「小林秀雄/国民の智慧」と「麻生太郎/政治家の劣化」
東洋経済 ONLINE に、評論家の中野剛志氏による "コロナ禍で自主的にマスクを着けた国民の智慧 新しい事態の難しさに「黙って処した」小林秀雄" という記事がある。"この新型コロナウイルスがはらむ最大の問題は、ウイルスが、文字通り「新型」であることにある" という指摘が示唆に富んでいる。
当ブログは 3月 19日に「自民党諸氏のマスクに関する勘違い」という記事を書いた。麻生太郎副総理が報道陣に「マスクはいつまでやることになってるの?」と逆質問したという件について触れたものである。
一応、19日の記事の冒頭を引用しておく。
麻生太郎氏が報道陣に逆質問 「マスクはいつまでやることになってるの?」" という記事に驚いてしまった。「真面目に聞いてるんだよ、俺が。あんたら新聞記者だから、それくらい知ってんだろ」と言ったのだそうである。こんなことをマジに聞くとは、よほど頭が悪いとしか思われない。
この日は飛騨路の旅から戻ったばかりで仕事がたまっていたため、あまり突っ込むことができず、「そのうち、じっくり書かなきゃいけないだろう」と思っていた。しかしここまで来たら、小林秀雄まで持ち出してしっかりと考察してくれた中野氏の記事を紹介する方がいいようだ。
中野氏の指摘のポイントはまず、今回のコロナ禍の最大の問題が、その新しさから来る「不確実性」にあるということだ。この不確実性故に「従来の思想が通用しない」という点は、1937年の日中戦争勃発に端を発した太平洋戦争時代の状況と共通していると彼は言う。
小林秀雄は終戦にあたり、国民の発揮した「智慧」に関して「思想家は一人も未だこの智慧について正確には語つてゐない。(中略)この事変に日本国民は黙つて処したのである。これが今度の事変の最大特徴だ」(「満州の印象」) と書いたという。
世の中には、あるいは「日本には」と言うことも可能なのかもしれないが、「黙って処す」という「智慧」があるようなのだ。これを「智慧」と表現していいのかどうか、諸説あるだろうというほど、まことにもって「不思議な智慧」というほかないが。
今回のコロナ禍において、国民が自主的にマスクを着けていることに関しても、中野氏は同様に「国民の智慧」だと指摘する。お上の強制的な命令に従っているわけではなく、ことさらに明文化された規定があるわけでもないのに、「黙って処す」という「不思議な智慧」が発揮されているわけだ。
報道陣に馬鹿な質問をする麻生氏(一応、総理大臣経験者)はこのあたりを、あたかも「誰かが決めるべきこと」のように錯覚し、それならば期限だって定められるべきだと、小学生でもしないような了見違いをしている。もう一度繰り返すが、「よほど頭が悪いとしか思われない」のである。
最近つくづく思うのだが、この国では「本当に優秀な人材」というのは、もはや「政治家になろう」なんて思わなくなったんじゃなかろうか。世の中をまともに認識できない頭の悪い連中が、議員になりたがって選挙に立候補し、みっともないほどの選挙運動を展開して、そのなれの果てが総理大臣だ。
最近、菅首相の「言葉感覚」のなさに驚く (3月 12日付)、菅首相の「言葉感覚」のなさに、改めて驚く(3月 12日付)と、2度にわたって首相の能力に大きな疑問を呈したが、要するにそういうことなのだろう。前の総理大臣も「云々」を「でんでん」なんて読んで大恥かいてたし(参照)。
要するに彼らは、政治家という職業の「カッコ悪さ」に、まだ気付けないという「頭の悪い人たち」なのだろうと思えば、いろいろなことが妙に納得される。国会にはその「目を覆うような代表的存在」がしっかりと存在し、あまつさえ大臣にまでなっているのだから、まったくもって恐ろしい(参照 1、参照 2)。
本日の記事の "「小林秀雄/国民の智慧」と「麻生太郎/政治家の劣化」" という身も蓋もないタイトルは、こんなところから発してしまったわけだ。
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