「たんぽぽ」は「ダンディなライオン」じゃなかった
いきなり 60年以上も前の話で恐縮だが、その昔、私の入った幼稚園というのは年少、年長組ともに 2クラスずつあって、年少が「ぼたん組/ばら組」、年長が「たんぽぽ組/ひまわり組」に分けられていた。そして私は「ぼたん組 → たんぽぽ組」と進んだのである。
このクラスのネーミングが、当時の私にとっては「小さな不満」の種になっていた。隣は「ばら → ひまわり」と、一貫してかなりぱっとしたイメージなのに、「ぼたん → たんぽぽ」というのは、花の色が似てはいるものの地味すぎじゃないか。とくに「ひまわり - たんぽぽ」の落差は大きい。
そんなわけで、「俺って、この先、大人になってもずっと日の当たらない道を歩くことになるのかもしれない」なんて、子どもらしくもない余計なことを思ったりしていたのである。
ところが、その不満が消えたのが中学生の頃だった。ラジオの深夜放送か何かで、「たんぽぽ」は英語で「ダンディ・ライオン」と言うと聞き、辞書を調べると、確かに "dandelion" とあるではないか。
「おぉ、俺、獅子座の生まれだし、『ダンディなライオン』なら『ひまわり』の "sunflower" に見劣りしないじゃん!」
ストレートに "dandylion" というスペルではないし、あんな小さな花がどうして「ライオン」なのかよくわからないが、それまでの不満はこれであっさり解消した。何て単純な中学生!
ところが長ずるに及び、改めて調べてみると、「たんぽぽ」は決して「ダンディなライオン」という意味じゃないらしいということがわかってきた。大抵は goo 辞書のごとく次のように解説されているのである(参照)。
《古フランス語で、ライオンの歯の意》西洋蒲公英 (たんぽぽ) 。
「なぬ、 『ライオンの歯』だと?『ダンディなライオン』じゃないのか?」というわけでさらに調べると、Top-biz のサイトに次のように解説されている(参照)ような、実際の話がわかってきた。
ダンデライオンという言葉は、英語では「dandelion」と表記しますが、語源となったフランス語では、「dent de lion」と表記します。(中略)
フランス語では「dent」が歯を意味し「de」は「~の」という意味になり、「ライオンの歯」という意味になります。
「なんだ、英語の "dandy" とは無関係なのか!」と、脱力してしまったのである。「デンタル・ライオン」なんて、どっかの国の歯磨きじゃあるまいし。
ただ、脱力しただけで、昔のように単純に「小さな不満」を感じるに至っていないのは、年齢を重ねるにつれて少しは大人になった証なのかもしれない。
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コメント
私も幼稚園では「タンポポ組」でした。花びらをよく見ると先がギザギザで確かに歯のように見えますね。
西洋では可愛らしい花に“ライオンの歯”なんて可愛らしくない名前を付けるんですね。こういうのを曲がないというのでしょうか。逆に西洋ではこれを“曲がある”とするのかもしれませんが。
和名はその形が鼓に似ていることから鼓草(つづみくさ)とも言うようです。
鼓は“タンポンポン”となることから“たんぽぽ”と言うようになったそうです。漢字表記は蒲公英だそうです。
投稿: ハマッコー | 2021年4月18日 19:19
ハマッコー さん:
「鼓草」から「たんぽぽ」の流れは知りませんでした。なるほどなるほど。
それにしても、幼稚園の「たんぽぽ組」は、かなり一般的なんでしょうかね (^o^)
投稿: tak | 2021年4月18日 19:50