「太陽が赤い」というのは日本人だけということについて
よく「太陽が赤いと思っているのは、日本人だけ」と言われる。日本の子どもが太陽の絵を描くと、ほとんどが赤く塗られるが、外国の子どもの絵では黄色系の色になることが多い。
上の写真は、私が「和歌ログ」で撮りためた太陽の写真の中から選んだもので、左上は昼に近い時刻の太陽。右上と左下は夜明けの太陽で、とくに左下は昇ってきたばかりのものだ。そして右下は夕焼けの太陽である。
こうしてみると、高く昇ってしまった太陽はほとんど「白」といっていい。一方、夜明けと日没時の低いところにある太陽は赤っぽいが、これは太陽光線が自分のいるところに届くまで長く大気中を通過するために、波長が長くて散乱しにくい赤の光線が届くためといわれる(参照)。
ただ、よく見れば朝夕でも実際に赤っぽいのは太陽そのものよりも周囲の空や雲の色であることが多く、太陽そのものは左下の 1枚を除けばむしろ白っぽい。大気中を長く通過して、赤い光が最後に散乱しているのだろう。左下の太陽が例外的に周囲より赤いのは、薄い雲を透かしているためだと思う。
日本人が「太陽は赤い」と思ってしまう最大の理由は、「日の丸」の印象が圧倒的に強いということだろう。日本人の心の中にあるのは、「実際の太陽」というよりむしろ「象徴としての太陽」のようだ。
もう一つの理由は、真昼の太陽は眩しすぎてまともには見ることができないので、朝と夕方の太陽が印象に残りやすいということだろう。しかし上述のように、多くの場合で赤いのは「太陽そのもの」よりも、光線の散乱によって染まった「周囲の色」であることに注目したい。
日本人は「無意識的な認識操作」を作動させることによって、「対称物そのものと、その周囲」を一緒くたに認識することが多いようなのだ。それで、実際に赤いのは「周囲の空の色」でも、意識の中ではそれが「太陽の色」として印象付けられるのだろう。
そもそもの話として、国旗「日の丸」が赤い真ん丸で表現されるのも、日本人のこうした意識傾向によるのだろうと思われる。
【同日 追記】
「ヤシろぶ」の "国際比較「子供が描く太陽の色」" という記事によると、国際的には黄色が主流だが、タイの子どもは日本人同様に太陽を赤く描くらしい。
【4月 6日 追記】
「みんなの知識 ちょっと便利帳」というサイトの ”「太陽」を配した国旗・地域旗” というページには 25の国・地域の旗が紹介されているが、多くは太陽が黄色で表現されており、それ以外の色は以下の通り。
白: 台湾、ネパール民主共和国、マーシャル諸島
赤: 日本、バングラデシュ人民共和国、マラウイ共和国
オレンジ色: ニジェール共和国
多色使い: フランス領ポリネシア
ちなみに、「赤い真ん丸」は日本とバングラデシュというアジアの 2カ国のみ。アフリカ南東部、マラウイの国旗にある太陽は、地平線上に半分が顔を出したようなデザインなので、朝日か夕陽なのだろう。
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コメント
これで「バングラデシュの子供は皆太陽を赤く描く」なんてデータがあれば面白いですね。
投稿: らむね | 2021年4月 6日 20:31
らむね さん:
それ、探したんですが、見つかりませんでした。残念。
投稿: tak | 2021年4月 6日 22:07