならないのは、団塊の世代以上の年配男性だ。定年前から仕事で当たり前に IT を使いこなしていた人はいいのだが、会社勤めの現役時代に IT の波から巧妙に身をかわし続けていたおっさんという人種は、今となってはかなりの「お荷物」である。
彼らの時代、IT はある意味「準専門職」みたい思われていた時期あった。その頃は、中間管理職以上が PC のキーボードを自分で叩くなんて、外資系でもなければ希有なことだった。
必要な書類は部下に PC で作成させ、紙にプリントアウトされたものをうやうやしく持ってこさせてこそ、管理職たる威厳と勘違いしていたのである。彼らはずっと「PC は業務書類の清書マシン」ぐらいにしか理解していなかったので、「そんなこと、部下にやらせる」という意識が支配的だった。
そんなおっさん連中のガラケーを今頃になってようやくスマホに代えさせ、LINE アプリをインストールしてあげて、やっとこさっとこ、音声だけでもミーティングに参加させる。ところが彼らはマイクの「オン/オフ」がわからず「ミュート」に無頓着なので、いつも雑音発生源になる。
その上「資料はメールじゃなく、紙に印刷して送ってもらいたい」なんて言い出す。書類は部下がプリントアウトしてもってくるものと思っていた時代の傲慢さが、今も抜けないらしい。
「メールで送られた添付ファイルを指でチョいとつついてみれば、スマホでも自動的に開いて見ることができますよ」と言っても、あまり聞く耳を持っていないようだ。「紙の清書」でなければ受け付けないのである。
というわけで、私は最近になって認識を完全に改めた。森喜朗じゃあるまいし、「女性は IT が苦手」なんて言い草は見当外れもいいところで、差別的でさえある。本当にどうしようもないのは、定年前から長年にわたって IT を敬遠し続けてきたおっさん連中だ。
聞けば彼らのほとんどは、ケータイ・メールすらした経験がないようだ。離れて暮らす子どもや孫とのメールのやり取りみたいな「ちまちましたこと」は「妻の役割」と思っている。道理で女性の方がスマホに親しんでいて、写真の添付なんかも気軽にできることが多い。
それに女性は操作がわからなかったら気軽に質問してくるので、こちらもいろいろ答えてあげられるが、男は聞くのを恥と思っているらしく、沈黙しがちだ。それで会議は早く終わるのかもしれないが、頭の中のアップデートは期待できない。
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コメント
沈黙で会議が早く終わる。
どっかの前会長と同じメンタリティ…。
投稿: 乙痴庵 | 2021年2月13日 01:30
乙痴庵 さん:
こんなことがあるので、確かに男だけだと会議は早く終わるんでしょうね。決していいこととは言えません ^^;)
投稿: tak | 2021年2月13日 15:17
会議でちょっと思い出しましたので。
ライトな4コマ漫画での描写なのですが、フランスの会社で働く日本人Aがとある会議に出席し、会議終了後に個人的に親交のあった上司Bに寄って行って話しかけるのです。
「Bさん、さっきの議題なのだけど・・・」
「ストップ。A、君はさっきの会議で発言しなかった。だからこの件について何か言うのはナシだ」
目から鱗というか、ショックを受けたというか。4コマ漫画と言えど、欧米のビジネス文化を肌で知っている人でなければ描けない描写。Aさん的な行動を許容しおこなっているかもしれない自分にもショックを受けました。
このような哲学で動いている会議ならばそこでの議論は意味があるのでしょう。でも日本の”会議”って、根回しと事後処理でほぼ決まるみたいなところがありますからね。恥ずかしながら私もその風習と無縁かと言われれば怪しいもので、その予定調和を乱す女性の発言が、森さんなどは気に入らないのでしょうねえ。
投稿: らむね | 2021年2月13日 16:13
らむね さん:
まさに国際常識では、公式な場での発言は文字通りに記録され、文字通りの意味で一人歩きします。
森喜朗氏の数々の失言は、これまでは「国内問題」として「なあなあ」で処理されてきましたが、今回ばかりは「国際問題」ですので、そんなわけにいきませんでした。
このあたりの感覚が、自民党のオッサンたちには全然わからなかったようですね。今回も「なあなあ」でいけると思っていたようです。
ボランティア辞退が問題になった時、二階幹事長が「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」なんて言ったそうですが、こんなメンタリティの人が政府首脳だから、どうしようもないのです。
国際感覚なさすぎです。「落ちついて静かになったら」、森発言のひどさがますます浮き彫りにされるだけです。
>日本の”会議”って、根回しと事後処理でほぼ決まるみたいなところがありますからね。
これが問題なのですよね。結局のところ、何がどう決まったのかわからないということになってしまいます。
投稿: tak | 2021年2月13日 17:46
学校現場にパソコンが入ってきたとき、私の世代はそれをいかに仕事に役立てるかに苦心しました。成績処理システムをパソコンの表計算ソフトで実現し、成績と進学先の相関性をカード型データベースで管理して資料を作りました。私よりも上の世代はその恩恵だけを受け、私よりも下の世代は使えるのが当然ということになりました。私は国語科教員なんですが、情報科の免許を与えてくれる講習に申し込もうとしたら、数学と理科だけと制限されていました。なんで文系は情報科教員になれないんですかね。
投稿: 江草乗 | 2021年2月22日 00:33
江草乗 さん:
>私よりも上の世代はその恩恵だけを受け、私よりも下の世代は使えるのが当然ということになりました。
そうした構造は如実にありましたね。
私も業界団体事務局に勤務していた頃、Access を使って団体加入企業のデータベースを作りました。
ところが経理関連責任者のオバアサン職員が手書きの経理関連データを渡してくれなかったため、最も効率化されるはずだった会費請求・納入管理の部分に手を付けられませんでした。
あのオバアサンは、その手書きデータを渡してしまったら、自分の仕事がなくなると思っていたようです。
>なんで文系は情報科教員になれないんですかね。
IT は理数系の専門職と思われてますね。
私は文系こそ IT を駆使すべきと思ってますが。
投稿: tak | 2021年2月22日 10:23