今の子どものいう「会社員」は英語で?
Quora に「会社員て英語だとなんと言いますか?employees とか? worker? 日本の子供の夢の職業とのことです」という質問がある(参照)。これ、なかなか面倒くさい質問だ。
フツーに検索すると、確かに "employees" とか "office worker" とかいう言葉が出てくる(参照)。ただ、それだけで済ませるのもなんとなく物足りない。「会社員という職業」は、妙なニュアンスを含んだもののようなのだ。
そもそもこの質問が出てきたことには、裏のストーリーがある。第一生命の毎年恒例「将来なりたい職業」という調査で、昨年は男子の小中高生、女子の中高生のトップが「会社員」だったというニュースをもとにしていると思われる(参照)。
「ユーチューバー」「サッカー選手」「IT エンジニア・プログラマー」といった定番の人気職業を抑えて、「夢がない職業の代表」みたいに思われている「会社員」がトップだったというのは、ちょっとした驚きをもって迎えられた。
それで「英語に詳しい」と自ら言う Kumi Kaoru さんは、次のように答えている。
日本の雇用システムは世界でも非常に変わっているので「会社員がいい」のニュアンスは外国語に置き替え困難です。
The Japanese kids seem to be aware that freelancing is not such a desirable career in Japan.
すなわち「フリーランスは日本ではそんなにいい進路ではないと日本の子どもたちは気づき出している様子だ」くらいにアレンジしないといろいろ誤解されてしまいます。
これ、とても気の利いた回答だと思う。「会社員」を直訳しようと試みるのではなく、日本の状況を踏まえた上で、子供たちが現実的な希望を抱くようになったのだという文脈で言い換えているのだ。
私の感覚としては、日本の子供たちが「当たり障りのないサラリーマン」になりたがっているのだという気がしている。それで思い出したのが、ハナ肇とクレイジーキャッツの 1962年(私が 10歳の年)のヒット曲「ドント節」だ。こんな歌詞である。
サラリーマンは 気楽な稼業ときたもんだ
二日酔いでも寝ぼけていても
タイムレコーダーガチャンと押せば
どうにか格好がつくものさ
チョックラチョイとパアにはなりゃしねえ
半世紀以上も前の歌が、今の世に妙な現実感をもって共感される可能性を思うと、複雑な感慨に浸るほかないよね。
いや、待てよ、今の「会社員」は、1960年代の「サラリーマン」ほど「気楽な稼業」じゃなくなってしまっているかもしれない。何しろ「人員整理」だの「希望退職」だのいう言葉がフツーに飛び交っているようだから。
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